九 毛利輝元書状(折紙)
爲二御音信一ねり酒両樽并蚫一折被二送越一候、懇志之段祝着候、則令二賞翫一候
恐入候、いつれも可レ申候、謹言、
(輝元)
正月廿九日 (花押)
神保源右衛門尉殿
「書き下し文」
御音信としてねり酒両樽并に蚫一折を送り越され候ふ、懇志の段祝着に候ふ、則ち
賞翫せしめ候ひ恐れ入り候ふ、いづれも申すべく候ふ、謹言、
「解釈」
ご進物として練酒二樽と鮑一箱を送ってくださいました。親切なお気持ちに満足しております。すぐに味わいまして、恐縮しております。いずれの者かがお礼を申し上げるはずです。以上、謹んで申し上げます。
「注釈」
「ねり酒」─練酒・煉酒。①白酒の一種。蒸した餅米を酒とかきまぜ、石臼でひいて漉
したもの。製法は現在とほとんど同じであるが、当時はみりんが一般にな
かったため酒を用いたので現在のように甘口のものではない。その色が練
絹のようだというのでこの名がつけられ、博多の練酒は特に有名であっ
た。練貫酒(ねりぬきざけ)。練貫(『日本国語大辞典』)。