周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

 二〇一二年 東大・前期解答

 

 第1問 『意識は実在しない』(40点)

問1 内容説明問題(6点)

 (実在する)微粒子と法則からなる、①」無意味で無情な物理的自然(客観的世界)と、②」それを心(身体器官)が感受して意味づけ秩序づけた主観的表象(知覚世界)とを②」弁別する理論のこと。①」(64字)

 

問2 理由説明問題(6点)

 二元論(近代の自然観)では、②」自然は色も味も臭いもない微粒子の集合にすぎず(自然は無意味・無価値で)、①」自然への賛美(自然の意味や価値)は①」人間の精神が生み出して自然に与えたものと考えるから。②」(63字)

 

問3 理由説明問題(6点)

 近代科学は、①」自然を法則のままに動く無個性の微粒子の集合と考え、①」これを分解して①」人間の生活の場で役に立つ①」材料として①」利用しているから。①」(64字)

 

問4 内容説明問題(6点)

 個人の特殊性を排除した標準的人間像を基礎に②」政治理論を形成したので、②」標準から外れた少数派は①」軽視され排除されている。①」(63字)

 

問5 内容・全体説明問題(11点)

 自然を分解し、個性のない粒子に還元して利用・搾取してきた③」近代の①」二元論的自然観は、①」自然の中で無機物が全体として循環的相互作用を営み①」長い時間をかけて形成してきた、①」生物の個性的な生活環境を破壊するという悲劇をもたらした、ということ。④」(120字)

 

問6 漢字問題(1点×5)

 ⒜ 枯渇  ⒝ 効率  ⒞ 秩序  ⒟ 浸透  ⒠ 交換

 

 

 

 第2問 『俊頼髄脳』

 

問1 現代語訳問題(*文理共通 3点×3)

 ア 往来(通行・行き来)に②」面倒な(支障がある)ので①」

 イ 普通の人が①」できないことをするのを①」神通力としています(言っ

   ています)①」

 ウ できるかぎり③」(仕事の負担に②」応じて①」)

 

問2 内容説明問題(*文理共通 5点)

 一言主の容貌は醜いので、②」見る人が恐れ怖がる、ということ。③」(28字)

 

問3 理由説明問題(*文系のみ 5点)

 明るい昼間に①」自分の醜い姿を②」人に見られたくなかったから。②」(32字)

 

問4 内容説明問題(*文系のみ 5点)

 一言主の神が、①」全身に(隙間なく)葛を巻きつけられて、②」今に至っているという状況。②」(33字)

 

問5 内容説明問題(*文理共通 6点)

 醜い顔を見られたくなかったので、③」夜が明ける前に帰ってほしいということ。③」

 

 

 第3問 『春秋左氏伝』

 

問1 内容説明問題(*文系6点/理系5点)

 調味料の量を加減して、③/②」お吸い物の味を①」調えるということ。②」(30字)

 

問2 内容説明問題

 (ア)現代語訳問題(*文系7点/理系6点)

 君主がよいということで②/①」よくないこと(誤り)があれば、②」臣下はそのよくない点を進言して①」良いものにする。②」(45字)

 

 (イ)書き抜き問題(*文系5点/理系4点)

 政平而不干、②」民無争心③/②」

 

問3 現代語訳問題(*文系のみ 5点)

 水に水を加えて①」味を調えるようなものだ。②」誰もそんなものは食べられません。②」(33字)

 

問4 内容説明問題(*文系7点/理系5点)

 景公に同調するだけで、③/②」そのよくない点を正そうとしない態度。④/③」(29字)

 

 

  二〇一二年 京大文系前期

 

第1問

 問1 理由説明問題(10点)

死に至る病に侵された緒方にとって、③」来年の夏休みに自分と二人で海に行くという空想を幸せそうに語る娘の姿は、①」自分に対する期待を感じさせ、②」死に身を委ねることもできない精神的負担を感じたから。④」(92字)

 

 問2 内容説明問題(10点)

生命力に満ちた健康な家族には③」見せることのない、①」死に至る病に侵された人間なら誰でも理解できるような、③」自分の生死の意義やそれにともなって湧き出る種々雑多な疑問について答えを出そうとする精神世界③」。(95字)

 

 問3 内容説明問題(10点)

健康であったときには、①」人間の生死の意味について知識のままに理解したつもりになっていたが、③」自分が病気になり、余命も長くないという事実に直面したときに、①」初めて自分の理解が浅かったことに気づかされ、①」これまで見過ごしてきた①」日常のあらゆることを、①」新鮮でかけがえのないものとして、改めて味わっている事態。②」(146字)

 

 問4 理由説明問題(10点)

死を自覚したことをきっかけに、②」家族との付き合いを何気ない顔でそつなくこなしながら、家族とは無関係に、②」自分の生死について考え続けている孤立した状況は、②」現実から離れて一人でものを考え続けている点で出家遁世に近く、②」自宅でもできると自分が書いた返信の文面に、自身の状況が該当するように思われたから。②」(145字)

 

 問5 内容説明問題(10点)

死が近づいた状況にあっても、①」諦観や無常観にとらわれることなく、①」やがて訪れる死に対して平静を保ったまま向き合い、 ②」芸術家として作品の創造に野心を燃やし、②」父として家族の期待にこたえようとしながら、②」堂々と振る舞おうとする緒方の強い自負心。②」(115字)

 

 

 

第2問

 問1 内容説明問題(10点)

文章表現にこだわることなく、③」小説全体の効果から考えて、②」必要な事柄のみを選定しようとする、③」作品に込められた作者の意欲。②」(58字)

 

 問2 内容説明問題(8点)

小説の核心部分を明快適切に表現するためには、②」個々の文章は小説全体に与える効果を考えて表現する必要があるから、②」間接的な効果を狙った表現を用いて、①」文章を故意に難解にすることもある、ということ。③」(94字)

 

 問3 内容説明問題(8点)

日常で使用される言葉は、②」伝えたい現実をそのまま他者に提示することができない場合に、③」その現実を再現する道具として、②」他者に説明し伝えるために用いられるものに過ぎない、ということ。①」(87字)

 

 問4 内容説明問題(12点)

現実は各人の感覚や理性によって認識される②」相対的なものであるため、それぞれで異なるものであるが、②」芸術家は現実よりも完全で真に迫り納得できるような、自分にしか認識でない現実像を選び取り、②」それを芸術上のあらゆる手法を駆使して、②」他者が真実味をもって納得できるように②」再現できる人であると考えている。②」(144字)

 

 問5 内容説明問題(12点)

小説は一般の文章のように、現実をありのままに再現するような②」現実に従属したものではなく、②」作者の感性や理性によって選び取られた現実像を、②」芸術上の手法を用い自らの言葉で新たに生み出した創作であり、②」描き出された現実像は作品以前に実在するのではなく、②」小説に描かれて初めて実在するようになる、ということ。②」(146字)

 

 

第3問

 問1 現代語訳

 (1)女房たちが夜が更けるまで①」語り合って①」、ふと①」眠くなってしまうのは①」どうしようもないこと②」(6点)

 

 (2)女房たちが密かに気を許して言った言葉を②」聞きつけて、①」忠家が①」得意顔で言った③」その場の戯れである②」(8点)

 

 問2 内容説明問題(10点)

  周防内侍が①」忠家の座興を①」恋の場面に置き換えて詠み返した機知と、③」その歌の風情ある様子に、②」周りで聞いていた女房たちも、②」きっと目を覚ましたはずだ、ということ。①」

 

 問3 内容説明問題(26点)

 ・『初学』では、周防内侍の歌について、忠家が肘を差し入れた戯れに対して、③」「かひな」を「甲斐無く」にかけて歌に読み込んだことを評価しているが、④」忠家の取るに足りない戯れを②」即座に恋の歌に仕立てた点が評価されるべきである。④」

 ・『千載集』の詞書によると、②」忠家は単に「これを枕に」と言って肘を差し出したに過ぎず、③」「此のかひなを」としているのは選者の表現である点を見落とし、④」忠家が「かひなを」と言ったと解釈している『初学』は誤っている。④」

 

 

 

  二〇一二年 京大理系前期

 

 第2問(30点)

  問1 理由説明問題(10点)

 日本側の学者の発言は、日本の歴史的文脈に関する理解を前提としたものであったが、③」短い時間で異文化の人々に発言の真意を伝えなければならない②」同時通訳の場で、①」与えられた時間内に②」その発言の背景にある文脈を理解させることは不可能に近いと思われたから。②」(119字)

 

 

  問2 内容説明問題(10点)

 限られた時間の中で②」異文化にいる人を①」仲介し、意思疎通を成立させることが求められる同時通訳の場では、①」発言内容をすみずみまで伝達するのではなく、①」通訳者が理解しえた内容をもとに、②」発言の趣旨が伝わるように①」余分な言葉を省略し、簡潔な訳を心がけること。②」(119字)

 

 

  問3 理由説明問題(10点)

 もともと話し方が遅く短時間に言葉を多く詰め込むことができない筆者とって、③」時間的制約の中で①」異文化の文脈を補いながら訳すという同時通訳は困難なものに感じられたが、①」余分な言葉を極力排除し、重要な情報のみを伝える省略という手法をとればよいという助言が、③」通訳の極意に目を開かせてくれたから。②」(140字)

 

 

  二〇一二年 神戸大・前期

 

第1問 『語り得ぬものを語る』(80点)

 問1 漢字問題(2点×5=10点)

  ⒜済 ⒝排除 ⒞介助 ⒟供給 ⒠欠如

 

 問2 内容説明問題(14点)

概念とは、それが適用される集合を規定して内実を捉える客観的な認識ではなく、何をその概念の典型例として把握するかを本質とする相対的な認識である、というもの、

 

 問3 内容説明問題(14点)

プロトタイプを重視した概念は、外延の規定が同じでも何を典型とするかに多様な事実や判断が関与して、人や時代により異なる抽象的な通念としての認識になる、ということ。

 

 問4 内容説明問題(14点)

ある対象の相貌は、客観的な認識ではなく、主体的関心に基づき言語によって構成された典型的な物語を内在させた認識で、その内実は言語を通した物語である、ということ。

 

 問5 内容・全体説明問題(28点)

人は、主体的な関心に基づくプロトタイプとしての概念のもと、言語によって構成される典型的な物語の一場面として知覚を得るのが、現実は典型的な物語とは異なり、際限なく豊かな細部を持ち、典型から逸脱するので、結局は現実の実在性に突き当たり、新たな物語が創出されることになる、ということ。

 

 

第2問 『松陰日記』(40点)

 問1 現代語訳問題

  ② 至急いお出でくださいと、②」鶴姫君のもとから(吉保様宛ての)お手紙を①」頂戴した①」(4点)

  ③ まして吉保様は気が急いておられるから、②」いつもよりいっそう道のりが遠い気がして、②」(4点)

  ④ 鶴姫君のご臨終の様子は①」明白で、①」(2点)

 

 問2 文法問題(1点×2)

  ①謙譲/鶴姫君   ⑤尊敬/御所(徳川綱吉

 

 問3 内容説明問題

  ⑥ 美しく、長寿を願われた鶴姫君が①」朝露が消えるように、①」あっけなく亡くなってしまったこと。②」(4点)

  ⑦ 吉保が、①」幼少の頃から仕え、あれこれお世話申し上げた日々を思い、②」鶴姫君の死に胸が塞がる気持ちで悲しみにくれていること。②」(5点)

 

 問4

  1 現代語訳問題

御所様には、①」少しでもほととぎすの声をお耳に入れようか、②」いや入れられない。①」(4点)

 

  2 理由説明問題

鶴姫君を失った御所様の落胆した気持ちは計り知れず、②」死を知らせるほととぎすの声を聞くと、②」その悲しみがますます募るであろうから。②」(6点)

 

 問6 内容説明問題(3点×3)

〔第二段落〕

鶴姫君の容態が悪化したと聞き、①」駆けつけたが間に合わなかった。②」

〔第三段落〕

手を尽くしたが叶わず、①」将軍のもとに参上して、①」姫の死を報告した。①」

〔第四段落〕

明け方将軍のもとから退出し、①」生前の姫君を思い悲嘆にくれて歌を詠んだ。②」

 

第3問 白居易「与微之書」(30点)

 問1

  1 書き下し問題(3点)

おのおの①」はくしゅなら①」んとほっす①」

 

  2 現代語訳問題(3点)

お互いに①」白髪頭になろ①」うとしている①」

 

 問2 現代語訳問題(6点)

天が実際に①」私たちを離れ離れにしたのならば、②」この状況をどうせよと言うのだろうか、②」いやどうすることもできない。①」

 

 問3 空欄補充問題(1点)

  ロ

 

 問4 書き抜き問題(2点×2)

  1 垂死病中     2 謫九江

 

 問5 心情説明問題(13点)

瀕死の病床にある元稹が、③」自分が九江に左遷されたことを聞いて心を痛めてくれた心情を思うと、③」遠く離れていても②」大切な友の深く温かい友情に②」胸を熱くせずにいられない心情。③」(80字)