周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

須佐神社文書 その4

 一 須佐神社縁起 その4

 

*本文が長いので、いくつかのパーツに分けて紹介していきます。

 

                (讃岐)

  太郎王子、そふかふてんのふ、さぬきの國たきのやしろ、こすてんのふ、

  (本) (日光菩薩    (大歳神)          (魔王天王)

  ほん地につかふぼさつ、だいさいぢんなり、二郎王子、まをふてんのふ、

       (廣峯)            勢至菩薩   (陰神)

  はりまの國ひろみね、こずてんのふ、ほんぢせいしぼさつ、大おんぢんなり、

               因幡

  三郎王子、ぐまらてんのふ、いなばの国たかをか、こずてんのふ、ほん地ぢぞう

      だいじやう                   (安芸) (佐東)

  ぼさつ、大将ぐんちんなり、四郎王子、とくだつてんのふ、あきの國さとう、

                       とく

  こずてんのふ、本地くわんせおんぼさつ、とし徳神也、五郎王子、りやふじ

       (越)                   月光菩薩

  てんのふ、ゑつ中の國しよふび、こずてんのふ、ほん地ぐわつこふぼさつ、

 

  さいはちん也、六郎王子、たつびさてんのふ、やまとの國吉野、こずてんのふ、

     (釋迦如)

  ほんちしやかによ來さいぎやふ神なり、七郎王子、地神藏天王、しもをさの國

  そたつ、こすてんのふ、ほん地薬師如來、ひやふびちんなり、八郎王子、

  としやうそふてんのふ、やましろの國二鳥谷、こすてんのふ、本地こくう地蔵

      ばん

  菩薩、大番神也、じやどくきぢんてんのふと申奉るわ、五条の天王是なり、

  しやれいでんき、ふときに而、かんかへ見るときんば、此こずてんのふ八王子

  じやとく鬼神、とうむ天神、やく而、ぎやふぢん、はりさいによ、まかだいこく

                

  てん神、八まん四せん六百五拾除神、ろくづろくめんろつひろくそくのけんぞく

  ぶんしんなりとうんぬん、じひふかき物をは、しゆこし、しやけんの物をは、

                                  (寶龜)

  ばつせんとの御せいくわんなり、あるせつにいわく、にんのふ四十九代ほうき

            光仁天皇   (御)      ゑきれい

  五ねんきのへとら、かうにんてんのふのぎよ宇四月、天下疫癘はやる、びしう

  (世羅)さと(童武塔)

  せらの郷わらんへむとうにおいて、たくしていわく、あつかれわ、これじやどく

  鬼神成り、本地めうけんぼさつなり、此さと、こずてんのふをまつるへし、

  此ちのさしもぐさ、ゑきれいみそきばらいせよとかんさりましぬ、ごんてん所を

  たて、どうねん六月十四日、はた、つゞみ、ふへ、かねをうち、きやうむ

      しんかう ぎやふ

  さりゝゝと神幸しゆ行、おたび處ニ而ひじたるちんぎ、をなじく十六日ひつじさる

                                   ひゝ

  のこく、もとのごんてん所はいのふすとうんぬん、それよりれいじやふ目目に

  はんゑい、むらさと、こをりくより、あかめうやまいたてまつりおわん、

   つづく

 

 「書き下し文」(可能な限り漢字仮名交じりにしました)

  太郎王子、相光天王、讃岐の国滝の社、牛頭天王、本地日光菩薩、大歳神なり、二

  郎王子、魔王天王、播磨国廣峯、牛頭天王、本地勢至菩薩大陰神なり、三郎王

  子、倶摩羅天王、因幡の国高岡、牛頭天王、本地地蔵菩薩、大将軍神なり、四郎王

  子、得逹天王、安芸の国佐東、牛頭天王、本地観世音菩薩、歳徳神なり、五郎王

  子、良持天王、越中国しよふび、牛頭天王、本地月光菩薩歳破神なり、六郎王

  子、逹尼漢天王、大和の国吉野、牛頭天王、本地釈迦如来歳刑神なり、七郎王子、

  地神蔵(侍神相)天王、下総の国そたつ、牛頭天王、本地薬師如来、山城の国二鳥

  谷、牛頭天王、本地虚空蔵菩薩、大番神黄幡神)なり、蛇毒鬼神天王と申し奉る

  は、五条の天王是れなり、社例伝記、風土記にて、勘へ見る時んば、此の牛頭天

  王、八王子蛇毒鬼神、武塔天王、やく而、ぎやふじん、頗梨采女、摩訶大黒天神、

  八万四千六百五十四神、六頭六面六臂六足の眷属分身なりと云々、慈悲深き物を

  ば、守護し、邪険の物をば、罰せんとの御誓願なり、或る説に曰く、人皇四十九代

  宝亀五年甲寅、光仁天皇御宇四月、天下に疫癘はやる、備州世羅の郷童武塔に於い

  て、託して曰く、あつかれは、これ蛇毒鬼神成り、本地妙見菩薩なり、此の郷に、

  牛頭天王を祭るべし、此の地のさしも草、疫癘禊祓せよと神去りましぬ、御殿所を

  建て、同年六月十四日に、幡、鼓、笛、鉦を打ち、凶夢去り去りと神幸執行、御旅

  所にて秘事たる神儀、同じく十六日未申の刻、元の御殿所へ拝納すと云々、それよ

  り霊場日々に繁栄、村里、郡々より、崇め敬い奉り了ん、

   つづく

 

 「解釈」

 太郎王子は相光天王で、讃岐国滝宮社でお祭りされている。牛頭天王の本地は日光菩薩で、大歳神でもある。二郎王子は魔王天王で、播磨国広峯社でお祭りされている。牛頭天王の本地は勢至菩薩で、大陰神でもある。三郎王子は倶摩羅天王で、因幡国高岡社でお祭りされている。牛頭天王の本地は地蔵菩薩で、大将軍神でもある。四郎王子は得逹天王で、安芸国祇園社でお祭りされている。牛頭天王の本地は観世音菩薩で、歳徳神でもある。五郎王子は良持天王で、越中国少尾でお祭りされている。牛頭天王の本地月光菩薩で、歳破神でもある。六郎王子は逹尼漢天王で、大和国吉野でお祭りされている。牛頭天王の本地は釈迦如来で、歳刑神でもある。七郎王子は侍神相天王で、下総国蘇達でお祭りされている。牛頭天王の本地は薬師如来で、山城の国二つ鳥居でお祭りされている。牛頭天王の本地は虚空蔵菩薩で、黄幡神でもある。蛇毒鬼神天王と申し奉るのは、五条の天王である。神社のしきたりや伝記、風土記で調べてみると、八王子・蛇毒鬼神・武塔天王・行疫神・頗梨采女・大黒天以下、八万四千六百五十四柱の神々は、この牛頭天王の六頭六面六臂六足が分身した眷属であるという。慈悲深いものを守護し、邪険のものを罰しようとの御誓願である。ある説に言うには、人皇四十九代宝亀五年甲寅(七七四)、光仁天皇の御代四月に、国中で疫病が流行った。備後国世羅郷小童武塔で、お告げになって言うには、「我は蛇毒鬼神である。本地は妙見菩薩である。この里に牛頭天王を祭るべきである。この地の蓬を燃やして、疫病を禊ぎ祓え」と仰って、神通力で消え去った。御殿を建て、同年六月十四日に、幡を用意し、鼓を打ち、笛を吹き、鉦を打って、「悪夢よ去れ」と唱えながら、神輿渡御を行った。御旅所で秘密の祭儀を行った。同月十六日未申の刻に、もとの御殿へ神輿を納め申し上げたそうだ。それ以来、霊場として日々繁栄し、近隣の村々や郡からの参拝者が崇め敬い申し上げた。

   つづく

 

 「注釈」

「たきのやしろ」─滝宮天満宮のことか。香川県綾歌郡綾川町滝宮。

 

「たかをか」─高岡神社。鳥取市国府町高岡。

 

「安芸の国佐東」─安神社。広島市安佐南区祇園

 

越中の国しよふび」

 ─未詳。「小童祇園社由来拾遺伝」(『甲奴町誌』資料編一、一九八八)には「少尾」と記されている。

 

「大和の国吉野」─奈良県吉野郡吉野町吉野山牛頭天王社跡。

 

「下総の国そたつ」

 ─未詳。「小童祇園社由来拾遺伝」(『甲奴町誌』資料編一、一九八八)には「蘇達」と記されている。

 

「山城の国二鳥谷」

 ─未詳。「小童祇園社由来拾遺伝」(『甲奴町誌』資料編一、一九八八)には「二ツ鳥居」と記されている。

 

「五条の天王」─五条天神社か。下京区天神前町。