五〇 そう三郎出挙籾借用状
(端裏書)
「なかわらのそう三郎すこの状」
申うくる御出挙の籾事
合五斗者
(割)(利) (添) (未進) (たヵ)
右件之籾者、秋之時六わりのり分をそゑ候て、みしんなく弁申へく候、もしふさ⬜︎仕
(耕作)
候ハ丶、かき内田一反かのふ物あたり候ハん分を、御こうさくあるへく候、尚々相違
(権門高家) (ちヵ)
仕候ハ丶、いかなるけもんかうけ神社仏寺御領内いちまう路次をきらハす、見合
(郷質) (沙汰)
かうしちをとられ可レ申候、其時一義子細を申ましく候、仍爲二後日さたの一
(証文)
せうもん如レ件、
(1423)
應永卅年卯癸三月二日 (略押)
なかはらの そう三郎
「書き下し文」(可能な限り漢字仮名交じりにしました)
(端裏書)
「長原のそう三郎出挙の状」
申し請くる御出挙の籾の事、
合わせて五斗てへり、
右件の籾は、秋の時六割の利分を添え候ひて、未進無く弁じ申すべく候ふ、もし無沙汰仕り候はば、垣内田一反彼の負物に当たり候はん分を、御耕作あるべく候ふ、尚々相違仕り候はば、いかなる権門高家・神社仏寺御領内市町路次を嫌はず、見合に郷質を取られ申すべく候ふ、其の時一義の子細を申すまじく候ふ、仍て後日の沙汰の爲証文件のごとし、
「解釈」
「長原のそう三郎の出挙の借用状」
請け取り申した出挙の籾のこと。
都合五斗。
右の籾は、秋の時に六割の利子を加えまして、未進なく弁済申しあげるつもりです。もし返済しないようなことがありましたら、垣内田一反のうちで、この担保に当たりますような分を、御耕作になるべきです。さらにこの契約を違え申し上げましたなら、どのような権門高家や神社仏寺の御領内の市町路次などの場所を選ばず、見つけ次第郷質をお取り上げになるべきです。そのときには、一言の異議を申し上げるつもりはありません。そこで、後日の訴訟のため、証文の内容は以上のとおりです。
「注釈」
「出挙」─利息付きの貸借。
「長原」─永原村(佐伯町永原)のこと。
「郷質」─中世、債権者による私的差し押さえの一種。A郷の甲がB郷の乙から米銭を
借りながら返済しないとき、乙はA郷の甲以外の者の動産を差し押さえるこ
とができるというもの(『古文書古記録後辞典』)。
「そう三郎」─未詳。15号文書にも現れる。