三一 小早川興平并祥誾外九名連署制札 ○東大影写本ニヨル
(端裏書)
「制札」
御許山仏通寺制札
一当住持番衆諸塔主、堅可レ被三相二守先師之規式一事、
(不器之仁)(事)
一諸派出番納所等、不レ可レ被レ任二□□□□一□、
一当納所一回之間、寺家細大雑務件々可レ被レ請二衆評一事、
一年々寺領、随二土貢、豊倹一衆僧多二寡一事、
一寺領田地作之事、給人方可レ有二停止一事、
一山中老若共、昏鐘鳴終而、寺中諸寮舎不レ可二徘徊一、若於レ有下難二廻避一
(這法彳途越壁)
用上者、扣レ門成レ聲可レ弁レ之、背此旨□□□□□□輩者、可レ為二盗火之
(之事)
罪人一□□、
(不可開之事)
一諸谷口々、搆二関抜一、夜中叩□□□□□、
一於二諸経営并風呂等一、高聲狼藉之事、評定衆堅可レ被レ制レ之、若有二違犯者一
(師)
而致二口論一者、相共直擯出而永不レ可レ許二門中出入一、其外背二□之儀一輩、
(暫)
於二自余一有二□時許容一、以可レ為二同罪一之事、
(一就)
□□売買、本寺之器為レ本、別不三許二用大小一事、
(一)
□於二一番座敷山一、随二不器之仁一不レ可二雑入一、但於二本寺成功一者、許レ
之亦得矣、
「一於二門中一、重罪他出之輩、不レ許再来之事、」
(可塞之事)
一本寺山木戸并夏切含暉之横路、堅□□□□、
「一牆并路不レ可レ寄二左右一之事、」
(一雖)
□□為二寺家修造一、伐二築山之木并山中植木一、失二境致一、其外於二山林一取二
材木已下一、不レ可レ出二寺外一之事、
一於二門中一、重罪他出之輩、不レ許二再来一之事、 「於二山外一白衣莎笠之事、」
(一尼衆)
□□□無レ伴而、山中諸寮舎不レ許二洗濯出入一之事、
(儀)
一本寺并諸塔頭、若於二一院一有二非例之□一者、評定衆可レ被レ董之事、
(右以此規) (評議、若於違犯)
□□□□式、末代寺家可レ然様可有□□□□□□輩者、堅可レ加二成敗一之状如件、
(1525)
大永五年〈乙酉〉八月六日
(永)(花押)
当住持瑞□ [ ]
(賀)(花押)
納所 瑞□[ ]
(可)(花押)
侍真 妙□[ ]
(花押)
維那 曇樹[ ]
芥禅院智光(花押)
両足院見忠(花押)
正法院全育(花押)
長松院恵舜(花押)
永徳院慶讃(花押)
肯心院祥誾(花押)
掃部頭興平(花押)
○本文書紙継目ゴトニ「備中守敬賀(花押)」ノ裏書アリ
○「 」内ハ住持記ニヨリ補フ
「書き下し文」
一つ、当住持・番衆・諸塔主、堅く先師の規式を相守らるべき事、
一つ、諸派の出番・納所等、不器の人に任せらるべからざる事、
一つ、当納所一回の間、寺家細大の雑務の件々衆評を請はるべき事、
一つ、年々寺領、土貢の豊倹に随ひ衆僧多寡する事、
一つ、寺領田地作の事、給人方停止有るべき事、
一つ、山中の老若ども、昏鐘鳴り終わりて、寺中の諸寮舎徘徊すべからず、若し廻避し難き用有るに於いては、門を扣き声を成し之を弁ずべし、此の旨・這の法に背き途に彳み壁を越ゆる輩は、盗火の罪人となすべきの事、
一つ、諸谷口々、関抜けを構へ、夜中に叩き開くべからざるの事、
一つ、諸経営并びに風呂等に於いて、高声・狼藉の事、評定衆堅く之を制せらるべし、若し違犯する者有りて口論を致さば、相共に直ぐに擯出して永く門中出入りを許すべからず、其の外師の儀に背く輩、自余に於いて暫時許容有るも、以て同罪と為すべきの事、
一つ、売買に就き、本寺の器を本と為し、別に大小を許用せざる事、
一つ、一番座敷山に於いて、不器の仁に随ひ雑入すべからず、但し本寺の成功に於いては、之を許すことも亦得るか、
「一つ、門中に於いて、重罪他出の輩、再来を許さざるの事、」
一つ、本寺の山の木戸并びに夏切の含暉の横路、堅く之を塞ぐべき事、
「一つ、牆并びに路左右に寄るべからざるの事、」
一つ、寺家修造の為と雖も、築山の木并びに山中の植木を伐らば、境致を失ふ、其の外山林に於いて材木已下を取り、寺外に出だすべからざるの事、
一つ、門中に於いて、重罪他出の輩、再来を許さざるの事、「山外に於いて白衣・莎笠の事、」
一つ、尼衆伴無くて、山中諸寮舎洗濯出入を許さざるの事、
一つ、本寺并びに諸塔頭、若し一院に於いて非例の儀有らば、評定衆董さるべきの事、
右此の規式を以て、末代寺家然るべきの様評議有るべし、若し違犯の輩に於いては、堅く成敗を加ふべきの状件のごとし、
「解釈」
一つ、当住職・番衆・諸塔主は、厳密に先師の定めた規則を互いに守らならなければならないこと。
一つ、諸派から人員を出す番衆・納所等の役職は、資質・才能のない人間に任せてはならないこと。
一つ、当納所は一度目の任期中であるので、寺院のあらゆる雑務については評定衆の評議を要請しなければならないこと。
一つ、年ごとの寺領の年貢の豊凶にしたがって、衆僧の数を増減すること。
一つ、寺領の田地を作ること。給人となっている寺僧たちが田作りをすることを停止するべきこと。
一つ、山中に暮らす人々は、晩鐘が鳴り終わってから、寺中のさまざまな寮舎を徘徊してはならない。もし避けられない用事があるときには、門を叩いて声を上げ、その事情を述べよ。この法に背いて道に佇み、壁を越えて侵入する者は、盗人・放火の罪人とみなすべきこと。
一つ、さまざま谷の入り口で、関所を抜けることを企て、夜中に門を叩き開いてはならないこと。
一つ、さまざまな饗応や風呂などで、大声を出したり狼藉をしたりすること。評定衆は厳密にこれを制止しなければならない。もし違犯する者がいて口論するならば、みな一緒にすぐに追放して、永久に寺内への出入りを許してはならない。その他、先師の規範に背く者は、しばらくの間は許容するが、同罪とするべきであること。
一つ、売買について、本寺の枡を基本として、それ以外の大小の枡を許容してはならないこと。
一つ、一番座敷山には、無能な者に従って作法をわきまえずに入ってはならない。ただし、当寺に私財を寄付した者については、入山を許可してもよいだろう。
「一つ、寺内において重罪を犯して出奔した者は、当寺への再来を許さないこと。」
一つ、当寺の山の木戸や夏場の含暉院の横の道は、厳密に塞がなければならないこと。
「一つ、垣や道の左右に近寄ってはならないこと。」
一つ、寺家修造のためだとしても、築山の木や山中の植木を切るなら、寺内の景観を損なう。その他、山林で材木などを取り、寺外に持ち出してはならないこと。
一つ、寺内において重罪を犯して出奔した者は、当寺への再来を許さないこと。「寺外で白衣や蓑を着てはならない。」
一つ、尼衆はお供のないまま、寺内のさまざまな寮舎に洗濯のために出入りするのを許さないこと。
一つ、本寺ならびに諸塔頭において、もし一つの塔頭でも前例にない勝手な振る舞いがあれば、評定衆がその行為を正さなければならないこと。
右、この規則によって、将来まで寺院が適切であるように評議するべきである。もし違犯する者については、厳しく処罰するべきである。
*書き下し文・解釈ともによくわからないところがあります。