周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

 二〇一〇年 神戸大・前期解答

 第1問 『人間の社会にとって家族は必要か?』(80点)

問1 漢字問題(2点×5)

 ⒜ 衰退  ⒝ 様相  ⒞ 速  ⒟ 帰依  ⒠ 交錯

 

問2 内容説明問題(15点)

 近代家族の親密性は、③」西洋近代に登場した②」夫婦相互と親子の愛情という、③」きわめて曖昧で検証不可能な情緒的絆を基盤に形成されたもので、④」普遍的なものではない、ということ。③」(80字)

 

問3 内容説明問題(15点)

 純粋な関係性は①」自己の情緒的満足を根拠に③」たえず選択される関係で、④」いつでも解消できるところに純粋さがあるのだが、④」持続を望めばその純粋さを失うことになる、ということ。③」(80字)

 

問4 内容説明問題(15点)

 親密な関係性の場として家族を選択したものは、⑤」その基盤となる純粋な関係性の矛盾を克服するため、⑤」高度の選択性と持続への志向性を併せもつ家族を営んでいる、ということ。⑤」(80字)

 

問5 内容・全体説明問題(25点)

 家族の意味や形態は歴史・文化・社会によって変化するもので、④」普遍的なものは存在しないが、③」子どもを生み出し、社会化された人間へと育てることは社会的に不可避であり、⑤」そのためには子どもが無条件に肯定される場としての家族が必要なので、⑤」近代家族の形態とは異なっていても、③」人間は家族の形態を変えながら営み続けることになる、ということ。⑤」(160字)

 

 第2問 『吉野拾遺』(40点)

問1 現代語訳問題

 ①奈良の都を見たいと思いまして(心惹かれまして)、②」あちこ

  ちを見てまわっておりますときに(おりますと・ましたところ)

  ②」(4点)

 ②少しの間も住むことができない②」ところ(住まい・家)で①」

                           (3点)

 ③俗世間にいることに対して気がひけて(いたたまれない)、①」

  不意に(急に)①」決心して(思い立って)①」このような出

  家の姿で①」おります(姿なのです)①」(5点)

 

問2 内容説明問題(4点 *1行)

 父親の、①」現世安穏と①」来世の極楽往生のために」①祈っている、ということ。①」

 

問3 品詞分解問題(3点)

 求め─動詞  させ─助動詞  給ひ─補助動詞

 ける─助動詞 に─助動詞   や─助詞

 

問4 心情説明問題(7点)

 根拠のないものでも、①」恋の噂というものは①」あっという間に広まってしまうので、②」公行の自分への気持ちは口外せず、①」隠したままでいてほしい、という心情。②」(70字)

 

問5 内容説明問題(4点 *1行) 

 臣下の身でありながら②」后に横恋慕するような先例。②」

 

 

 

 

問6 心情説明問題(10点)

 出家した当初は親しい人々の面影が心に浮かび、②」出家した意味がないと悔いていたが、②」そうした悩みは次第に消えて心も澄み渡り、②」修行に専念できるようになってきたものの、②」残された父を思い出すたびに悲しみくれる。②」(99字)

 

 

 第3問 『聊斎志異』(30点)

問1 内容説明問題(8点)

 明日、西南の道をやってくる、①」腹の大きな雌の驢馬に乗った女性は②」蝗の神様なので、①」その神様に哀願すれば、①」沂州は蝗の被害から逃れることができる、ということ。③」

 

問2 書き下し問題

 ②ろをとらへ(え)て①」さらしめず①」(2点)

 ③たいふ①」まさに①」なにをかなさん①」とする(3点)

 

問3 内容説明問題(6点)

 柳の神である秀才が、①」沂州の知事の夢に現れて、①」お腹の大きな雌の驢馬に乗った自分が蝗の神様であるという②」秘密をばらしてしまった、ということ。②」

 

問4 内容説明問題(4点)

 沂州に大量に現れた蝗は、①」田んぼに止まることはなく、①」柳の木にだけ集まり、①」柳の葉をすべて食べ尽くしたこと。①」

 

問5 内容説明問題(7点)

 柳の神が沂州の知事の夢に秀才の姿で現れ、②」蝗の被害を防ぐ方法を伝えたのは、①」民衆が被害に苦しむのを心配した知事の姿に②」感動したからだろう、ということ。②」

 

 

  二〇一〇年 京大文系前期

 

第1問

 問1 理由説明問題(8点)

口承で伝えられた物語の世界は、語り手の肉声から誘い出された内容が、②」聞き手の頭と体に反響して、②」音とにおいと手触りをともなった②」生々しい印象をもって実感されることによって生じる。②」(86字)

 

 問2 内容説明問題(10点)

西欧の影響下において、①」無垢で無知なものとみなされた子どもを、②」人工的な共通語を用いて、①」近代国家という新たな枠組みの②」理想的な一員として育て上げようとする、②」合理的で普遍的な価値観。②」(87字)

 

 問3 内容説明問題(10点)

ジャーナリズムの言葉は、幅広い人々が理解できるように、②」人工的に作り出された共通語に基づく②」書き言葉で、①」個人の言葉は、親密な関係で用いられ、②」地方の風土や習慣に根付いた②」話し言葉、という違い。①」(92字)

 

 問4 理由説明問題(10点)

近代が見失ってきた、②」口承文学の世界の①」神話的想像力を取り戻したいという欲求は、②」皮肉にも、①」そうした世界を見事に解読した近代学問の成果がきっかけとなっていることに対する、②」割り切れない思い。②」(91字)

 

 問5 内容説明問題(12点)

幅広い人たちが理解できる人工的な共通語を用い、②」合理的で普遍的な近代的価値観で描かれた近代の文学は、②」今や力強さと魅力を失っているので、②」口承の物語のもつ地域に根ざした言葉や、風土や習慣に生き続けてきた想像力を生かし、②」近代文学と融合させることで、②」神話的想像力を回復させ、文学の魅力を取り戻そうとする試み。②」(149字)

 

第2問

 問1 内容説明問題(10点)

人間は、人間でなくなるか、真の人間になるかといった、②」不安定な両義的可能性のなかにあるため、③」模範となる言葉や人間に出会わなければ、③」本当に人間として生きているとは答えられないから。②」(88字)

 

 問2 内容説明問題(14点)

自意識は、人間であれば自ずと持たざるを得ないもので、②」根本的に自閉的で②」すべてのものを自己の関心によって歪めて認識させるものであるが、②」自覚は、模範となる人間との出会いによって起こる目覚めであり、③」「現にある自分」と「あるべき自分」という二重性をもって自己を認識させ、②」自己実現や自己転換の契機をもたらすものである。③」(153字)

 

 問3 内容説明問題(14点)

真の人間になるための模範となる人間との出会いは、②」それだけを目的として安易に求めるべきものではなく、②」自分がどのような人間になるかという①」自身の存在に関わる問題を、②」自己の内面と向き合いながら②」悩み抜くことで、②」はじめて切実に求められるようになり、②」出会うことができるようになる、ということ。①」(139字)

 

 問4 内容説明問題(12点)

人間は非人間的になる可能性を持っているため、②」真の人間になるにはどうするべきかを自覚的に追求し、②」本当の人間だと感銘を受ける、模範としての人間との②」出会いや交わりを通して学ぶ一方、②」人間を教え育てることでしか、②」真の人間に近づくことはできないから。②」(119字)

 

第3問

 問1 現代語訳(10点)

離れても②」どうして嘆くことがありましょうか、いや嘆きはしません。③」後醍醐天皇がお住みにならず、②」つらい思いのする故郷となった都を。③」(62字)

 

 問2 現代語訳(8点×2)

 (2)

これが最後という夫師賢との対面さえ②」幕府は許さないので、②」北の方は気持ちを晴らす方法もなく、②」心残りで、②」(49字)

 (3)

幕府に捕らえられた①」多くの公家たちのなかでも、①」源具行の処罰が②」とりわけ厳しいにちがいないと②」噂になるのは②」(49字)

 

 問3 現代語訳(12点)

結局、夫具行が流罪と決まって都を離れるはずだとは、③」他の公家たちの境遇を③」見たり聞いたりするにつけても、③」あらかじめ心構えをしているが、③」(65字)

 

 問4 内容説明問題(12点)

勾当の内侍は、②」今春に後醍醐天皇が都からお離れになった時に、②」涸れてしまったと思った涙が、②」夫具行の流罪の報を聞くと、②」この身も流されてしまうほど涙が溢れ、②」今いっそう悲しく思われる、ということ。②」(93字)