永享五年(1433)十月廿六日条
(『図書寮叢刊 看聞日記』4─235頁)
廿六日、雨降、入風呂如例、(中略)抑関東有不思儀之怪異、先大地震、堂舎顛倒、
(全ヵ) (利根)
人多死、又八幡宮〈鶴岡」歟、〉金灯炉焼失、〈金焼」云々〉、又刀祢川逆ニ流
〔議〕
云々、凡四ヶ条有不思儀、今一ヶ條不聞、去夏秋之間事也、
*割書とその改行は〈 」 〉で記しました。
「書き下し文」
二十六日、雨降る、風呂に入ること例のごとし、(中略)そもそも関東に不思議の怪異有り、先づ大地震へ、堂舎顛倒し、人多く死す、また八幡宮〈鶴岡か、〉金灯炉焼失す、〈全焼と云々〉、また刀祢川逆に流ると云々、凡そ四ヶ条の不思議有り、今一ヶ條聞かず、去んぬる夏秋の間の事なり、
「解釈」
二十六日、雨が降った。いつものように風呂に入った。(中略)さて、関東で原因不明の怪異があった。まず大地が震え、堂舎が転倒し、人が多く死んだ。また、鶴岡八幡宮の金灯篭が焼失した。すべて焼けたという。また利根川の水が逆流したそうだ。だいたい四ヶ条の不思議があった。もう一ヶ条は聞いていない。この前の夏から秋にかけてのことである。
「注釈」
*ただ「ポロロッカ」という言葉を使いたかった。それだけの記事です…。今回の場合は潮の干満によるものではなく、大地震後の津波発生による川の逆流現象だったと考えられます。
それにしても、発生原因が地震だけに不謹慎ではあるのですが、あの流域面積最大の利根川が逆流する様子を、一度は見て見たいものです。江戸時代以前の利根川は、現在と流路が異なり、東京湾に流れ込んでいたようですから(『利根川水系の流域及び河川の概要』国土交通省河川局、2005、36〜38頁
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/051206/pdf/ref5.pdf)、江戸川や荒川、隅田川や多摩川などが逆流するようなイメージでしょうか。