周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

須佐神社文書 参考史料2の8(完)

   五〇 小童祇園社祭式歳中行事定書 その8

 

 一十日

  御注連揚ヶ之式 御注連下シ与同様

  若宮遊之事

    若宮引於拝殿  (割書)「右陸奥左刑部」神宮寺勤之

    同神楽散物   三太夫三ツ割ニ納

  若宮附之事    陸奥

   礼物三匁 散米二升同人ニ納

    布料弐匁     神前当人

     四ツ割仁シテ配分   中座 但陸奥モ人数割之事

                東座

                西座

  御供精進備

    賄方者壱度宛之事

    願主銘々弁 但数有之時者模相ニテ取計申事

 一九日ヨリ十日晩迄散物末社等配分放生会ニ同(割書)「潤月者本月並」

 一年中祭日神殿御戸開次第三太夫社参可仕事

 一郡中祈祷之節三太夫モ参詣之事

 一常夜灯 神宮寺ヨリ調ス但其料畑有

 一神前御幣 神宮寺ヨリ調申事

 一御本社鍵取  祢宜実光

    以 上

   此書別当エ壱通禰宜エ壱通三太夫エ壱通相納置毎歳正月十四日初祭当之節披露可

   仕事

  右年中行事祭式旧記雖有之、歳霜隔無拠指縺等出来彼是博変之儀有之、当度願出、

  御出役在テ拒障之義等夫々御改之上、銘々勤方納得一同例座シ書載連印相違無之上

  者、毛頭違背不仕、永々無怠謾弥以於神前御武運長久、五穀成就之旨抽丹精相勤可

  申、依テ向後違乱為無之御奥書願受定書如件、

         当時

         今高野山安楽院ヨリ兼帯別当神宮寺印

   (1836)           禰宜 伊達紀伊守印

   天保七年          幣取 広田陸奥正印

    丙申六月         国宗 田中 形部印

                舞神子 陶山加賀正印

               武塔神主 近藤出雲正印

               妙見祢宜   貞兵衛印

               山王祢宜   与兵衛印

               天神祢宜   新五郎印

               厳嶋祢宜   留十郎印

               竜王祢宜   吟 蔵印

               比叡祢宜   保 蔵印

               八幡祢宜   仙 吉印

               君達祢宜   増 蔵印

              八将神祢宜   万 吉印

                神子役   伴次郎印

                大頭役   周兵衛印

                御加役   自 然印

                同     熊五郎

                同     文三郎印

               頭庄屋

               庄屋兼帯

                   直右衛門殿

               出役

               田打村庄屋

                   五右衛門殿

               出役

               戸字村庄屋

                   作右衛門殿

                庄屋

                   茂 三 郎殿

                庄屋

                   喜代兵衛殿

                庄屋格

                組 頭

                   万 兵 衛殿

                組頭

                   森 太 郎殿

                組頭

                   六右衛門殿

  右之通定書相調申候処少シ茂相違無御座候間、乍恐御奥書奉願上候以上

   丙申              頭庄屋

                    庄屋兼帯

    六月               直右衛門印

                   出役

                    田打村庄屋

                     五右衛門印

                   出役

                    戸字村庄屋

                     作右衛門印

                   庄屋

                     茂 三 郎印

                   庄屋

                     喜代兵衛印

                   庄屋格

                   組 頭

                     万 兵 衛印

                   組頭

                     森 太 郎印

                   組頭

                     六右衛門印

   村方

    御役所

     前書之趣承届候、後来定之通違乱

     無之様可取計者也

  申六月 村方

        御役所 印

   御奥書者時之       伊達紀伊

   御代官星野正太夫様     藤原朝臣実本書之

 

   おわり

 

*書き下し文は省略します。

 

 「解釈」

 一つ、十日。

  御注連縄上げの儀式。御注連縄下げの儀式と同様。

  若宮遊のこと。

    若宮引は、拝殿で、右が広田陸奥、左が田中刑部、そして神宮寺が勤める。

    若宮の神楽の供物は、三太夫(広田陸奥・田中刑部・陶山加賀)が三つに割り

    納める。

    若宮附のこと。広田陸奥の役。

     礼物三匁と散米二升は同広田陸奥に納める。

      布料二匁は神前両人(本社大禰宜伊達紀伊守・神宮寺別当)に納める。

       四つに割って配分する。 中の座。東の座。西の座。ただし、陸奥も人

       数に含めて割ること。

  御精進供を供える。

    賄い方は一度ずつのこと。

    願主がそれぞれ支払う。ただし、数が多いときには、物相で取り計らい申すこ

    と。

 一つ、九日から十日の晩までの供物を末社等に配分する。放生会と同じ。閏月は九月

 並み。

 一つ、年中の祭日では、神殿の御戸を開き次第、三太夫が社参しなければならないこ

 と。

 一つ、甲奴郡中の祈祷のとき、三太夫も参詣すること。

 一つ、常夜灯は、神宮寺が調進する。ただし、その費用を拠出する畑がある。

 一つ、神前の御幣は神宮寺が調進すること。

 一つ、御本社の鍵取り役は禰宜の実光。

    以上。

   この書は神宮寺別当へ一通、禰宜伊達紀伊守へ一通、三太夫へ一通、それぞれ納

   め置き、毎年正月十四日の最初の月次祭のときに披露しなければならないこと。

  右の年中行事の祭式には旧記があるけれども、年月が隔たり、なんともしがたい混

  乱が出てきて、あれやこれやと幅広く変わってしまったところがある。この度我々

  が願い出て、神事の役目を辞退するものがいる件などを、それぞれ兼役のお役人が

  お改めになり、神事を勤めるものがそれぞれに納得し、一同がいつものように座

  り、印を連ねることに間違いないうえは、けっしてこの内容に背いてはならない。

  永久に怠ることなく、ますます神前において武運長久や五穀豊穣を、心を込めて祈

  祷し申し上げなければならない。そこで、今後違乱のないよう、御代官様の御奥書

  を願い受ける定書は、以上のとおりである。

 

   (神職の署判、充所の役人名は省略)

 

  右の通り、定書を調え申しましたところ、少しも間違いはありませんので、恐れな

  がら役人一同、御代官様に御奥書を願い申し上げます。以上。

 

   (役人の署判は省略)

 

   村方

    御役所

     前書の内容は承りました。後々、定書の通りに違乱のないよう、取り計らわ

     なければならないものである。

  天保七年(一八三六)六月 村方御役所 印

   御奥書は、時の御代官星野正太夫様。

   伊達紀伊守藤原朝臣実本がこれを書いた。

 

   おわり

 

 「注釈」

「若宮遊」─未詳。若宮社の前で行われる神事舞か。

 

「若宮引」─未詳。

 

「若宮附」─未詳。

 

「神前当人」

 ─「神前両人」の誤記か。それなら「神宮寺別当と大禰宜伊達紀伊守」の二人を指す。

 

「模相」

 ─「物相・盛相」のこと。飯を盛ってはかる器。ふつう円筒形の曲物で、これに飯を押し込んで型に抜き供する。多く寺院などで用いられる(『日本国語大辞典』)。

 

「出役」

 ─江戸時代、本役のほかに、臨時に他の職務を兼ねること。また、その役人(『日本国語大辞典』)。

 

「拒障」─辞退すること(『日本国語大辞典』)。