一〇 備後権守長兼書状寫
(候脱)
御巻数入二見参一候了、神妙之由所二御気色一也、恐々謹言、
十二月十三日 備後権守長兼判
福王寺別当御房 御返事
「書き下し文」
御巻数見参に入れ候ひ了んぬ、神妙の由御気色候ふ所なり、恐々謹言、
「解釈」
ご巻数をお目にかけました。感心なことであるとのご意向であります。以上、謹んで申し上げます。
「注釈」
「巻数」─「かんず」とも。経供養を依頼されて読誦した経巻の数を記した文書。経の名目、度数を記した文書を花枝につけて願主に送った(『古文書古記録語辞典』)。
「備後権守長兼」─未詳。
「福王寺別当御房」─未詳。
*書止文言は「恐々謹言」になっていますが、「御気色」とあるので、身分の高い人の
意を、長兼が伝達した奉書なのだと思います。