二 後花園天皇口宣案寫
上卿 四條中納言
(1445)
文安二年十二月廿七日 宣旨
(寛雅)
大法師宥椿
冝任權律師
蔵人左中辨藤原俊秀奉
*書き下し文・解釈は省略。
「注釈」
「口宣案」─職事=蔵人頭が勅命を上卿に伝宣する場合は、もともと口頭でするのが原
則で、それを文書に書き表すことはあっても、それは職事の手控えとして
であった。これを口宣とか職事の仰詞(おおせことば)と称したが、のち
にはこれを上卿に交付するようになり、一つの独立した効力ある文書とし
て口宣案と呼ぶようになった(佐藤進一『新版 古文書学入門』法政大学
出版局)。
「四條中納言」─四条隆盛。
「大法師」─伝燈大法師位のことか。僧綱(僧官僧位とももっとも高いものを称した名
目。僧官では僧正・僧都・律師の三官、僧位では法印・法眼・法橋)に対
して、その他の僧を「凡僧」と呼び、その最上位の僧位。宗派の伝統を門
弟に伝える位(『新訂 官職要解』)。
「権律師」─僧綱第三位の僧官。律師には、大律師・(中)律師・権律師がある(『新
訂 官職要解』)。
「宥椿(寛雅)」─未詳。福王寺の住持か。
「宜任權律師」─宜しく権律師に任ずべし(権律師に任命せよ)。
「藤原俊秀」─坊城俊秀。
*大法師位という僧位にあった宥椿(寛雅)が、権律師という僧官に任命された文書。
権律師に対応する僧位は法橋になるのですが、別に僧位を授けられた文書が発給され
ているのかもしれません。