周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

看聞日記

蜂戦 ─「三日蜂」と「しし蜂」─

応永三十一年(1424)八月二十三日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─55頁) 廿三日、晴、時正初日也、入風呂如例、抑今日御所棟上有しゝ蜂巣、三日蜂二卅 飛来、欲食蜂子、仍巣之廻しゝ蜂数千相集三日蜂と合戦、二時余噛合、死有疵 蜂数多、遂しゝ蜂負…

姿の見えない帯商人とデカい女 (Yokai Obi merchant and female titan)

「妖怪 デカい女」 永享二年(1430)十二月十二日条 (『満済准后日記』下─197頁) 十二日。晴。(中略) 室町殿御所種々怪異尚不断絶云々。何日事哉らん。常御座所前御庭ニテ帯ヲ (之イ) 商売ス。女声也〔云々〕。忩被出人被見処不見候。希代事也…

特集 変女・奇女! 〜ホラーとジェンダー〜

*変女? 変なる女? 奇女? 奇しき女? いったいどのような読み方をしていいのかもわかりませんが、とにかく奇妙な女が現れました。 【史料1】 応永二十二年(1415)七月二十三・二十六日条 (『満済准后日記』上─72頁) 廿三日。〈己丑。天晴。〉相…

神の油断とそのお詫び

【史料1】 嘉吉三年(1443)十二月九日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』7─93頁) 〔執〕 九日、晴、(中略)抑祇園修行夢想ニ造内裏遅々、急速可有沙汰之由、祇園被示、 執行召仕下女 〔託〕 其後物付俄物狂、沙を食して詫宣云、内裏炎上之日ハ祇園守護…

中世若狭のラップ現象 ─竈が吠えた!─ (The rap phenomenon)

嘉吉三年(1443)十一月十三日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』7─84頁) 十三日、晴、(中略)抑若狭有社頭伊勢、贄殿竈、去八九月之間連日吠、社人卜 (武田信賢) 之、九月廿二三日之間ニ可有大乱云々、守護ニ注進令祈祷、果而内裏炎上、謀反 人露顕、…

走りだす鞘にキレる将軍 (The sheaths of short swords started running)

「妖怪 鞘走り(さやばしり)」 嘉吉元年(1441)六月二十三日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』6─293頁) 廿三日、小雨降、(中略) (頭書) 「後聞、今日公方御腰刀鞘走、他之御腰物被召寄、又サヤハシル、御腹立云々、 御怪異如此歟、」 「書き下し…

てるてるビーフ、てるビーフ♪ ─てるてる坊主史研究?への提言─(Magic spell for praying for fine weather)

応永三十一年(1424)七月十七日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─47頁) (生島) 十七日、晴、明盛参、世事語之、牛一枚〈板切両方」ニ二頭書、〉持参、当絵所預 秀行筆云々、雨降之時牛ヲ逆ニ釣、然者雨晴云々、其為絵所ニ可令書之由兼仰付 了、仍持…

国家的要注意人物 ─中世的障害者観─(A loose cannon in Medieval Japan)

嘉吉元年(一四四一)五月十六日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』6─280頁) 十六日、晴、持斎如例、(中略)抑聞、異形之比丘尼自奥州上洛、此間徘徊云々、其 形有目一云々、但片顔ニ額より大なるこふありて、おとかひまてさかる、其下ニ 分明 有眼歟、不■■…

妖怪たちの乱痴気騒ぎ (Yokai parade)

嘉吉元年(一四四一)二月二十七日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』6─257頁) 廿七日、晴、時正中日也、持斎如例、(中略)抑此間一条もとり橋東爪ニ夜々有 (細川持常) 拍物、三ヶ夜めニ、細河讃州聞之、人を出して令見、忽然而失、妖物所行也、仍 公方へ…

あかちゃんの頭… (Baby's head ...)

永享十年(一四三八)二月十・十一日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』6─123頁) (賀茂) 十日、晴、(中略)抑台所縁下赤子頭犬食来歟、巳時見付、吉凶不審之間、在貞朝臣 捨 尋之、凡赤子頭ハ吉事之由申、其所ニ埋云々、然而不審事也、在貞返事病事・ (…

切り裂き女房 ─Nyobo the Ripper─  付:妖怪「鳶人」

「妖怪 髪切(かみきり)」 【史料1】 永享十年(1438)二月六日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』6─121頁) 六日、晴、暁風吹、(中略)聞、此間公方御所中変化之物〈女房云々〉、女中切髪、 或切小袖、其人目ニ見、他人不見云々、不思議事歟、御祈無…

竹の中からトクトクと… ─竹取物語の変異譚 part2─(The power of Vaiśravaṇa)

永享八年(1436)七月五日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』5─296頁) 五日、晴、入夜雨下、自公方五色二籠・酒蘸十桶・沸出酒小棰一給、件酒ハ河内国 〔者〕〔沙〕 住人窮困之物毘舎門ニ祈請、為其利生竹を切、中より酒沸出、又味噌も涌出 云々、(後略…

唾液フェティシズム (Saliva fetishism)

永享八年(1436)三月二十七日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』5─255頁) (土御門) 廿七日、晴、(中略)陰陽師有重参、霊気祭今月仕事之間、禁裏申沙汰、仍是へも 持参之由申、四半紙十三枚ニ鶏一羽つヽ書、是ニ御唾被吐懸可給之由申、一年中 閏月ま…

天狗のイタズラ その2 (Tengu's mischief ─part2)

永享八年(1436)三月二十三日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』5─254頁) 廿三日、晴、予誕生日来廿五日祈禱疏大光明寺進之、書名字如例、浄喜馳申、行蔵庵 小喝食庵ニ火を付、已燃上之処見付消之、喝食則逐電、月見岡辺河ニ入て泣、草刈 童部見付庵へ…

数珠が切れたんですけど… (The string of the Buddhist rosary snapped.)

永享八年(1436)二月二十四日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』5─242頁) 廿四日、小雨降、(中略)次北野参、欲所作之処、念珠緒切了、是吉瑞云々、仏神之 前所作之時緒切事、所願成就之瑞云々、殊珍重也、(後略) 「書き下し文」 二十四日、小雨降る…

永松庵妊婦殺人事件

永享七年(1435)三月二十四・二十七日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』5─98頁) 廿四日、晴、(中略) (裏書) 「廿四日、今暁永松庵僧超俊逐電、相尋之処、舟津下女密会懐妊了、〈為九 曰 月」云々、〉件女を永松庵門前畠麦中ニ殺けり、血流之間尋求…

室町時代のルパン三世 ─泉涌寺より愛をこめて─

【史料1】 永享七年(1435)二月二十一日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』5─87頁) 廿一日、晴、(中略)抑去十八日夜、泉涌寺塔頭青苔院へ強盗入、自兼倉之尻を (見怡) 穿て財宝悉取放火、近辺塔頭同炎上云々、青苔院へ西雲庵なと重宝文庫ニ被預置 …

観音霊場の威力 ─中世の物体移動現象─ (Phenomenon of moving things without notice)

永享六年(1434)四月十一日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』4─304頁) (庭田幸子)(田向経兼女)(庭田重有室)(田向長資)(西大路) 十一日、晴、早朝石山参詣、南御方・ 近衛 ・ 御乳人 ・源三位・隆富朝臣・ (庭田)(世尊寺)基祐 山 重賢・…

中世利根川のポロロッカ!?

永享五年(1433)十月廿六日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』4─235頁) 廿六日、雨降、入風呂如例、(中略)抑関東有不思儀之怪異、先大地震、堂舎顛倒、 (全ヵ) (利根) 人多死、又八幡宮〈鶴岡」歟、〉金灯炉焼失、〈金焼」云々〉、又刀祢川逆ニ流…

両頭の蛇 (Two-headed snake)

永享五年(1433)閏七月二十七日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』4─204頁) 廿七日、晴、朝両頭小蛇一方入頭穴之間不見、尾方有頭、両頭初而見、希有事也、 「書き下し文」 二十七日、晴る、朝両頭の小蛇一方の頭を穴に入るるの間見えず、尾の方にも頭…

神のお使い その2 ─北野天満宮とイタチ─ (Parivara of God Part2)

永享五年(1433)二月九日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』4─145頁) 九日、晴、室町殿八幡社参、自今夕北野七ヶ日可有参籠云々、明後日一万句連歌御法 (二条持基) 楽也、執柄以下廿頭也、諸方連歌経営無他事云々、 (裏書) 「聞、室町殿八幡社参御…

ウツワの小さな小便坊主 (Monniken Pis)

永享四年(1432)五月二十四日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』4─56頁) 廿四日、晴、聞、去廿日北野社僧七八人児一両人相伴、下京辺勧進くせ舞見物、面々 酔気之間、北山鹿苑寺未見之由申、帰路彼寺へ罷向、寺門ニ僧一人小便ス、児見之 (抛ヵ) 咲之間…

強制参拝 ─女神様のアメとムチ─ (Forced worship ─Carrot and stick used by the goddess)

永享四年(1432)四月二十一日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』4─44頁) 廿一日、晴、賀茂祭也、 (中略) (慈光寺) 抑持経参宮可同道之由、自今春約束申、然而依計会思留云々、而持経妻此間俄為狂 〔議〕 気神宮有御託宣、参宮思留之条不思儀也、不参…

越後屋、おぬしもワルよのぉ〜

永享三年(1431)七月六・十・十九日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─297・300・302頁) 六日、晴、明日花合如例取集、座敷等室礼、抑聞、米商買之者六人侍所召捕糺問、被 去月以来 書湯起請云々、此事此間洛中辺土飢饉、忽及餓死云々、是米商…

流罪と追放

永享三年(一四三一)六月十九日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─295頁) 十九日、晴、月次連歌定直申沙汰、 (中略) 抑聞、去五月十四日相国寺沙弥預〈勝定院沙弥、〉被打擲、鹿苑院僧所行云々、依 堂 之沙喝蜂起、僧■ニ閇籠、寺を欲焼鳴鐘、寺中騒動之…

一軒家から借家への転落

永享三年(一四三一)四月十九日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─282頁) (西大路) 西大路之 十九日、晴、隆富朝臣窮困過法之間、宿所沽却云々、仍当所移住、御所辺祗候之 由申、今日参、妻子等相伴云々、不便也、侍臣相加祗候珍重、但可加扶持之条 計…

壬生閻魔堂のかぐや姫 ─竹取物語の変異譚 part1─(The Princess Kaguya-like Yokai)

「妖怪 かぐやもどき」 応永三十二年(1425)五月六日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─123頁) 六日、晴、(中略) 〔閻〕 抑聞、此間壬生地蔵堂之内、炎魔堂柱朽損之間、加修理之処、柱内ヨリ女房 〔議〕 忽然而出来、則成長而番匠ヲ喰云々、若鬼歟…

未来からのサイン ─物言ふ動物・予言獣─ (Signs of death)

「予言鶏 & 予言馬」 応永三十二年(1425)二月二十八日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─99頁) 参議右中将義量 廿八日、晴、入風呂如例、将軍他界実事也、昨夕云々、為天下驚歎、両三年内損、此 間興盛、種々被尽祈療、然而無其験、遂被堕命、当年十…

ハーレム内の憂鬱 ④ 〜中世公家密通法〜

永享二年(1430)五月十一日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─201頁) (正親町三条) 五月十一日、晴、仙洞女房一条局〈日野中納言盛光卿女、〉令懐妊云々、是三条中将 (後小松上皇)(足利義教) (実煕) 実雅朝臣所犯也、自仙洞室町殿へ被訟仰之…

ハーレム内の憂鬱 ③ 〜免罪の理由〜

【史料1】 応永三十一年(1424)六月一日・四日・八日条 (『図書寮叢刊 看聞日記』3─38〜45頁) (田向) (兼宣) 六月一日、晴、毎事幸甚々々、祝着如例、抑長資朝臣自広橋可来之由申間出京、是仙 (称光天皇) 洞女中事、此間被閣了、而再発、…