解題
本文書は吉川元春の書状である。さまざまな所有者を経て、当館に所蔵される事になったものである。
一 吉川元春書状(折紙)
返々以二書中一申上候条、上へ御方御持参候て、趣可レ被二仰上一候く、付而不レ可レ有二御油断一候、
(毛利)
宇山申分之儀、自二元康一如レ此被二申越一候、趣者書中ニ相二見之一候、何と申候
而茂事破候てハ不レ可レ然候条、先早々御撿使被二差上一、以二其上互之意趣一、
被二 聞召一候ハてハと存事候、御方最前之都合御存知之儀候間、有二御披露一、
兎角頓御撿使肝要候、恐々謹言、
十一月廿一日 元春(花押)
(就親ヵ)
庄原兵部丞殿
御宿所
「書き下し文」
宇山申し分の儀、元康より此くのごとく申し越され候ふ、趣は書中に之相見え候ふ、何と申し候ひても事破れ候ひては然るべからず候ふ条、先ず早々に御検使差し上げられ、其の上互ひの意趣を以て、聞こし召され候はてはと存ずる事に候ふ、御方最前の都合御存知の儀候ふ間、御披露有り、兎角頓て御検使肝要に候ふ、恐々謹言、
返す返す書中を以て申し上げ候ふ条、上へ御方御持参候ひて、趣仰せ上げらるべく候ふべく候ふ、付して御油断有るべからず、
「解釈」
宇山の訴えの件について、毛利元康からこのように取り次がれました。その内容は書面に見えています。何と申し上げましても、この件が破綻しましてはよくありません。まずは早々に御検使を差し上げられ、そのうえでお互いの主張を輝元様がお聞きにならなくては、と存じております。あなた様の最新の事情を輝元様もご存知ですので、ご披露ください。いずれにせよすぐに御検使を差し上げることが肝要です。以上、謹んで申し上げます。
くれぐれも書面をもって申し上げます件は、輝元様へあなた様自身が書面をご持参になりまして、主張を仰らなければなりません。さらに、ご油断があってはなりません。
「注釈」
「宇山」─未詳。
「御方」─あなた様。庄原兵部丞のことか。
「上」─毛利輝元か。
*「宇山」「御方」「上」など、ほとんどの人物を否定できず、関係性もよくわからな
いので、かなりいい加減な書き下しと解釈になってしまいました。