周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

須佐神社文書 参考史料2の7

   五〇 小童祇園社祭式歳中行事定書 その7

 

 一初九日 御祭礼規式

  君達江献上噛米三合也 飯御下リ(割書)「加賀増蔵」頂戴

   此噛米三合ハ御供米壱斗弐舛之内ニテ上ケ残リ炊事、舛取万吉役、釜敷蓋附飯同

   人戴

  御供盛役 大前  三太夫之外不残手伝

  板拭飯六本備并頂戴前餅仁同

   御本社江    御本膳 十七膳

   大御輿江    同    壱膳

   厳島江     同    壱膳

   君達社江    同    壱膳

                    図

       杉盛飯十 立三膳   飯   梨

       杉盛餅同  三膳     栗 柿

   御本社江五ツ立飯  三膳   餅   柚

       五ツ立餅  三膳

               図如是杉盛トス壱膳也

       杉盛飯十 立壱膳   飯

       杉盛飯十 立壱膳   ● ○ ○

   大御輿江五ツ立飯  壱膳  ○ ○ ○ ○

       五ツ立餅  壱膳   ○ ○ ○

 

       杉盛飯十 立壱膳  三ツ把

       杉盛飯十 立壱膳   ● ○ ○

   厳島社江五ツ立餅  壱膳  ○ ○ ○ ○

       五ツ立餅  壱膳   ○ ○ ○

 

                  ●飯    ○ 

                     ○

   薬師堂江 杉盛飯十二立壱膳  ○     ○

        杉盛飯十二立壱膳

 

   合 御供数  百八ツ     ●飯    ○

     三ツ把餅 百八ツ

                     ○

 

                  ○     ○

 

    薬師堂江    同    壱膳

    合弐拾壱膳

  御神供献上之次第

   先拝殿ヨリ棚守貞平操出シ宮方之者階之上迄持運ヒ賽銭箱之上ニテ加賀エ渡次形

   部受取夫ヨリ御内陸奥エ渡夫ヨリ紀伊守受取 献神前仁

       御祓祝詞    東 神宮寺

   御本社 供物献上    中 紀伊

               左 陸奥

   厳島社 右同      中 紀伊

     御神酒頂戴     左 陸奥

  御当神楽 三太夫相勤御鬮善悪村役方エ相届申事

  御祓献上  宇賀村石見拝殿ニテ勤之

  御神事吹囃 (割書)「宮部下谷市場桂正寺」 四谷ヨリ打入レ

  御神酒   当人ヨリ出村内氏子頂戴

  御神供配当

   四膳 本社神主役    四膳 本社禰宜

   壱膳 婆利賽禰宜役   壱膳 御山天狗禰宜

   壱膳 若宮支配役    弐膳 神前犳

   三膳 祭当役      弐膳 祭当役

  右九膳神宮寺江     右九膳禰宜実光江

   壱膳 若宮禰宜

   壱膳 幣取役      壱膳 舞御子役

   壱膳 祭当役      壱膳 祭当役

  右三膳幣取陸奥江    右弐膳舞神子役加賀江

   壱膳 大鼓役      壱膳 厳島禰宜

               弐膳 狗

   壱膳 祭当役      壱膳 祭当役

  右弐膳大鼓役形部江   右四膳大前留十郎江

   壱膳 武塔社神主役

   壱膳 祭当役      壱膳 祭当役

  右弐膳武塔神主出雲江  右御加役文三郎江

   三膳 荒神禰宜役    壱膳 祭当役

   壱膳 八幡禰宜役   右六ツ宗保蔵江

   壱膳 祭当役

  右五膳宮部千吉江     壱膳 妙見禰宜

   三膳 荒神禰宜役    壱膳 祭当役

   壱膳 神子役     右弐膳行実貞平江

   壱膳 宮定遣      壱膳 神子役

  右五膳薦敷仮役宮部千吉江 壱膳 御太刀役

   壱膳 竜王祢宜役    壱膳 祭当役

   壱膳 祭当役     右三膳新シ屋伴次郎江

  右弐膳千田屋吟蔵江    壱膳 神子役

   壱膳 山王祢宜役    壱膳 祭当役

   壱膳 祭当役     右弐膳大前増蔵江

  右弐膳広石与兵衛江    壱膳 君達祢宜役

   壱膳 舛取役     右(割書)「加賀増蔵」 両人江

   壱膳 祭当役      壱膳 高山天神祢宜役

  右弐膳中屋万吉江     壱膳 的役

   壱膳 大頭役      壱膳 祭当役

   壱膳 祭当役     右三膳高山新五郎江

  右藤井周兵衛江      壱膳 祭当役

   壱膳 祭当役     右御加役市場熊五郎

  右御加役自然江      壱膳 的馬役

   壱膳 膳共ニ其儘也  右村役所江膳トモ其儘贈ル

   杉盛御飯十二杯     四膳

   杉盛御餅十二把    右其年之当人江

  右正願寺江        壱膳

              右宇賀村石見江

   壱膳 但シ此分参詣無之候得者不下ケ

  右宇賀村大和江      壱膳 警固江下ケ

  合八拾五膳

  右配当余リ之分ハ調残之割ト号惣宮方割賦ス

  御酒壱舛村役江贈申事

  御神前祝詞薄ヘリ壱枚杓大小弐本実光江

  厳島祝詞莞筵一枚杓大小弐本散米壱舛陸奥江贈事

          但シ六日九日十日分

  餅筵壱枚     貞平江

  清筵壱枚     万吉江

  三太夫遣ヒ御久米紙 当人ヨリ出ス事

  夜神楽 始メ申時役場江達シ役人之内壱人出張之事

   神前江御鏡餅一重御神酒一舛備 御下リ実光頂戴

   厳島江小餅五ツ備 御下リ留十郎頂戴

   夜食

   右神田ヲ以 保蔵指出申事

 

   つづく

 

*書き下し文は省略します。

 

 「解釈」

 一つ、初九日御祭礼の規式。

  君達社へ献上するのは噛米三合である。下ろし物の飯は陶山加賀と君達社禰宜増蔵

  が頂戴する。

   この噛米三合は御供米一斗二升の中から進上して、残りを炊くこと。枡取は八将

   神禰宜万吉の役。釜敷と蓋の付いた飯は万吉がいただく。

  御供の盛り役は、厳島禰宜大前留十郎。三太夫(広田陸奥・田中刑部・陶山加賀)

  のほかは、残らず手伝う。

  板拭飯六本を供え、並びに頂戴する。前の餅に同じ。

   御本社へ御本膳十七膳を供える。

   大御輿へ同じく一膳を供える。

   厳島社へ同じく一膳を供える。

   君達社へ同じく一膳を供える。

 

   御本社へ。杉盛飯十本を立て、三膳を供える。杉盛餅十個を立て、三膳を供え

   る。五つの立飯三膳を供える。五つの立餅三膳を供える。

    (以下、配膳図、大御輿・厳島社・薬師堂は省略)

 

   締めて、お供えの数は百八つ、三つ把餅は百八つ。

 

   薬師堂へ。同じく御本膳一膳を供える。

   合計二十一膳。

  御神供献上の次第。

   まず拝殿から棚守役の妙見社禰宜貞平が御神供を取り出し、神職たちが階段の上

   まで持ち運び、賽銭箱の上で陶山加賀へ渡す。次いで田中刑部が受け取り、それ

   から御内陣の広田陸奥に渡す。それから本社神主伊達紀伊守が受け取る。そし

   て、神前に献上する。

   御本社への御祓祝詞と供物の献上役。東の座は神宮寺別当の役、中央の座は本社

   神主伊達紀伊守の役、左の座は広田陸奥の役。

   厳島社へも右と同じ。中央の座は本社神主伊達紀伊守の役、左の座は広田陸奥

   役。御神酒を頂戴する。

  御頭役の神楽。三太夫が勤め、御籤の善悪の結果を村役人へ届け申すこと。

  御幣献上。  宇賀村の信野石見が拝殿で勤める。

  御神事の吹囃子。 宮部・下谷・市場・桂正寺の四谷から演奏しながらやってく

  る。

  御神酒   頭役より出す。村内の氏子が頂戴する。

  御神供献上の配当。

   四膳は本社神主伊達紀伊守の役。一膳は頗梨采禰宜の役。一膳は若宮の分配役が

   供える。三膳は祭の当番の役。

  右の九膳は神宮寺へ納める。

   四膳は本社禰宜実光の役。一膳は亀甲山の天狗禰宜の役。二膳は神前の狛犬に供

   える。二膳は祭の当番の役。

  右の九膳は本社禰宜実光へ納める。

   一膳は若宮禰宜の役。一膳は幣取広田陸奥の役。一膳は祭の当番の役。

  右の三膳は幣取広田陸奥へ納める。

   一膳は舞神子陶山加賀の役。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は舞神子役陶山加賀へ納める。

   一膳は大鼓田中刑部の役。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は大鼓役田中刑部へ納める。

   一膳は厳島禰宜大前留十郎の役。二膳は狛犬へ供える。一膳は祭の当番の役。

  右の四膳は大前留十郎へ納める。

   一膳は武塔神主近藤出雲の役。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は武塔神主近藤出雲へ納める。

   一膳は祭の当番の役。

  右は御加役へ納める。

   三膳は荒神禰宜千吉の役。一膳は八幡禰宜千吉(仙吉)の役。一膳は祭の当番の

   役。

  右の五膳は宮部の千吉へ納める。

   一膳は祭の当番の役。

  右は六ツ宗比叡禰宜保蔵へ納める。

   三膳は荒神禰宜千吉の役。一膳は神子役が納める。一膳は宮定へ遣わす。

  右の五膳は薦敷の仮役でもある荒神禰宜宮部の千吉へ納める。

   一膳は妙見禰宜貞平の役。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は行実の妙見禰宜貞平へ納める。

   一膳は竜王禰宜吟蔵の役。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は千田屋の竜王禰宜吟蔵へ納める。

   一膳は神子役が納める。一膳は御太刀役伴十郎が納める。一膳は祭の当番の役。

  右の三膳は新シ屋伴次郎へ納める。

   一膳は山王禰宜与兵衛の役。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は広石谷の山王禰宜与兵衛へ納める。

   一膳は神子役が納める。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は厳島禰宜大前留十郎と神子役君達禰宜増蔵へ納める。

   一膳は枡取役八将神禰宜万吉の役。一膳は祭の当番の役。

  右の二膳は八将神禰宜中屋万吉へ納める。

   一膳は君達禰宜増蔵の役。

  右は陶山加賀と君達禰宜増蔵の両人へ納める。

   一膳は大頭役春日井谷の藤井周兵衛の役。一膳は祭の当番の役。

  右は藤井周兵衛へ納める。

   一膳は高山天神禰宜新五郎の役。一膳は的役が納める。一膳は祭の当番の役。

  右の三膳は高山天神禰宜新五郎へ納める。

   一膳は祭の当番の役。

  右は御加役自然へ納める。

   一膳は祭の当番の役。

  右は御加役市場の熊五郎へ納める。

   一膳は膳とともにそのまま贈る。杉盛御飯十二杯。杉盛御餅十二把。

  右は正願寺へ納める。

   一膳は的馬役が納める。

  右は村の役所へ御膳と一緒にそのまま贈る。

   四膳。

  右はその年の当番へ納める。

   一膳。

  右は宇賀村の信野石見へ納める。

   一膳。ただしこの分は参詣人がいないなら、下ろし物にしない。

  右は宇賀村の大和へ納める。

   一膳は警固へ下ろす。

  合計八十五膳。

  右の配当しきれていない十二膳分は、「調残之割」と呼んで、すべての神職に割り

  振り、進上させる。

  御酒一升は村役人へ贈り申すこと。

  御神前での祝詞奏上。薄縁一枚、灼大小二本を本社禰宜実光へ納める。

  厳島社での祝詞奏上。莞筵一枚、杓大小二本、散米一升を広田陸奥へ贈ること。

          ただし、六日・九日・十日分

  餅を置く筵一枚。     妙見禰宜貞平へ納める。

  清筵一枚。        八将神禰宜万吉へ納める。

  三太夫に遣わす御供米と紙は、当番から出すこと。

  夜の神楽は始め申すときに役場に伝達し、役人の中から一人が出向くこと。

   神前へ御鏡餅一重ねと御神酒一升を供える。お下がりを本社禰宜実光が頂戴す

   る。

   厳島社へ小餅五つ供える。お下がりは厳島禰宜大前留十郎が頂戴する。

   夜食。

   右は神殿の収穫米をもって、比叡禰宜保蔵が差し出し申すこと。

 

   つづく

 

 「注釈」

「噛米」

 ─「小童祗園社由来拾遺伝」によると、「毎年九月九日にお供えを献上するとき、まず噛み米と名付けてそれを清め、最初は生米のままで供え、またその次に飯として炊き上がらないうちに、『すくいまんま』と名付けて粥のようなものを供える。その後よく炊いた飯を諸神一列に供え申し上げる故実がある。お粥をお供えするのは、幼い神であるからだろうか。その訳を今は知る人がいない」(「小童祗園社由来拾遺伝 その5」の解釈参照)とあります。

 

「板拭飯」

 ─未詳。「拭」は「敷」の当て字か。板を敷物に用いた飯のことかもしれません。

 

「杉盛飯」─杉のように盛った飯。

 

「立飯・立餅」─未詳。杉盛飯のような飯や餅の盛り方か。

 

「三ツ把餅」─未詳。三つ重ねの餅のことか。

 

「御本社 東・中・左」

 ─「須佐神社縁起 その5」によると、東の座には蛇毒鬼神天王、中央の座には牛頭天王、左(西)の座には「しやふしよい天王」(未詳)が鎮座しているとある。

 

「御神供配当」

 ─下ろし物として各人に配当されたものか、進上品として各人に配当されたものか判然としません。

 

「御加役」─未詳。頭人(当人・当番)の補佐役か。

 

「行実」

 ─中世小童保の「行実名」に由来する地名。須佐神社そばの「宮部」と「桂正寺」との間にある(『甲奴町誌』一九九四、参照)。

 

「合八拾五膳」

 ─合計すると七十三膳で十二膳足りません。以下に続く「配当余り之分」というのは、「配当しきれていない分」と解釈しておきます。