二 沙弥某譲状 その1
(前闕)
「 神事勤仕頭人等⬜︎役事、 」
一宮二季〈二月十二月〉御祭鎭祭一夜⬜︎ 〈此物長〉進魚類酒二瓶等事、
清
八幡宮二季〈四月九月〉御祭役人別⬜︎人各送遣精進二種o酒一垂腹〈納三升〉
同臨時御祭役人〈本主時宗今者下司勤之、⬜︎⬜︎請取用途致其沙汰者也〉、二種清酒
三升以同前也、
同御社四季〈春夏秋冬〉御神楽役人季別五人[ ]二種清酒
一垂腹〈納三升〉宛事、
o正月修正斗餅一枚
遠
角振社二季〈二月十一月〉御祭役人〈⬜︎⬜︎大夫清⬜︎後家⬜︎⬜︎平大夫多門〉饗
膳[ ]進事、
[ ]御神事[
[
(伊勢大神宮ヵ)
造[
(功ヵ)
以下臨時段米徴下料田作進筆切得分事、〈子細波色々沙汰具書等具者也、〉
(時弁ヵ)
諸人申立免田畠之[ ]勘料事、子細見進物状等、
同免田畠在所出入勘定得分事、〈子細載解文書状等分明者也、〉
一宮御讀經衆不常住供僧等御初任之時、弁勘料其内切止壹町分事、〈子細
代々任々次第沙汰状等明白者也、〉
(安南郡)
勧農時一[ ]符中温科供僧[ ]下書生以下國役人等迄、佐乃 八
(部ヵ)
幡 戸坂 江田 牛田 原郷内⬜︎[ ]畢、懸具宿所令催勤[ ]
依二國宣一参路時[ ]、
件条、在廳并諸供僧郷々公文等下書生以下諸國役人等、先々皆以致二其
沙汰一畢、而近年寄二事於世間一不レ堪二不沙汰一之条、無二其謂一者哉、
一 船所惣税所職得分事、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(紙継目裏半花押)
一 天台末五ヶ寺公文職得分事、
給田壹町 〈國司御寄進浮免十一丁三百歩内也、但寺家若違乱者[ ]内之由、
可レ令二問答一者也、〉
秋畠給免壹町 〈[ ]下地也、供物徴下之時[ ]加定壹[ ]升也、〉
[
(末節)
歳⬜︎⬜︎料[
名田畠等者後[
(マ丶)
栗林地子搗[ ]五合 〈[ 不成年者五升宛⬜︎〉
屋敷壹所 〈在阿奈[ ]者可レ依二見作一、令二自作一哉否即進止也、〉
散在名田畠栗林等、任二古帳一以二別紙一可レ注レ之者也、
京上時百姓人別草手銭百文宛弁之事、
歳末節料百姓人別炭二籠宛弁進事、
村人等官位時任料弁事、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(紙継目裏花押)
つづく
*割書は〈 〉で記しました。
*書き下し文・解釈は省略。
「注釈」
「一宮」─厳島神社。
「八幡宮」─松崎八幡宮。安芸郡府中町宮の町5丁目。石清水八幡宮末社(「安芸国」
『中世諸国一宮制の基礎的研究』岩田書院、2000)。
「垂腹」─未詳。酒量の単位で、飲んで腹が垂れるほどの量ということか。以下に、
「納三升」とあることから、「納升」で三升の量が、「一垂腹」という単位
なのかもしれません。
「角振社」─安芸国神名帳に角振隼総(つのふりはやぶさ)明神とみえ、天文年中に破
壊され、前記注進状にみえる末社の山王社(現本町三丁目の三翁社)に合
「筆功」─習字に熟達すること。また、その人。「筆耕」のことであれば、写字によっ
て報酬を受けること。また、その人(いずれも『日本国語大辞典』)。どち
らにせよ、どのような「功」なのか、よくわかりません。
「勧農」─農業を勧めること。律令制下、国守の職掌中に勧課農桑があり、耕地を拡大
し収穫を増やし官物の増徴につとめることになった。荘園においては領家・
預所が勧農を行い、種子・農料を支出し、灌漑施設の整備、労働力の確保に
つとめ、年間の農作業の進行に支障のないようにした。在地で実際に勧農に
当たったのは荘官・地頭であったが、かれらはその権限を槓杆として在地支
配を行い、領主化の途をたどる(『古文書古記録語辞典』)。
「浮免」─負担額と田積のみ指定され、それを負担すべき田地(下地)、坪が固定して
いない免田をいう。大和国の東大寺白米免・香菜免・油免、興福寺の雑役免
田など、国衙から雑役を免除されたが、面積だけは定まっていたものの、下
地は毎年浮動し固定していなかった。鎌倉時代、高野山領備後国太田庄で
は、地頭別作が浮免で「雑役免は浮免なり、下地不定」と言われている
(『古文書古記録語辞典』)。
「見作」─見作田。耕作可能の田地で、所当・加地子などを負担すべき田。現在、耕作
している田。見は現(『古文書古記録語辞典』)。
「歳末節料」─歳末行事(読経や霊供)の実施に必要な物資として徴収されたもの(井
原今朝男「中世の五節供と天皇制」『日本中世の国政と家政』校倉書
房、一九九五)。
「草手銭」─山野に入り草を刈る代償として支払う米・銭。草手米、草手銭(『古文書
古記録語辞典』)。ただし、「京上時」という言葉とともに表記されてい
るので、京上夫の代銭納であったのかもしれません。戦国時代、室町幕府
御料所で見られ、荷物の運送に使役された夫役の一種に「草夫」というも
のがあるようですが(『古文書古記録語辞典』)、これと同様のものかも
しれません。「京上夫」は「荘園領主や地頭が住民に貸した夫役の一種。
荘官・地頭らが荘園現地と京都との間を往来するとき、また年貢送進に用
いる人夫役」(『古文書古記録語辞典』)。