周梨槃特のブログ

史料紹介という修行

仏通寺文書20

    二〇 一笑禅慶外二名連署向上寺條々規式

 

  (安芸豊田郡生口島

   向上寺条々規式

 一当寺住持先年所定雖二十五月、近来或一回或半年任意退去、然則行事

  世諦退転多之、以故檀那懇請重加評議、向後堅守旧規、必可

  二十五月之法事、

                       (若)

 一典座可一回上レ限事、但依器用□住持檀方堅相留者、再任一両回亦得

  矣、  

 一年中定案之規式、住持典座堅可之事、但因水旱等若収納減少而定案分

                  (補ヵ)

  不足之時者、命両檀那□之、若檀方不出、則可僧一二人

  其外不減、以行事諸役等欠也、如此減衆尚不足、則盂蘭盆

  嚫銭可之、若尚有欠、則衆僧衣料或減或略亦得矣、□□所置空銭

            (典)    (限)

  十貫文弁用売米[ ]□座交代之時眼、同可本銭十貫文之事、

 一僧衆八人之内、僧堂衆五人塔院一人庫裏二人也、但典座一人者昼夜不

  庫裡、小番者排被於僧堂隙赴行事之事、

                         (檀那ヵ)

    ]売米買大豆小豆等之諸弁用之事、宜於□□六郎左衛門方弁之

  事、若濫以私義別人堅所禁断也、

 一毎年秋収檀方内検之時、寺家必出僧二人証明之事、

 (一)

 □典座或小番名洗衣等、若於里間米一粒、是為私盗、常住檀方若有

                                  (不)

 見聞者、不隠蔵[   ]堅加検察、若有実犯者則[   ]□

 許門中出入之事、

    (文安四年・1447)           (一笑)

    [   ]十二月廿三日   仏通住持禅慶書(花押)

                     (千畝)

                  仏通前住周竹(花押)

                  向上住持聖宗(花押)

 

 「書き下し文」

   向上寺条々規式

 一つ、当寺住持先年定むる所二十五月を限ると雖も、近来或いは一回或いは半年、意に任せて退去す、然れば則ち行事の世諦退転すること之多し、故の檀那の懇請を以て重ねて評議を加ふ、向後堅く旧規を守り、必ず二十五月の法を守るべき事、

 一つ、典座は一回を以て限りと為すべき事、但し器用により若し住持・檀那方堅く相留めば、再任一両回亦得るか、

 一つ、年中定案の規式、住持・典座堅く之を守るべき事、但し水旱等により若し収納減少して定案分不足するの時は、両檀那に命じ之を補助せしむべし、若し檀方出ださずんば、則ち僧一、二人を減らすべし、其の外減らすべからず、行事・諸役等を以て欠くべきなり、此くのごとく衆を減らして尚足らずんば、則ち盂蘭盆の嚫銭之を略すべし、若し尚欠くる所有らば、則ち衆僧の衣料或いは減らし或いは略すこと亦得るか、(書き下せないため中略)典座交代の時限、同じく本銭十貫文を渡すべきの事、

 一つ、僧衆八人の内、僧堂衆五人・塔院一人・庫裏二人なり、但し典座一人は昼夜庫裏を離れず、小番は排なり僧堂に位せられ、隙を以て行事に赴くべきの事、

 (前闕)米を売り大豆・小豆等の諸弁用を買ふの事、宜しく檀那六郎左衛門方に於いて弁ずべきの事、若し濫りに私義を以て別人を倩はば、堅く禁断する所なり、

 一つ、毎年秋収の檀方内検の時、寺家必ず僧二人を出だし証明と為すべきの事、

 一つ、典座或いは小番名・洗衣等、若し里間に於いて米一粒を送らば、是れ私盗と為せ、常住檀方若し見聞有らば、(書き下せないため、中略)堅く検察を加へよ、若し実犯有らば則ち(書き下せないため、中略)門中の出入りを許すべからざる事、

 

 「解釈」

 一つ、先年、当寺の住持について、二十五ヶ月を任期と定めたけれども、最近は一度、あるいは半年ほど就任して、勝手に退任している。だから、仏事の費用がなくなってしまうことが多い。縁のある檀那の心を込めた願いによって、もう一度評議を行ない、今後は厳密に旧規を守り、必ず二十五ヶ月の法を守らなければならないこと。

 一つ、典座は就任一回を限度とするべきこと。ただし、その人の才能によって、もし住持や檀那たちが熱心に慰留するなら、一、二回再任することもできるだろう。

 一つ、住持や典座は確定している年中行事を厳密に守らなければならないこと。ただし、水害や旱魃によって、もし収納が減少して決まった費用が不足するときは、二人の檀那に命じて補助させるべきである。もし檀那たちが費用を出さないならば、僧侶の数を一、二人減らせばよい。その他に僧侶の数を減らしてはならない。行事やさまざまな役目などを減らすべきである。このように僧衆の数を減らしてまだ足りなければ、盂蘭盆会のお布施を省略すればよい。もしさらに費用不足があれば、僧侶たちの衣料を減らし、あるいは省略することもできるだろうか。(訳せないため中略)典座交代の時には、同じように本銭十貫文を渡さなければならないこと。

 一つ、僧衆八人の内訳は、僧堂衆五人・塔院一人・庫裏二人である。ただし、典座一人は昼夜庫裏を離れず、小番は並んで僧堂に配置され、折を見て行事に参加しなければならないこと。

 (前闕)米を売り、大豆や小豆などの諸物資を買うこと。必ず檀那六郎左衛門方で支払うべきこと。もしむやみに、私的な考えで別人を雇うことがあれば、厳密に禁止するところである。

 一つ、毎秋の収穫における檀那方の内検のとき、寺家は必ず僧侶二人を派遣して証明としなければならないこと。

 一つ、典座あるいは小番名と洗衣らは、もし郷里で米一粒でも流用するならば、私的な盗用とみなしなさい。もし常住の僧侶たちや檀那方が見聞するならば、(訳せないため中略)、隠すことなく厳しく取り調べなさい。もし実際に罪を犯していたならば、門派への出入りを許してはならないこと。

 

*書き下し・解釈ともに、よくわからないところばかりです。なお、三条目・五条目を見ると、檀那は向上寺を経済的にサポートする一方、寺用の諸物資を独占的に販売するという双務契約を結んでいたことがわかります。

 

 「注釈」

「嚫銭」

 ─嚫銭は達嚫拏の銭金の意味で、現在では嚫金、達嚫、下嚫と書くことが多い。達嚫拏は dakṣiṇā もしくは dakshinā で謝礼、寄進、贈与、財施の意味。法要や斎会の費用もしくは法衣の費用を寄進することをいう(千田たくま「南宋の晋山式と住持の職能」『禪學研究』第98号、2020年3月、41頁、注(16)、https://hu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1081&item_no=1&page_id=25&block_id=79参照)。