ライフワークの中間整理(Interim report of suicide research)
人間はさまざまな動機(原因や目的)によって、自ら命を絶とうとするのですが、その原因の1つと目されるものに恥があります。私がこれまでに紹介した記事のなかにも、恥と自殺の関係をうかがわせる事例がいくつもありましたが(「自殺の中世史30」・「自…
応永二十五年(1418)三月八日条(『図書寮叢刊 看聞日記』1─199) 八日、霽、(中略) (中院) 抑三条坊門大納言通守卿去月十日令二自害一、以二小刀一喉吭かき切云々、春日祭 上卿事被レ仰、難二治故障一之由申、猶現見被レ仰、窮困過法難レ叶之…
私は以前、「自殺の中世史18〜22」という記事で、自殺史料の分析視角・課題・展望をまとめたことがあります。ところが、関連文献を読んでいくうちに、いくつか考え直さなければならないことに気づいたので、ここでいったんまとめておこうと思います。 前…
【「自殺の中世史2─9」からのつづき】 嘉元二年(1304)九月十三日、石清水八幡宮山上の社殿で、閉籠していた大山崎神人たちが集団で切腹事件を起こしました。いったい、なぜこのような事件が起きたのでしょうか。まずは、この事件の概要を説明してお…
寛元四年(1246)六月九日条 (『大日本古記録 岡屋関白記』1─109) (藤原頼経) 九日、丙申、晴、此間世間不静、毎夜連日回禄、又関東有事云々、入道大納言廻 (北条) (北条) (北条) 謀察、相触武士等討時頼、〈泰時朝臣末子、兄経」時死去之…
正治元年(1199)十月十三日条 (『猪隈関白記』2─3頁) 十三日、壬申、 (殿以下十一字、モト十二日條ニ記セリ、今符號ノ意ニヨリテ移ス) 晴、殿下令参院・内并長講堂、 (後鳥羽) 頭権大夫親経朝臣相具文書来、香椎宮神人貞正・宗友与石清水権寺主…
ここまで、『吾妻鏡』に記された自殺を紹介してきました。鎌倉幕府の歴史書だけあって、武士らしく、戦さに関する自殺記事が多いように思います。そのなかでも注目しなければならなかったのが、「恥」でした。 以前、「自殺の中世史3〜17、33〜36」で…
「死の道を知らざる人の事」十二『沙石集』巻第八ノ五 (『新編日本古典文学全集』52、小学館、2001) 天竺に、那蘭陀寺の戒賢論師と云ひしは、付法蔵の三蔵、やんごとなき智者にて、玄奘三蔵の師なり。重病に沈みて、苦痛忍び難かりければ、自害せん…
【その5】 ここまで、だらだらと個人的な悩みを書いてきましたが、悩みは独白するだけでもある程度スッキリするものです。当たり前のことかもしれませんが、私は今後、自殺を「行為」とみなし、①自殺の原因・理由動機、②自殺の目的動機、③目的遂行のために…
【その4】 そうすると、「自殺念慮」という欲求は、いったいどこから生まれてきたのでしょうか。なぜ、人間は成長とともに死を望むようになるのでしょうか。こうした問題について1つの答えを与えてくれるのが、坂田登氏の論文(9)です。これは、生やセッ…
【その3】 さて私は、自殺によって実現される事態・価値を自殺の「目的」と表現しましたが、ダグラス(Jack D.Douglas)という社会学者は、同様のものを自殺の「社会的意味」として追究しています。本来はダグラスの原著に目を通すべきなのですが、英語の著…
【その2】 このような自問自答を書き連ねてきて、1つ気づいたことがあります。それは、私が何を目的に自殺の原因を追い求めてきたのか、ということです。とても単純すぎて意識にのぼらなかったのですが、どうやら私は「自殺を止めたい」ようです。「原因」…
【その1】 なんとなく気づいていたのですが、予想通り、「因果連鎖の問題」(1)に陥ってしまいました。「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないですが、桶屋が儲かったのは、ネズミが桶をかじったからなのか、猫が減ってネズミが増えたからなのか…、盲人が三…
ここまで古代の自殺史料を9点紹介してきました。この他にもまだまだ史料はありますが、それは「自殺の中世史10 古代史の研究紹介」で紹介した、鈴木英鷹氏の論文(注)の事例リストをご覧いただくとして、ひとまず考えたことをまとめてみようと思います。…
「数年前だったか、新聞紙上で、大宅映子さんのこんな行文にふれた。『死ぬとわかっていて、なぜ人間は生きてゆけるのか』、そういう根源的な問いに答えを出していくのが文学部というところだという、ある大学での講演のくだりである。」 鷲田清一「死なない…