二 慈雲譲状
(ゆつり)
[ ]わたす入たうさこのやまはやしはたけこ田の事
(手) (限)
右かの入たうさこは、こ入たうとのゝ御てより、ゑいたいをかきりてゆつりゆるとこ
(甥) (蔵)
ろ也、しかるをおなしをいなからくら人二らうにふちされ、心やすくわたるゝあい
(う脱)
た、こ入たうとのゝゆつりをともにあいそへて、くら人二らにゆつりわたすところ
(實) (他) (妨)
しち也、たのさまたけあるへからす、またくちきやうせしめ候へく候、よてのちのた
(状脱)
めにゆつりのくたんのことし、
かうゑい四ねん六月廿九日
慈雲(花押)
「書き下し文」(必要に応じて漢字を当てました)
譲り渡す入道迫の山林・畠・古田の事
右彼の入道迫は、故入道殿の御手より、永代を限りて譲り得る所なり、然るを同じ甥
ながら蔵人二郎に扶持され、心安く渡る間、故入道殿の譲りをともに相副へて、蔵人
二郎に譲り渡す所實なり、他の妨げあるべからず、全く知行せしめ候ふべく候ふ、仍
つて後のために譲状件のごとし、
(1345)
康永四年六月廿九日
慈雲(花押)
「解釈」
譲り渡す入道迫の山林・畠・古田のこと。
右のこの入道迫は、故入道殿ご自身より、永久に譲り得たものである。しかし、私は故入道殿の同じ甥である蔵人二郎に助けられ、安心して暮らしているので、故入道殿の譲状を、この譲状と一緒に副えて、蔵人二郎に譲り渡すことは事実である。他人の妨害があってはならない。知行を全うなさるべきです。そこで、後日のため、譲状の内容は以上のとおりです。
「注釈」
「入道迫」─未詳。三田新庄の地名か。
「故入道殿」─一号文書の道専のことか。八号文書によると、「道専」と「栗原右京助
親家」を「二親」と記載しているので、「道専」は叔母(伯母)かもし
れません。