周梨槃特のブログ

史料紹介という修行

ライフワーク

自死の中世史 32 ─吾妻鏡1─

寿永元年(一一八二)二月十四・十五日条 『吾妻鏡』第二(『国史大系』第三二巻) 十四日乙卯、伊東次郎祐親法師者、去々年已後、所被召預三浦介義澄也、而御臺所御懷孕之由風聞之間、義澄得便、頻窺御氣色之處、召御前、直可有恩赦之旨被仰出、義澄傳此趣…

自死の中世史 31 ─古代史研究の紹介2─

以前、「古代史の研究紹介1」(「自死の中世史10」)で、鈴木英鷹氏の論文を紹介しましたが、その引用文献のなかに、かなり古い歴史学者の論文がありました。最近、それをやっと読むことができたので、ここで紹介しておきたいと思います。 江馬務「自殺史…

自死の中世史 30 ─中世の説話9・説話のまとめ─

「死の道を知らざる人の事」十二『沙石集』巻第八ノ五 (『新編日本古典文学全集』52、小学館、2001) 天竺に、那蘭陀寺の戒賢論師と云ひしは、付法蔵の三蔵、やんごとなき智者にて、玄奘三蔵の師なり。重病に沈みて、苦痛忍び難かりければ、自害せん…

自死の中世史 29 ─中世の説話8─

「薬師・観音の利益によりて命を全くする事」『沙石集』巻第二ノ四 (『新編日本古典文学全集』52、小学館、2001) 尾張国に、右馬允某甲と云ふ俗ありけり。承久の乱の時、京方にて杙瀬河の戦に、手あまた負ひてけり。既に止め刺して打ち棄ててき。武…

自死の中世史 28 ─中世の説話7─

「臨終に執心を畏るべき事」『沙石集』巻第四ノ五 (『新編日本古典文学全集』52、小学館、2001) 近比、小原に上人ありけり。無智なりけれども、道心の僧にて、かかる浮世に、長らへてもよしなく思ひければ、三七日、無言して、結願の日、頸をくくり…

自死の中世史 27 ─中世の説話6─

「仁和寺西尾の上人、我執に依つて身を焼く事」『発心集』第第八─三 (三木紀人『現代語訳 方丈記 発心集 歎異抄』學燈社、2006) 近き世の事にや、仁和寺の奥に同じさまなる聖、二人ありけり。ひとりを西尾の聖と云ひ、今ひとりをば東尾の聖と名付けた…

自死の中世史 26 ─中世の説話5─

「蓮花城、入水の事」『発心集』第三─八 (三木紀人『現代語訳 方丈記 発心集 歎異抄』學燈社、2006) 近きころ、蓮花城といひて、人に知られたる聖ありき。登蓮法師相知りて、ことにふれ、情けをかけつつ、過ぎけるほどに、年ごろありて、この聖の言ひ…

自死の中世史 25 ─中世の説話4─

「空入水したる僧の事」『宇治拾遺物語』巻第十一・第九話 (『日本古典文学全集』二八、小学館) これも今は昔、桂川に身投げんずる聖とて、まづ祇陀林寺にして百日懺法行ひければ、近き遠き者ども、道もさりあへず、拝み行きちがふ女房車など隙なし。 見れ…

自死の中世史 24 ─中世の説話3─

「入水したる上人の事」『沙石集』巻第四ノ六 (『新編日本古典文学全集』52、小学館、2001) ある山寺に、上人あり。道心深くして、憂世に心をとどめず、急ぎ極楽へ参らんとおもひければ、入水して死なんとおもひ立ちて、同行を語らひて、舟を用意し…

自死の中世史 23 ─中世の説話2─

「或る女房、天王寺に参り、海に入る事」『発心集』第3─6 (三木紀人『現代語訳 方丈記 発心集 歎異抄』學燈社、2006) 鳥羽院の御時、ある宮腹に、母と女と同じ宮仕へする女房ありけり。年ごろへて後、此の女、母に先立ちてはかなくなりにけり。歎き…

自死の中世史 22 ─中世の説話1─

「或る禅師、補陀落山に詣づる事 付賀東上人の事」『発心集』第3─5 (三木紀人『現代語訳 方丈記発心集 歎異抄』學燈社、2006) 近く、讃岐の三位といふ人いまそかりけり。彼のめのとの男にて、年ごろ往生を願ふ入道ありけり。心に思ひけるやう、「此…

自死の中世史 21 ─自死紹介の悩み5─

【その5】 ここまで、だらだらと個人的な悩みを書いてきましたが、悩みは独白するだけでもある程度スッキリするものです。当たり前のことかもしれませんが、私は今後、自死を「行為」とみなし、①自死の原因・理由動機、②自死の目的動機、③目的遂行のために…

自死の中世史 20 ─自死紹介の悩み4─

【その4】 そうすると、「自殺念慮」という欲求は、いったいどこから生まれてきたのでしょうか。なぜ、人間は成長とともに死を望むようになるのでしょうか。こうした問題について1つの答えを与えてくれるのが、坂田登氏の論文(8)です。これは、生やセッ…

自死の中世史 19 ─自死紹介の悩み3─

【その3】 さて私は、自死によって実現される事態・価値を自死の「目的」と表現しましたが、ダグラス(Jack D.Douglas)という社会学者は、同様のものを自殺の「社会的意味」として追究しています。本来はダグラスの原著に目を通すべきなのですが、英語の著…

自死の中世史 18 ─自死紹介の悩み2─

【その2】 このような自問自答を書き連ねてきて、1つ気づいたことがあります。それは、私が何を目的に自死の原因を追い求めてきたのか、ということです。とても単純すぎて意識にのぼらなかったのですが、どうやら私は「自死を止めたい」ようです。「原因」…

自死の中世史 17 ─自死紹介の悩み1─

【その1】 なんとなく気づいていたのですが、予想通り、「因果連鎖の問題」(1)に陥ってしまいました。「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないですが、桶屋が儲かったのは、ネズミが桶をかじったからなのか、猫が減ってネズミが増えたからなのか…、盲人が三…

自死の中世史 17 ─日本の古代13─

「大治五年四月十四日付宇佐宮公文所問注日記」『小山田文書』 (『平安遺文』2158号文書、5─1868) (端裏) 「大工末貞勘状、友成任御判可領作之、」 公文所 問注御装束所検校末貞訴申同検校友成申詞記 問友成云、請被殊任道理、裁下給古作田子細…

自死の中世史 16 ─日本の古代12─

【史料1】 「仁徳天皇即位前紀」『日本書紀』巻11 (『新編日本古典文学全集』3─27頁、小学館、1996) 太子曰「我知、不可奪兄王之志。豈久生之、煩天下乎。」乃自死焉。 「書き下し文」 太子の曰はく、「我、兄王の志を奪ふべからざることを知れ…

自死の中世史 15 ─日本の古代11─

「神功皇后摂政元年二月」『日本書紀』巻9 (『新編日本古典文学全集』2─440頁、小学館、1994) 適是時也、晝暗如夜、已經多日、時人曰、常夜行之也。皇后問紀直祖豐耳曰「是怪何由矣。」時有一老父曰「傳聞、如是怪謂阿豆那比之罪也。」問「何謂也…

自死の中世史 14 ─日本の古代10─

【史料1】 「垂仁天皇九十年二月一日」『日本書紀』巻6 (『新編日本古典文学全集』2─335頁、小学館、1994) 九十年春二月庚子朔、天皇命田道間守、遣常世國、令求非時香菓。香菓、此云箇倶能未。今謂橘是也。 九十九年秋七月戊午朔、天皇崩於纏向…

自死の中世史 13 ─古代史のまとめ─

ここまで古代の自死史料を9点紹介してきました。この他にもまだまだ史料はありますが、それは「自死の中世史10 古代史の研究紹介」で紹介した、鈴木英鷹氏の論文(注)の事例リストをご覧いただくとして、ひとまず考えたことをまとめてみようと思います。…

自死の中世史 12 ─日本の古代9─

長久元年(一〇四〇)四月三十日条 (『増補史料大成七 春記』142頁) 卅日、甲寅、雨降、 一日関白被命云、定任殺人、嫌疑人先日捕之、是成章之郎等 也、是男筑紫人也、件男依無指事免除云々、痴事也、但定任、殺府老〈某丸〉已 了、其兄法師又被殺了、…

自死の中世史 11 ─日本の古代8─

寛弘二年(一〇〇五)八月五日条 (『大日本古記録 小右記』2─127) 肥後守爲愷爲二郎等良材一被二殺害一事、 (橘) 〔郎〕〔小〕 五日、辛巳、肥後守爲愷朝臣去月八日未剋爲二良等少槻良材一被二殺害一、 〔良〕〔材脱ヵ〕 艮自殺云々、希有事也、良材…

自死の中世史 10 ─古代史の研究紹介─

自死の中世史と言いながら、なかなか中世にたどり着かないまま、ここまで古代の史料を紹介してきました。古代の自死を正面から分析した研究はないのかと思っていたのですが、最近その論文に出会えたので紹介します。こうした研究があると知っていれば、わざ…

自死の中世史 9 ─日本の古代7─

永延二年(九八八)六月十七日条 『日本紀略』(『国史大系』第五巻、『大日本史料』第二編之一) 十七日、壬申、左獄被二禁固一、強盗首保輔依二自害疵一死去了、是右馬權頭藤原 致忠三男也、件致忠、日来候二左衛門弓場一、昨日免、 「書き下し文」 十七日…

自死の中世史 8 ─日本の古代6─

弘仁七年(八一六)八月二十三日条 (森田悌『日本後紀(下)』巻二十五、講談社学術文庫、2007) ◯丙辰、公卿奏言、上総国夷灊郡、官物所レ焼、准レ穎五十七万九百束、正倉六十 宇、刑部省断レ罪言、検焼損使散位正六位上大中臣朝臣井作等申、税長久米…

自死の中世史 7 ─日本の古代5─

弘仁元年(八一〇)九月十二日条 (森田悌『日本後紀(中)』巻二十、講談社学術文庫、2006) ◯己酉、太上天皇至二大和国添上郡越田村一、即聞二甲兵遮一レ前、不レ知レ所レ行、 中納言藤原朝臣葛野麻呂・左馬頭藤原朝臣眞雄等、先二未然一雖二固諌一、…

自死の中世史 6 ─日本の古代4─

大同三年(八〇八)十一月四日条 (森田悌『日本後紀(中)』巻十七、講談社学術文庫、2006) ◯十一月辛巳、(中略)是夜、有レ盗、入二内蔵寮府一、為二人所一レ囲、時属二 大嘗一、恐二其自殺一、遣レ使告喩、投レ昏出去、(後略) 「書き下し文」 ◯十…

自死の中世史 5 ─日本の古代3─

『日本霊異記』中巻 (日本古典文学全集6、小学館、1975) 己が高徳を恃み、賤形の沙弥を刑ちて、以て現に悪死を得し縁 第一 諾楽の宮に宇の大八嶋国御めたまひし勝宝応真聖武太上天皇、大誓願を発したまひ、天平の元年の己巳の春の二月八日に、左京の…

自死の中世史 4 ─日本の古代2─

「允恭天皇」『古事記』下巻(日本古典文学全集1、小学館、1973) 天皇崩之後、定木梨之軽太子所知日継、未卽位之間、姧其伊呂妹軽大郎女而歌曰、 阿志比紀能 夜麻陀袁豆久理 夜麻陀加美 斯多備袁和志勢 志多杼比爾 和賀登布伊毛袁 斯多那岐爾 和賀那久…