周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

蟇沼寺文書9

    九 源内覚右連署譲状并沙弥西道証判

 

 (端裏書)

 (を)

 「□とやさとのゝゆつりしやう」

  ゆつりわたす元末名之事

    合一反六十歩者むかい田なり

     半卅歩後家分  但後家一期後さやくそ女

     下人さやくそ女後家 半卅歩田ハをとやさとのにつくへき也、

     をうとしの林後家

     (味原)

     あちはらの小林をとやさとのをかハりゆつる也、

       (譲渡)                   (懈怠)

 右件田・下人ゆつりわたすところ実也、所当御公事ニをいてハけたいなくつと

                   (領知)

 へき物也、但後家一期後ハをとやさとのりやうちすへきなり、仍為後日

 譲状如件、

     (1327)

     正中四秊正月廿七日        源内(花押)

                      覚右(花押)

               (証判)

               「沙弥西道(花押)」

 

 「書き下し文」

 「をとやさ殿の譲状」

  譲り渡す元末名の事

    合わせて一反六十歩てへり むかい田なり

     半三十歩後家分 但し後家一期の後さやくそ女

     下人さやくそ女後家 半三十歩田はをとやさ殿に付くべきなり

     をうとしの林後家

     味原の小林をとやさ殿を代はり譲るなり、

 右件の田・下人譲り渡す処実なり、所当御公事に於いては懈怠無く勤むべき物なり、但し後家一期の後はをとやさ殿の領知すべきなり、仍後日の為譲状件のごとし、

 

 「解釈」

 譲り渡す元末名のこと。

   都合一反六十歩。むかい田である。

    半三十歩は後家分。但し後家が一期領有した後は、下人さやくそ女とこの田地は、をとやさ殿に渡さなければならないのである。

    をうとしの林は後家分。

    味原の小林はをとやさ殿へ代わって譲るのである。

 右のこの田地と下人を譲り渡すことは事実である。所当御公事については、怠ることなく納めなければならないのである。但し、後家一期の後は、をとやさ殿が領有しなければならないのである。よって、後日の証拠のため、譲状は以上のとおりである。

 

 「注釈」

「所当」

 ─その土地からの所出物として領主に上納されたもの。所当官物、所当地子、所当年貢、所当公事などと用いられたが、平安末期から所当、所当米などと用いられ、室町期には年貢を意味する語となる(『古文書古記録語辞典』)。