四二 一二号文書の案文
○本文書ハ一二号文書ト同文ノ案文タルニヨツテ本文ヲ省略ス
四三 平右馬尉名田譲状
(永) (譲)
⬜︎代ゆつり申重正名之事
(所當) (て)(催促)
右名者、右馬⬜︎⬜︎ゆつり渡所なり、⬜︎年貢御公事しやとう先例ニまかせ⬜︎さいそくす
(惣領)(進退) (こヵ)
へし、名代者、女ハ一代一か⬜︎たゑまハそうれう心代同下河上者⬜︎ん大夫かいとの
(代) 衛 (か)
たい所して重正名之内⬜︎給候事ハ、小右馬尉殿約束之状ニま⬜︎せて候所也、仍爲後日
譲状如レ件、
(1371)
應安四年かのとのヰ 十月十五日 平右馬尉(略押)
「書き下し文」(可能な限り漢字仮名交じりにしました)
永代譲り申す重正名の事、
右の名は、右馬二郎に譲り渡す所なり、御年貢・御公事・所当は先例に任せて催促すべし、名代は、女は一代一か□たゑまは惣領進退、同じく下河上はこん大夫垣内の代所して重正名の内⬜︎給候ふ事は、小右馬尉殿約束の状に任せて候ふ所なり、仍て後日の爲譲状件のごとし、
「解釈」
永久に譲り渡す重正名のこと。
右の名は、右馬二郎に譲り渡すものである。御年貢・御公事・所当は先例どおりに名内の百姓から催促しなければならない。後見人については、女は一代限りで、その後は惣領が継承し、同じように下河上の土地は、こん大夫垣内の替地として、重正名内に入れ置きなさったことは、小右馬尉殿の約束状のとおりです。よって将来のため譲状は以上のとおりである。
「注釈」
「右馬⬜︎⬜︎」─12号文書から、「右馬二郎(右馬次郎)」のことと考えられます。
「所当」─具体的にどのようなものを指すのかわかりませんが、年貢・公事以外の雑
税・夫役のようなものでしょうか。または、厳島社の社役かもしれません。
「小右馬尉殿約束之状」─12号文書のことか。
「平右馬尉」─未詳。小右馬尉と親族関係にある人物か。
*池論文によれば、この文書は、家督相続者である惣領の右馬次郎に、重正名が譲られ
たということを示しており、差出人の平右馬尉がそれまで一時的に重正名を預かって
いたのではないかと指摘されています。池享「中世後期における「百姓的」剰余取得
権の成立と展開 」(『大名領国制の研究』校倉書房、一九九五、https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/18661)参照。