三八 沙弥しやうれん下人譲状
(端裏書)
「とらまさこせんのゆつりしやう事」
ゆつりわたすおなん事
(以下三行割書)
合四人者 ひめつる こうはい」とくわうほうし」とらハしかこ」
(御前) (永代)
右件おなんともハ、とくわうほうしとも、とらまさこせんに、ゑいたい儀まて
(譲渡) (實) (全)
ゆつりわたすところしちなり、たゝしこのゆつりよりほかに、まんたくゆつりあるま
(けヵ)
しく候、いつれの⬜︎ありといふとも、これにわつら儀か⬜︎ましく候、よてゆつりの
(マ丶)
時件、
(1354)
文和三年きのへむま 三月廿日
しやミ しやうれん(花押)
「書き下し文」(可能な限り漢字仮名交じりにしました)
「とらまさ御前の譲状の事」
譲り渡す女の事、
合わせて四人てへり ひめつる こうはい」とくわう法師」とらハしかこ」
右件の女どもは、とくわう法師とも、とらまさ御前に、永代の儀まで譲り渡すところ実なり、ただしこの譲りよりほかに、全く譲りあるまじく候ふ、いづれの子(カ)ありといふとも、これに煩ひの儀掛けまじく候ふ、仍て譲りの時件、
「解釈」
譲与する女のこと。
都合四人。ひめつる こうはい とくわう法師 とらはしかこ
右の女どもは、とくわう法師とともに、とらまさ御前に永久に譲り渡すことは事実である。ただし、この譲与の他には、まったく譲与はあるはずもありません。どの子がいたとしても、とらまさ御前に迷惑をかけてはなりません。よって譲状は以上のとおりです。
「注釈」
「とらまさこせん」─おそらく女性だと思われます。小田文書のなかには、これまでも
「とら」「虎」を通字とする女性が現れています(11・13・
38号文書)。おそらく奈良原氏の女性ではないでしょうか。
「おなん」─女か。
「とくわう法師」─おそらくこの人物だけが男なのでしょう。
「沙弥しやうれん」─未詳。