九 梨子羽郷預所下文写
コヽニカキハンアリ
下 安芸国沼田庄梨子羽郷
補任付上毛 弁海名主職事
見月
右彼職者、可二孫鶴丸相伝一之由、就レ令二言上一、無二左右一被二宛下一之処、見月
帯二母儀和与状并代々宛文等一歎申之間、如レ元所三補二任当職一也、有レ限所当公事
(庄家ヵ)
以下、任二先例一無二懈怠一可レ被レ致二其沙汰一、被下承知敢勿二違失一、故以下、
(1340)
暦応三季八月十三日
「書き下し文」
此処に書判有り
下す 安芸国沼田庄梨子羽郷
補任す、付けたり上毛、弁海名主職の事
見月
右彼の職は、孫鶴丸相伝すべきの由、言上せしむるに就き、左右無く充て下さるるの処、見月母儀和与状并びに代々充文等を帯び歎き申すの間、元のごとく当職に補任する所なり、限り有る所当公事以下、先例に任せ懈怠無く其の沙汰致さるべし、庄家承知し敢へて違失すること勿かれ、ことさらに以て下す、
「解釈」
安芸国沼田庄梨子羽郷に下達する。
弁海名主職(上毛も付加する)を見月に補任する。
右、この弁海名名主職は、孫鶴丸が相伝するべきであると申請してきたので、ためらわずに補任したところ、見月が母の和与状と代々の充行状を持って訴え申してきたので、元通りにこの名主職に見月を任命するところである。重要な所当公事などを、先例のとおりに怠けることなく納めなければならない。梨子羽郷の住人らはこの命令を承知し、けっして背いてはならない。格別に下達する。
「注釈」
「上毛」─未詳。地名か。