周梨槃特のブログ

史料紹介という修行

ライフワーク

自死の中世史 16 ─日本の古代12─

【史料1】 「仁徳天皇即位前紀」『日本書紀』巻11 (『新編日本古典文学全集』3─27頁、小学館、1996) 太子曰「我知、不可奪兄王之志。豈久生之、煩天下乎。」乃自死焉。 「書き下し文」 太子の曰はく、「我、兄王の志を奪ふべからざることを知れ…

自死の中世史 15 ─日本の古代11─

「神功皇后摂政元年二月」『日本書紀』巻9 (『新編日本古典文学全集』2─440頁、小学館、1994) 適是時也、晝暗如夜、已經多日、時人曰、常夜行之也。皇后問紀直祖豐耳曰「是怪何由矣。」時有一老父曰「傳聞、如是怪謂阿豆那比之罪也。」問「何謂也…

自死の中世史 14 ─日本の古代10─

【史料1】 「垂仁天皇九十年二月一日」『日本書紀』巻6 (『新編日本古典文学全集』2─335頁、小学館、1994) 九十年春二月庚子朔、天皇命田道間守、遣常世國、令求非時香菓。香菓、此云箇倶能未。今謂橘是也。 九十九年秋七月戊午朔、天皇崩於纏向…

自死の中世史 13 ─古代史のまとめ─

ここまで古代の自死史料を9点紹介してきました。この他にもまだまだ史料はありますが、それは「自死の中世史10 古代史の研究紹介」で紹介した、鈴木英鷹氏の論文(注)の事例リストをご覧いただくとして、ひとまず考えたことをまとめてみようと思います。…

自死の中世史 12 ─日本の古代9─

長久元年(一〇四〇)四月三十日条 (『増補史料大成七 春記』142頁) 卅日、甲寅、雨降、 一日関白被命云、定任殺人、嫌疑人先日捕之、是成章之郎等 也、是男筑紫人也、件男依無指事免除云々、痴事也、但定任、殺府老〈某丸〉已 了、其兄法師又被殺了、…

自死の中世史 11 ─日本の古代8─

寛弘二年(一〇〇五)八月五日条 (『大日本古記録 小右記』2─127) 肥後守爲愷爲二郎等良材一被二殺害一事、 (橘) 〔郎〕〔小〕 五日、辛巳、肥後守爲愷朝臣去月八日未剋爲二良等少槻良材一被二殺害一、 〔良〕〔材脱ヵ〕 艮自殺云々、希有事也、良材…

自死の中世史 10 ─古代史の研究紹介─

自死の中世史と言いながら、なかなか中世にたどり着かないまま、ここまで古代の史料を紹介してきました。古代の自死を正面から分析した研究はないのかと思っていたのですが、最近その論文に出会えたので紹介します。こうした研究があると知っていれば、わざ…

自死の中世史 9 ─日本の古代7─

永延二年(九八八)六月十七日条 『日本紀略』(『国史大系』第五巻、『大日本史料』第二編之一) 十七日、壬申、左獄被二禁固一、強盗首保輔依二自害疵一死去了、是右馬權頭藤原 致忠三男也、件致忠、日来候二左衛門弓場一、昨日免、 「書き下し文」 十七日…

自死の中世史 8 ─日本の古代6─

弘仁七年(八一六)八月二十三日条 (森田悌『日本後紀(下)』巻二十五、講談社学術文庫、2007) ◯丙辰、公卿奏言、上総国夷灊郡、官物所レ焼、准レ穎五十七万九百束、正倉六十 宇、刑部省断レ罪言、検焼損使散位正六位上大中臣朝臣井作等申、税長久米…

自死の中世史 7 ─日本の古代5─

弘仁元年(八一〇)九月十二日条 (森田悌『日本後紀(中)』巻二十、講談社学術文庫、2006) ◯己酉、太上天皇至二大和国添上郡越田村一、即聞二甲兵遮一レ前、不レ知レ所レ行、 中納言藤原朝臣葛野麻呂・左馬頭藤原朝臣眞雄等、先二未然一雖二固諌一、…

自死の中世史 6 ─日本の古代4─

大同三年(八〇八)十一月四日条 (森田悌『日本後紀(中)』巻十七、講談社学術文庫、2006) ◯十一月辛巳、(中略)是夜、有レ盗、入二内蔵寮府一、為二人所一レ囲、時属二 大嘗一、恐二其自殺一、遣レ使告喩、投レ昏出去、(後略) 「書き下し文」 ◯十…

自死の中世史 5 ─日本の古代3─

『日本霊異記』中巻 (日本古典文学全集6、小学館、1975) 己が高徳を恃み、賤形の沙弥を刑ちて、以て現に悪死を得し縁 第一 諾楽の宮に宇の大八嶋国御めたまひし勝宝応真聖武太上天皇、大誓願を発したまひ、天平の元年の己巳の春の二月八日に、左京の…

自死の中世史 4 ─日本の古代2─

「允恭天皇」『古事記』下巻(日本古典文学全集1、小学館、1973) 天皇崩之後、定木梨之軽太子所知日継、未卽位之間、姧其伊呂妹軽大郎女而歌曰、 阿志比紀能 夜麻陀袁豆久理 夜麻陀加美 斯多備袁和志勢 志多杼比爾 和賀登布伊毛袁 斯多那岐爾 和賀那久…

自死の中世史 3 ─日本の古代1─

「応神天皇」『日本書紀』巻十(新編日本古典文学全集2、小学館、1994) 九年夏四月、遣武內宿禰於筑紫、以監察百姓。時武內宿禰弟甘美內宿禰、欲廃兄、即讒言于天皇、武內宿禰常有望天下之情。今聞、在筑紫而密謀之曰、独裂筑紫、招三韓令朝於己、遂将…

自死の中世史 2 ─中国の場合2─

「孝婦の冤罪」 『捜神記』巻11─290(佐野誠子著・竹田晃・黒田真美子編『中国古典小説選2 捜神記・幽明録・異苑他〈六朝Ⅰ〉』明治書院、2006) 漢時、東海孝婦、養レ姑甚謹。姑曰、「婦養レ我勤苦。我已老。何惜二余年一、久累二年少一。」遂自縊…

自死の中世史 1 ─中国の場合1─

「嫁の神様」 『捜神記』巻5─6(開放文學、http://open-lit.com/bookindex.php?gbid=119) 淮南全椒縣有丁新婦者、本丹陽丁氏女、年十六、適全椒謝家。其姑嚴酷、使役有程、不如限者、仍便笞捶不可堪。九月九日、乃自經死。 遂有靈向、聞於民間。發言於巫…

自死の中世史 〜はじめに〜

「数年前だったか、新聞紙上で、大宅映子さんのこんな行文にふれた。『死ぬとわかっていて、なぜ人間は生きてゆけるのか』、そういう根源的な問いに答えを出していくのが文学部というところだという、ある大学での講演のくだりである。」 鷲田清一「死なない…