二〇〇九年 神戸大・前期解答
第1問 『詩と権力のあいだ』(80点)
問1 漢字問題(2点×5)
⒜ 配置 ⒝ 収拾 ⒞ 疲弊 ⒟ 逸脱 ⒠ 絡
問2 内容説明問題(20点)
デモクラシーの権力を保証する合意は③」匿名の得票数によって決まり、③」無数の力関係のなかで②」変動するものなので、③」合意において誰が何を意志しているのかという③」内実を確かめることは、③」もともと困難である、ということ。③」(99字)
問3 内容説明問題(14点)
権力は顕在的に知覚されることなく、③」行使されることのない②」潜在的な②」抑止力として②」精神に作用しているときが③」最もよく機能している状態だ、ということ。②」(69字)
問4 内容説明問題(8点)
生命と自由は、社会的・歴史的権力によって④」決定され変化するものである、ということ。④」(40字)
問5 内容・全体説明問題(28点)
(正解1)
デモクラシーの権力は、中心部分に暗く不透明な力をかかえ、行使されないときに最もよく機能する。生命と自由もまた、実は有限で不自由なものである。このように両者はともに逆説的な性質をもち、その根拠が論証できない。権力は生命と自由を否定し攻撃するので、生命と自由の側に決して譲れない強度の感覚を保っていないかぎり、権力についての思考自体成立しえないという関係にある。
(正解2)
生命と自由も権力も、ともに論証の外にあるため顕在化しないが、前者は、後者によって存在することは確かである。そのため権力が否定する生命と自由は、権力によって否定され攻撃される相反する対象にもなりうるので、生の力と自由を守るために、我々はこの事実に留意しなくてはならないのであるが、そのために、生命と自由は、権力を保証している別の権力と対抗しているのである。(177字)
(正解3)
権力と生命・自由は、前者が後者に、後者が前者に影響を及ぼす関係にあるため、④」両者を支える根拠がともに論証できず、④」形成過程がはっきりしないという特徴をもつ。④」生命と自由の形態は、社会や歴史における権力との関係性によって決定し、④」変化するのだが、③」その権力も様々な生命や自由の意志と絡み合うことによって形成されるという、④」相互に対立しながら規定し合う関係にある、ということ。⑤」(180字)
第2問 『源氏物語』(40点)
問1 語彙問題(1点×2)
⒜どうにかして・何とかして
⒝どうして(〜か、いや〜ではない)
問2 内容説明問題(4点) *1行・30字程度
玉鬘は結婚には差し障りのある体である、ということ。
問3 内容説明問題(6点) *2行・50字程度
国内の仏神でさえ自分に従うほど、②」何でも自分の思い通りになるので、②」玉鬘の障害も治してみせる、という自信。②」(51字)
問4
1 内容説明問題(6点) *2行・50字程度
玉鬘を上京させて②」両親と巡り会わせることができないまま、②」大夫監のような田舎豪族と結婚するような事態。②」(49字)
2 内容説明問題(4点) *1行・30字程度
玉鬘を上京させ、②」都の貴族と結婚させたいという願い。②」(25字)
3 内容説明問題(8点)
玉鬘は普通の体ではないのに、①」大夫監と結婚できなかったら、②」神を薄情だと思うだろうということを言いたかったが、①」もうろくしているためうまく言えなかった、②」と無理な解釈をした。②」(83字)
問5 指示語説明問題(6点) *2行・60字程度
乱暴で品のない大夫監には、②」母でも対応できないのに、①」まして自分たちには何も思い浮かばず、①」返歌などできようもない、ということ。②」(61字)
問6 現代語訳問題(2点×2)
⑤見下しなさるな(侮りなさいますな・ばかになさってはなりま
せん)
⑥詠むことができなかっ①」たのだろうか①」
第3問 『為学一首示子侄』(30点)
問1 書き下し問題(4点)
①これをなさ(せ)ば、すなはちかたきもの(こと)もまたやすし(やすからん)(3点)
②いかん(1点)
問2 心情説明問題(10点)
③では、どのような手段で南海に行くのか、②」単純に尋ねているだけだが、②」⑤では、船を持っている自分でさえ南海に行くことができないでいるのに、②」貧乏な僧が軽装で出発しようとしているのを知って、②」絶対に不可能であるとばかにしている、という違い。②」
問3 理由説明問題(8点)
大げさに準備を整えることよりも(たとえ軽装であっても)、②」信仰心と強い意志をもって実行することが、③」南海への旅を成し遂げるために最も大切だと考えていたから。③」
問4 全体論旨説明問題(8点)
この世に難易の区別はなく、②」困難なことでも強い意志をもって実行すれば容易にできるように、②」学問を大成しようと思うなら、②」まず強い意志をもって取り組むことが最も大切である、ということ。②」(88字)
二〇〇九年 京大文系前期
第1問
問1 漢字問題(2点×5)
ア 枠 イ 概 ウ 範 エ 朗朗(朗々) オ 緊迫
問2 内容説明問題(8点)
若いころに下請けでやった百科事典の執筆では、②」厳しい字数制限のなかで、①」意味のある分かりやすい文章表現にすることを強いられたため、②」必ず書かなければならないことを決め、①」それを簡潔で明快に書くという訓練を積み、表現を磨くことができた、ということ。②」(119字)
問3 内容説明問題(8点)
すんなりと気持ちよく読め、①」読み聞かせるだけで人に分かってもらえるような文章には、①」リズムが備わっているのだが、①」詩にもなっていない文章を、①」定型の韻律に当てはめて書いたとしても、①」音読に耐えられない、①」分かりにくくふざけた文章になる、ということ。②」(118字)
問4 理由説明問題(10点)
名文の誉れ高い『平家物語』には、①」原文が持っている朗々とした響きやリズム、②」そしてそれらよって文が力強く読者に迫ってくるような緊迫感があるのに、②」そうしたものを消し去って、①」意味内容を伝えるだけの分かりやすい現代語訳にしてしまうと、②」原文の持つ言葉の生命感が読者には伝わらなくなってしまうから。②」(142字)
問5 理由説明問題(14点)
「文学的表現」を無駄な虚飾やひねった表現として否定的に評価するのは、②」簡潔で的確な文章ばかりを高く評価しているからである。②」また言葉は意味内容を伝達する役割をもつだけでなく、②」その響きやリズム、それらによって生み出される生き生きとした感覚を伝えるものでもあり、②」こうした言葉のもつあらゆる能力を発揮させることが、②」文学の最も重要な仕事であることを知らないだけでなく、②」表現する努力を怠ってきたことも告白したことになるから。②」(205字)
第2問
問1 内容説明問題(10点)
世界全体は様々な感情をもつ存在であり、②」その世界に連なる微細な人間の感情は、②」世界の感情に即して変化するので、②」我々が自分の心の中にしまいこまれていると思い込んでいる感情も、②」内面的なものではなく、①」世界の感情を反映したものである、ということ。①」(117字)
問2 内容説明問題(10点)
筆者が診断した癌患者の治療を託すのに最も信頼がおけ、②」かつ自身も癌に侵され闘病を続けていた年下の内科医が②」亡くなったことで動揺している筆者の様子に、②」患者も気づいたのか、②」普段よりも症状を訴えることが少なく、診療が順調に進んでいったという状況。②」(118字)
問3 内容説明問題(12点)
未来とはそれ自体として実在しないもので、②」現在に生きる人間の思念に過ぎないものだから、②」進行癌に侵された同僚の内科医の未来も、彼を見舞う筆者自身の未来も、②」確実なことは何も言えないというのが真理であり、②」いつどのような死を迎えるかについては何も分からないという点では、②」二人とも同じだ、ということ。②」(144字)
問4 心情説明問題
A(8点)
通夜の日に動揺していた気持ちは治まり、②」葬儀の日には冷静になっていたが、②」同僚の内科医を亡くした喪失感や悲しみが、②」落ち着きを取り戻したがゆえに、①」よりはっきりと感じられるという心情。①」(88字)
B(10点)
悲しみに震えながら読み上げた弔文を清書したことを契機に、②」癌治療の第一線で働きづづけ、①」自身の癌と戦い続けた同僚の人生に思いを馳せたことで、①」彼の死を受け入れることができるようになり、②」穏やかな落ち着いた気持ちで、②」同僚の冥福を祈ろうとしている心情。②」(120字)
第3問
問1 内容説明問題(10点)
たとえ幸運にも高貴な人と結婚できたとしても、③」それは俗世のはかない仮の姿であり、②」男女の仲もあてにならないので、②」何につけても安心して過ごすことができるとも思えない、ということ。③」(86字)
問2 現代語訳(8点)
父上が①」お考えなった①」ようなことを、①」どうして①」娘の①」私が①」背き①」申し上げましょうか、いや背きません。①」
問3 現代語訳(8点)
つい最近①」髪を洗ったばかり①」なのに。②」また洗いたいとは②」おかしいですよ。②」
問4 内容説明問題(12点)
西行の娘は急用のため②」乳母のところへ行くと言って出かけたまま、②」長い間帰ってこないので、②」冷泉殿は気がかりに思って事情を乳母に尋ねたところ、②」乳母はあれこれとごまかしていたが、②」何日か経つうちに、①」娘が出家したことがはっきりと分かってしまった。①」(116字)
問5 心情説明問題(12点)
幼い頃から我が子のように大切に育て、②」互いに信頼しあってきた西行の娘が、②」武士の血筋の気丈さから②」自分に何も告げず出家したことを恨んではいるが、②」別れ際に心細く思って、①」もう一度自分の顔を見つめに戻ってきたことを、①」少しばかりいじらしいと思う気持ち。②」(119字)