周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

神のお使い その2 ─北野天満宮とイタチ─ (Parivara of God Part2)

  永享五年(1433)二月九日条

       (『図書寮叢刊 看聞日記』4─145頁)

 

 九日、晴、室町殿八幡社参、自今夕北野七ヶ日可有参籠云々、明後日一万句連歌御法

    二条持基

  楽也、執柄以下廿頭也、諸方連歌経営無他事云々、

 (裏書)

 「聞、室町殿八幡社参御下向之時、馬場辺歩行、御前へ梢より箭一筋落、又猪鼻辺ニ

  箭一拾給、吉事之間御悦喜云々、若公出生之瑞歟、珍重也、又北野参籠之時、イタ

  チヲ被御覧、是天神仕者也、吉瑞共御祝着云々、」

 

 「書き下し文」

 九日、晴る、室町殿八幡に社参す、今夕より北野七ヶ日参籠有るべしと云々、明後日一万句連歌御法楽なり、執柄以下二十頭なり、諸方連歌の経営他事無しと云々、

 (裏書)「聞く、室町殿八幡社参御下向の時、馬場辺りを歩行す、御前へ梢より箭一筋落つ、又猪鼻辺りに箭一つ拾ひ給ふ、吉事の間御悦喜と云々、若公出生の瑞か、珍重なり、又北野参籠の時、いたちを御覧ぜらる、是れ天神に仕ふる者なり、吉瑞ともに御祝着と云々、」

 

 「解釈」

 九日、晴れ。室町殿足利義教石清水八幡宮に参拝した。今夕から七日間北野社に参籠するはずだという。明後日は一万句連歌のご奉納日である。摂政二条持基以下二十人が参加者である。あちこちで連歌会の準備に余念なく奔走しているそうだ。

 (裏書)「聞くところによると、室町殿足利義教石清水八幡宮にご下向になったとき、馬場あたりを歩いていると、義教の御前に梢から矢が一本落ちた。また猪鼻あたりで矢一本をお拾いになった。吉兆なのでお喜びになったそうだ。若君がご誕生になる奇瑞だろうか。また北野社にご参籠のとき、鼬をご覧になった。これは天神様に仕えている動物である。この吉兆はどちらも喜ばしいことだという。」

 

 General Ashikaga Yoshinori visited to worship Iwashimizu Hachimangu shrine. When he was walking around the horse farm, an arrow fell from the treetop in front of him. He also picked up an arrow around Inohana slope. He was pleased because it is a good sign. Is it a good omen for him to have a boy? Then when he visited to worship the Kitano-tenmangu shrine, he saw Weasel. This is an animal that serves Kitanotenjin (deity). Both of these auspicious signs are wonderful.

 (I used Google Translate.)

 

 

 「注釈」

「馬場」

 ─三ノ鳥居から本殿へと続く「馬場先」と呼ばれる参道のことか。

 

「猪鼻」

 ─猪鼻坂のことか。二の鳥居と神幸橋の間にある上り坂。現在は存在しないようです(谷村勉「安居頭諸事覚を読む」『会報』五五、八幡の歴史を探究する会http://yrekitan.exblog.jp/iv/detail/?s=23217675&i=201411%2F02%2F25%2Ff0300125_10595954.jpg)。

 

*天神様のお使いといえば、なんといっても牛ですが(北野天満宮HP、http://kitanotenmangu.or.jp/info/blog/第1話%E3%80%80天神様と牛.html)、この記事によると、イタチがお使いとして登場しています。おそらく、牛のほうが古くから天神様と縁が深かったのでしょうが、それにしても、いつからイタチは天神様の使いになったのでしょうか。