周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

須佐神社文書 参考史料2の4

   五〇 小童祇園社祭式歳中行事定書 その4

 

 一十五日

  於御旅所献上(割書)「御 供三舛三合御神酒三舛三合」実光ヨリ出ス

   此御下リ仮殿ニテ社人不残戴居候処出雲儀故有テ天保元未年ヨリ此席ニ不面

  御神楽献惣社人ヨリ、勤方三太夫前ニ同

    但此散物社人銘々ヨリ上ル舛物之分御神事入用御供草履警固ゟ出シ申ニ付其料

    トシテ遣ス、并御神酒戴セ申事

   年中諸入用算用致割賦候事

    但神宮寺ヨリ三人分実光ヨリ二人分出シ申事

 一十六日  (割書)「於御旅所神宮寺ヨリ振舞有大祢宜 三太夫 薦敷」

  御神事吹囃シ春日井広石塩貝 (割書)「三谷ヨリ打入之事」

    但広石塩貝両谷先後争論出来御約之上(天保六年)隔番仁相定御書

    双方エ御下ヶ有同年広石谷(乙未正月)先江立候事

  御子舞 鉢音楽神宮寺 太鼓刑部

    但仮殿之外三遍巡ル

   金御幣周兵衛(春日井) 金御幣吟蔵 金御幣 (塩貝)長七

   御先鉾保蔵 御太刀伴次郎 御子頭加賀 神子増蔵

   神子伴次郎 神子千吉

   右巡終テ直ニ仮殿ニ入ル

  御還幸御行列并御供

   御幸之節ニ同断 但宇買村石見出張ハ無之

  諸願成就御神酒頂戴(割書)「神前両人 三太夫 婆利賽祢宜 輿番四人」

    但此神酒神前両人ヨリ弁備

 一十七日散物勘定 三太夫立会

   但十三日ヨリ十六日迄之分集メ

    拾匁 正月六月両度油代神前両人隔年相勤分

    三匁 六月十八日散銭開キ御神酒代

    五匁 右諸願成就御神酒代

    四匁 御祭礼中警固番賃遣ス

    弐匁 同祝儀

    〆拾九匁五分 引残リ神前両人二ツ割

   舛物之内

    三舛 陸奥

    三舛 加賀

    弐舛 薦敷

    〆八舛 三人江配分残リ同断

     但白米之分者十八日散銭開ニ用

 

   つづく

 

*書き下し文は省略します。

 

 「解釈」

 一つ、十五日。

  御旅所で、御供三升三合、御神酒三升三合を献上する。本社禰宜の実光から出す。

   この下ろし物は、仮殿で神職が残らず頂戴するが、武塔社神主近藤出雲は、理由

   があって天保元未年(一八三〇)からこの座に着かない。

  御神楽の際に献上する供物。すべての神職から。神楽の演者は三太夫(広田陸奥

  田中刑部・陶山加賀)で、前に同じ。

    ただし、この供物は神職らがそれぞれ進上する。枡で計量する供物について

    は、御神事用の供物や草履を警固役から出し申すに付けて、その経費として警

    固役に遣わす。併せて、御神酒も警固役に頂戴させ申し上げること。

   年中行事の諸費用を計算し、割り当てますこと。

    ただし、神宮寺から三人分、禰宜の実光から二人分を出し申すこと。

 一つ、十六日。  御旅所で、神宮寺から大禰宜伊達紀伊守・三太夫(広田陸奥・田

          中刑部・陶山加賀)・薦敷千吉へ饗応があった。

  御神事の吹囃子は、春日井谷・広石谷・塩貝谷の三つの谷からやってくること。

    ただし、広石谷・塩貝谷の両谷が、先か後かの順番争いを起こし、天保六年

    (一八三五)取り決めがなされた。隔年で前後を決めるという御定書を両谷へ

    お下しになった。同年乙未正月は広石谷が先に立ちますこと。

  神子舞。銅拍子役は神宮寺。太鼓は田中刑部。

    ただし、仮殿の外を三度廻る。

   金の御幣持ちは春日井谷の周兵衛。同じく金の御幣持ちは竜王禰宜の吟蔵。同じ

   く金の御幣持ちは塩貝八王子禰宜長七。

   御先鉾役は比叡禰宜保蔵。御太刀持ちは伴次郎。神子頭は陶山加賀。神子役は公

   達禰宜の増蔵。同じく神子役は伴次郎。同じく神子役は荒神禰宜千吉。

   右の人々は廻り終わってそのまま仮殿に入る。

  御還幸の行列ならびに御供。

   神幸の時と同じ。 ただし、宇賀村の信野石見が出向くことはない。

  諸願成就のためにお供えした御神酒は、神宮寺別当と大禰宜伊達紀伊守の二人、三

  太夫(広田陸奥・田中刑部・陶山加賀)頗梨采禰宜、御輿番四人が頂戴する。

    ただしこの御神酒は、神宮寺別当と大禰宜伊達紀伊守の二人がお供えする。

 一つ、十七日賽銭や供物の勘定。三太夫(広田陸奥・田中刑部・陶山加賀)が立ち会

 う。

  ただし、十三日から十六日までの分を集める。

   十匁 正月と六月の二度の油代は、神宮寺別当と大禰宜伊達紀伊守の二人が隔年

      で支払う分。

   三匁 六月十八日賽銭開きのときに供える御神酒の費用。

   五匁 十六日の諸願成就の御祈願のときの御神酒の費用。

   四匁 御祭礼中の警固番の賃料として遣わす。

   二匁 同じく警固番への祝儀。

   合計十九匁五分を引いて、残りを神宮寺別当と大禰宜伊達紀伊守の二人で割り、

   いただく。

  枡で計量した供物のうち、

   三升は広田陸奥が受け取る。

   三升は陶山加賀が受け取る。

   二升は薦敷千吉が受け取る。

   合計八升はこの三人に配分し、残ったものも三人に配分する。

    ただし、白米の分は、十八日の賽銭開きのときに使う。

 

   つづく

 

 「注釈」

「舛物」─枡物。枡で計量した物。米や小麦のような穀物のことだと思います。

 

「吹囃子」─楽器の演奏などによるお囃子か。

 

「鉢」─銅拍子のことか。シンバルのような楽器。

 

「伴次郎」

 ─御太刀持ちと神子役に同名の人物が現れます。前者は御輿番の伴次郎かもしれません(「小童祇園社祭式歳中行事定書 その2」五月十日条参照)。

 

「千吉」

 ─これも荒神禰宜千吉と八幡禰宜千吉(仙吉)がいて、同一人物か、異なる人物かわかりません。

 

「神前両人」─神宮寺別当と大禰宜伊達紀伊守の二人。

 

「〆拾九匁五分」

 ─右の五項目を合計すると二十四匁になるのですが、実際は「十九匁五分」と記載されています。ひょっとすると、「三匁」と「二匁」、あるいは「五匁」の単位が、「分」なのかもしれません。