四 藤原兼信解并安堵外題
(外題)
「任二親父兼信朝臣譲状一、可レ令[ ]
(大介藤原爲忠)
(花押)」
(國裁事ヵ)
田所惣大判官代藤原朝臣兼信解 申請[ ]
請被下且任二譲状旨一且依二申状理一裁定上給、以二男經兼朝臣一、欲レ被レ補二
田所文書執行職一子細状
副進譲状壹通
右、謹撿二事情一、兼信⬜︎従幼少[ ]跡數代之間、令レ致二恪勤之事一、
然間齢漸及二八旬之筭一、不レ能二行歩一、仍以二男經兼一年来之間、令下致二彼勤一
来上者、相二副 國判一欲レ令三執二行彼事一、望請[ ]傳之譲状、被定補
(弥) (ヵ)
者、⬜︎成二其勇一致二奉公之忠節一、謹解、
(1122)
保安三年十二月九日 散位藤原兼信
「書き下し文」
(外題)
「親父(外題)兼信朝臣の譲状に任せ、[ ]しむべし」
田所惣大判官代藤原朝臣兼信解し申し請ふ国裁の事、
且つうは譲状の旨に任せ、且つうは申状の理に依り、裁定せられ給ひ、男経兼朝臣を以て、田所文書執行職に補せられんと欲するを請ふ子細の状、
副へ進らす譲状一通
右、謹んで事情を検ずるに、兼信[ ]の間、恪勤の事を致さしむ、然る間齢漸く八旬の算に及び、行歩に能はず、仍て男経兼を以て、年来の間彼の勤めを致し来たらしむてへり、国判を相副へ彼の事を執行せしめんと欲す、望み請ふ[ ]、定め補せられば、弥々其の勇みを成し奉公の忠節を致す、謹んで解す、
「解釈」
「親父兼信朝臣の譲状のとおりに、経兼に田所文書執行職を勤めさせよ。」
田所惣大判官代藤原朝臣兼信が願い申し出る、国司の裁許のこと。
譲状の内容に任せ、また申状の道理により、裁定なされ、子息経兼朝臣を、田所文書執行職に補任なさってほしいと願い出た事情を記した解状。
譲状一通を副進する。
右の件について、事情を調べてみると、私兼信は幼少のころから、[ ]田所文書執行職を数代にわたって相伝し、奉公してきた。そうしているうちに、しだいに時が経って私の年齢も八十代になり、歩くことができなくなった。そこでここ数年、子息の経兼に、田所文書執行の仕事を勤めさせてきた、ということである。国司の印判を副えていただき、経兼に政務を執り行わせてほしい。[ ]もし経兼に執行職が決まり補任されるなら、ますます励んで奉公し、忠節を尽くします。以上、謹んで願い出ます。
*「注釈」は一号文書参照。