周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

2015年 北海道教育大 外国人留学生

子ども観は、第三者の科学的研究の結果を当てはめるのではなく、子どもと親しく交わる人によって発見される。大人としての考えに固着せず、子どもが行為を通して語ることに、素直に耳を傾けることが必要だ。また、子どもの現象は一回性を特色としており、子どもと交わるごとに独自な現象に接し、新たな理解をする。だが、それを積み重ねることで、同じ人間として普遍的な心的傾向を発見し、子どものへ理解を深めていく。 (195字)

 

年未詳 大阪市

設問1

被災地には人々の「生活」があり、大災害で多くの切断を受けながらも、連綿と流れ続けいている。その内容は、被災地外の人々と本質的には変わらず、大災害によって日々の生活がやりにくくなった、という違いがあるだけだ。ところが、被災地外から来ると、そのあたりまえのことが、自分の中で了解されていなかったことに気づく。被災地外の者は、「事件」による切断の印象に脳裏が占拠されているため、生き延びた人々によって営まれる「生活」や、大災害前を引き継ぎながらそこにある「生活」を意外に感じてしまい、思わず「事件」で「生活」が見えなくなっていることに気づくという意味。

 

年未詳 長崎大

 「やさしさ」とはいったい何だろうか。およそ、他人に対する配慮や気遣いといった意味になるだろうが、本文に登場する高校生の少女は、席を譲らないことが「やさしさ」だと考えている。席を譲られた老人が、不愉快に思うこともあるからだ。たしかに、このような老人にとって、彼女の行為は「やさしさ」と言えるかもしれない。しかし、席を譲られて感謝する老人もいるはずだ。席を譲ってほしいと思っている老人にとって、この少女の行為は、「やさしさ」でもなんでもない。

 これに対して、席を譲ってほしいと言われれば譲る、と少女は続ける。はたして、席を譲ってほしいということを口に出す老人は、どれくらい存在するだろうか。老人に、席を譲ってほしいと発言させなければならない行為を、「やさしさ」と呼ぶことはできない。

 そもそも、人間の行為に対する受け取り方は、人それぞれである。完全にやさしい行為は存在しない。席を譲る行為も、席を譲らない行為も、やさしい行為であり、やさしくない行為でもある。そうすると、席を譲る行為は、「やさしさ」という範疇で捉えるべき問題ではないことになる。この少女の発言には、他人の心情に配慮するという考え方が顕著に表れているのだが、目の前に困っている人がいるときに、いちいち見返りや反応を求めて助けたりはしない。「やさしさ」という価値観を根拠に老人に席を譲る必要など、どこにもないのである。

 

 

  2019年 岡山赤十字看護専門学校・社会人

 

第1問 繁桝・楠見「後悔しない意思決定のために」(70点満点)

 

問1 漢字問題(2点×5)

 ⒜支持  ⒝困惑  ⒞修正  ⒟制御  ⒠吟味

 

問2 内容説明問題(20点)

 意思決定に至るプロセスは、情報を集め、選択肢をたてる決定前の段階と、実行がうまくいっているかどうかをモニターしている決定行動中の段階と、自分の決定を評価し、満足あるいは後悔の感情が起こっている決定後の段階の、三つのステップに分類できる。

 

問3 空欄補充問題(8点)

 イ

 

問4 内容説明問題(8点×3)

(a)起こりやすさ(主観的確率)や実現したうれしさ(効用)についての予測をします

(b)自分の認知と感情の変化を土台に、実行がうまく行っているかをモニターします

(c)結果を踏まえて、自分の決定を評価して、満足あるいは後悔する

 

問5 書き抜き問題 (8点)

 無意識的な直観と意識的な熟慮の特質を知り、双方をうまくいかす

 

 

*解説

   問1 /10点 *(a)のみ間違いでした。「指示」は指し示すこと、「支持」は支えることです。

 

  問2 /20点 ①これは答えにくい問題でしたね。それに、問4の解答ともほとんど被るので、解答者を少し不安にさせる悪問でした。  ②書いている内容はほぼ問題ありません。ただし、「意思決定に至るプロセスの種類について説明している内容をまとめて示しなさい」と指示されている以上、あなたの解答のように、箇条書きで書くものではないと考えられます。「プロセス」とは「過程」ですよね。意思決定のプロセスはいくつあり、どういう過程を経て決定されるのかという視点をもってまとめてほしかったです。  ③解答例と見比べてみましょう。最後の2点分の解答要素「三つのステップに分類できる」があった方がよいでしょう。2点減点。  ④それぞれ3つの要素が箇条書きになっているので、1点ずつ減点しています。

 

   問3 /8点 ①やや難問でした。設問を振り返ってみましょう。この空欄に入るのは、「長期的な意思決定プロセス」の言い換えでなければなりません。つまり、選択肢ア・ウのように、その場で決断する要素が濃いものは不適切になります。また、「2 脳と身体による決定と意識によるモニター」の意味段落(L20)には、「一瞬の意思決定のプロセス」の事例として、車の購入が示されています。このことからも、ア・ウは、「長期的な意思決定プロセス」の言い換えではないことがわかります。  ②選択肢エ「オリンピックの選手になる」ですが、これは他者から選ばれる要素が濃いので、自己の意思決定でどうにかなるものではありません。よって、不適切だと考えられます。  ③最後に、正解のイについて。長期的意思決定プロセスは、(a)(b)(c)の3つの段階に分かれていましたよね。これに「出張」の事例を当てはめてみましょう。来月の出張を念頭に置いているという時点で、そもそも決定が長期的ですよね。たとえば、自分の出発する日程が、GWのように混み合うと予想すれば切符を予約したほうがよいし、混まないと予想すれば予約しないほうがよい。あらかじめその時期の情報を集め、予約するかしないかという2つの選択肢を立てていますね。これが(a)の状況です。次に、切符の予約ボタンを押そうとしているのが(b)の段階です。最後に、予約ボタンを押した後の段階が(c)の段階です。例年どおりGWが混雑することが間違いないとなれば、予約したという決定に満足するでしょうし、今年のように、コロナのせいでGWが閑散とすることが間違いないとなれば後悔することになるでしょう。

 

   問4 /24点 *この設問も答え方に悩みますね。(c)の解答が「〜後悔する」で終わらなければ不自然である以上、(a)も(b)も「〜します」で終えてもよさそうです。ただし、あなたの解答のように終えても不自然ではないので、正解にしました。

 

  問5 /8点 *正解は間違いなくあなたの書き抜こうとした部分です。ですが、もっと書き抜く必要がありました。傍線部④は「直観と熟慮を組み合わせる」という動詞表現で終わっています。だから、正答にように「〜うまくいかす」という動詞表現まで答えなければなりませんでした。

 

  年未詳 岡山赤十字看護専門学校・一般

 

第1問 外山滋比古「国語は好きですか」(70点満点)

問1 漢字問題(2点×5)

⒜理屈  ⒝影響  ⒞明快  ⒟衝突  ⒠危険  

 

問2 内容説明問題

 「例示」(5点×4・部分点なし)

⒜父親が、わが子に、自分のことを、お父さんという。

⒝母親が、わが子に、自分のことを、お母さんという。

⒞年配の男女が、子ども一般に、自分のことを、おじさん・おばさんという。

⒟学校の先生が、児童・生徒に、自分のことを、先生という。

 

 「日本語の特色」(6点×3)

⒜第一人称に対応する、②」第二人称の表現の仕方が一定していない。④」

⒝第一人称と同じように、①」第二人称を表現しないことで、②」やわらかい言い方を実現している。③」

⒞第二人称に対して直接指し示す言葉がなく、②」敬遠の心理によって②」間接的に表現する。②」

 

問3 内容説明問題(4点)

私とあなた(部分点なし)  

 

 (別解)

私とあなたのように表現が一律で、②」第一人称と第二人称の人そのものを直接指し示す。②」 

 

問4 修辞法・内容説明問題

 「修辞法」=直喩(法) (4点)

 

 「内容説明」(10点)

日本語では、第一人称の自称がはっきりせず、②」第二人称の表現も一律ではないうえに、②」間接的にしか表現されないために、②」ワレとナンジという自他関係が際立つことはなく、②」両者の存在をやわらかく意識させ合う存在。②」 

 

問5 内容理解選択問題 (4点)

 

第2問 高田敏子「橋」 (30点満点)

 

問1 内容説明問題(10点)

「私もいくつかの橋を渡ってきました」という表現から、③」「私」は「少女」「あなた」よりも年上で、③」人生の先輩として「少女」「あなた」に語りかける関係。④」

 

問2 理由説明問題(12点)

「急いでかけて渡りました」は、語り手である「私」が、目標に向かって無我夢中で③」青春時代を駆け抜けてきたことを意味しており、③」「急いで渡るのでしょうか」は、「私」と同じように、③」「あなた」も目標に向けて邁進してほしいと期待していることを意味している。③」

 

問3 理由説明問題(8点)

「橋」とは、目標へと至る②」人生の分岐点や③」試練を象徴している。③」

 

 

*解説

第1問 10/70点  

問1 /10点 

 

問2 /38点  

「例示」 /20点

①条件を無視した解答は、何を書こうが0点です。「だれが、だれに、なにを、どういうか」という形を遵守してください。「条件無視」=「不合格」です。これは小論文にも共通することです。設問をよく見ましょう。

②説明型の設問なわけですから、文末は「〜という。」のように、句点を書くのが大原則です。

③設問には「本文で例示されているものをすべて」と書いているわけですから、解答が1つのはずはありません。解答欄がどのような状態か分かりませんが、「お父さん」「お母さん」「おじさん」「おばさん」「学校の先生」のすべてを説明しなければならなかったはずです。   

「日本語の特色」

①8行目末から9行目に「日本語の特色」と書いてあります。よって、これ以降に解答要素があると判断できます。

②20行目に「もうひとつ」とあるので、さらに解答要素が続くと考えましょう。結局、8〜25行目までをまとめることで解答ができあがります。

③傍線部②を含んだ一文に書いてあるように、日本語の特徴は英語とは対比関係にあります。「ワレとナンジ」が明確に区分できない、という特徴を踏まえ、それに該当する表現を拾い上げていけば、解答ができあがります。 

 

問3 /4点

①この設問は「英語」の「ワレとナンジの関係」を尋ねているのです。あなたの解答は「あなたとお前」なので、「ワレ」の説明がなく、「ナンジ」の説明しかしていません。ちなみに、「お前」という表現は日本語の「ワレとナンジの関係」を表す言葉なので、いずれにせよ間違いです。

②別解は、解答欄が大きかった場合のものです。 

 

問4 /18点  

「修辞法」 /4点

*「比喩法」という答え方ですが、高校入試までならこの答えでも正解にされるでしょうが、大学入試等になれば不正解です。比喩法は細かく分類すると、「〜のような」を使用する「直喩(法)」、「〜のような」を使用しない「隠喩(法)」、人でないもを人に喩える「擬人法」に分けられます。よって正解は、「直喩(法)」となります。   

 

「内容説明」 /10点

①この設問は、「日本語のワレとナンジ」は、「お互い」に「芝居の黒子のような存在」である、という表現を言い換えろ、という問題でした。課題文にも書いてあるのですが、「黒子」とは姿を見せずに役割を果たす、いわゆる裏方のことです。この一般的な意味を踏まえて、本文中に同じような意味がないか探すのです。

②あなたの解答は、傍線部③の2行前を書き抜いたものですね。その主語をよく見てください。「ワレとナンジのナンジよりずっと遠くはなれた存在」の主語は、「日本語の第二人称」です。

 いいですか、課題文に書いてある、以下の主語・述語関係性をよく見てください。

A「日本語の第二人称」(主語) =B「ワレとナンジのナンジよりずっと遠くはなれた存在」(述語)  

C「日本語とワレとナンジ」(主語)=D「芝居の黒子のような存在」(述語)

あなたはB=Dと考えたのですが、そもそもAとCは同じものではないですよね。 A=Cであれば、B=Dは証明できますが、そうではない(A=Cではない)わけですから、絶対にB=Dにはなりません。