九 富田康直書状(折紙)
尚々三十疋被レ懸二御意一候、本望之至に候、謹言、
(繁澤次郎兵衛尉)
御方様被仰上様、具ニ次兵様へ披二露仕之一候、御存分の様に御捻共御取候而、被レ
進レ之候、我等迄安堵此事に候、弥々御普請等被二仰付一候儀、尤に存候、何も於レ
趣者、次兵様より御奉書を被進之候、其上田之出入御年貢無二相違一御調尤に存候、
(マヽ)
小役目等之儀者、佐五郎右内儀を以、次兵様へ申候ゝハ、少者御分別候すると存候、
(罷ヵ)
何茂其許二三日中ニ差越候条、以二面上一可レ得二御意一候、恐々謹言、
九月廿二日 富又兵(花押)
る
善明 まいる
*日付と充所の間に「る」のような大きな文字があるのですが、さっぱり意味がわかりません。
「書き下し文」
御方様仰せ上げらるる様、具に次兵様へ之を披露仕り候ふ、御存分の様に御捻りとも御取り候ひて、之を進らせられ候へ、我等まで安堵此の事に候ふ、弥々御普請等仰せ付けられ候ふ儀、尤もに存じ候ふ、何れも趣においては、次兵様より御奉書を之進らせられ候ふ、其の上田の出入り御年貢相違無く御調へ尤もに存じ候ふ、小役目等の儀は、佐五郎右内儀を以て、次兵様へ申し候はば、少しは御分別候はんずると存じ候ふ、何れも其のもと二、三日中ニ罷り越し候ふ条、面上を以て御意を得べく候ふ、恐々謹言、
尚々三十疋御意を懸けられ候ふ、本望の至に候ふ、謹言、
「解釈」
あなた様が申し上げなさったように、詳細に繁沢元氏様へ披露致しました。あなた様の思いどおりに御捻りなどをお取りになりまして、これを差し上げなさいませ。我らにまで安堵するというのは、このことでございます。とうとう御普請等をお命じになりました件は、当然のことと存じます。いずれにしてもこの内容については、繁沢元氏様から御奉書を差し上げなさいます。そのうえで、田のお年貢は間違いなく調進することは当然のことと存じます。細々とした役目等の件は、佐五郎右が内々に相談して、繁沢元氏様へ申し上げますなら、少しは道理を判断してくださるでしょうと存じます。いずれにしてもそちらへ二、三日中に伺いますので、お目にかかってあなた様のお考えを承るつもりです。以上、謹んで申し上げます。
なお、三十疋のお心遣いをくださりました。大変満足しております。以上、謹んで申し上げます。
「注釈」
「繁沢元氏」─吉川元春次男。
「御捻」
─洗米や銭を白紙に包んで、ひねったもの。本来は神仏に供えるものであるが、お年玉など祝儀で人に贈るときにも使う。かみひねり。紙花(『日本国語大辞典』)。
「佐五郎右」─未詳。
*さっぱり解釈できませんでした。