周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

 二〇〇四年 神戸大・前期解答

 

 第1問 『時間の身振り学』(80点)

問1 漢字問題(2点×5)

 ⒜ 固執  ⒝ 凝縮  ⒞ 朽  ⒟ 動揺  ⒠ 随意

 

問2 内容説明問題(8点)

 移ろいゆく①」日常の時間の中に、②」超日常的な①」永遠の時間を②」想起させること。②」(33字)

 

問3 理由説明問題(15点)

 (高度な市場社会で)商品化された知識は、③」市場で売買される日常的にものになり、③」非日常へ超越するという③」象徴的な性格を失って、③」知識としての質が均一化するから。③」(74字)

 

問4 内容説明問題(17点)

 人々の無意識に刺激を与え、③」神話的な記憶を思い起こさせる③」哲学者Fの思想は、②」商品の象徴体系に組み込まれて③」消え去り、②」その名前だけが商品として流通する(価値をもつ)ようになった、ということ。④」(84字)

 

問5 全体論旨説明問題(30点)

 高度な市場社会では、②」超日常的世界への超越を企てる哲学者Fの思考は、③」商品の象徴体系に組み込まれて③」その超越性を奪われたため、③」Fはその仮面を脱いで③」匿名という仮面をかぶった。③」そして、民衆的知恵という③」知の起源を再び想起させる仕掛けである③」匿名になれば、②」知識を商品化する②」市場社会のロジックを超越できると考えたから。③」(150字)

 

 

第2問 『なぐさみ草』(40点)

 

問1 敬語識別問題(1点)

 謙譲語・連用形

 

問2 文学史問題(1点)

 (お)

 

問3 内容説明問題(8点)

 先人たちが亡くなって、②」連歌の道も邪道に走り、②」勝負事として騒がしく、②」風流な人々の集まりではなくなったこと。②」(52字)

 

問4 現代語訳問題

 ⒜言葉は耳にとまることはなく(新奇に聞こえず)(2点)

 

 ⒝言葉に表れていないところに、②」歌の意図(気持ち)が①」きっと見えるにちがいない①ことよ。①」(5点)

 

 ⒞広く世間の人の耳に入る①」はずもないことを①」頼りにして②」(4点)

 

問5

 ⑴内容説明問題(4点)

  源氏物語の講釈。

 

 ⑵内容説明問題(15点)

  滞在していた家の主人から、①」『源氏物語』をよく学んでいると聞いたの

  で、②」(暇があれば)講義してほしいと頼まれた。②」筆者も歌の精神を

  学ぶうえで『源氏物語』が重要だと考えていたが、③」師についても学び

  きれず、②」出家後には熱心に読むこともなかったため断ったが、②」周

  囲の人の勧めもあり、①」所在なさに任せて①」互いの暇なときに読み始

  めた。①」(152字)

 

 

第3問 『自娯集』(30点)

 

問1 現代語訳問題(3点×2)

 ⒜自分の勇敢さをあてにして人と争うなら、①」戦いに敗れて死んでしまうものは少なくない。②」

 

 ⒝慢心した(尊大な)様子は①」表情(顔)に現れず②」

 

問2 内容説明問題(10点)

 自分の能力をあてにして何でも一人でやると①」自己満足に陥って、②」誰も忠告しなくなり、②」また自分の過ちを聞かなくなるので、②」視野が狭くなって①」避難やへつらいが多くなること。②」(79字)

 

問3 語彙問題(1点)

 (ウ)

 

問4 書き下し問題(5点)

 おのれををさめひとををさめ②」んとほっす①」といへども①」うべけんや。①」

 

問5 内容説明問題(8点)

 自身の才知をあてにせず、②」他人の善言善行を学ぶ②」古代の聖賢の態度が、①」長く規範とされるべきだ、ということ。③」(50字)

 

 

 二〇〇五年 神戸大・前期解答

 

 第1問 『記憶のエチカ』(80点)

問1 漢字問題(2点×5)

 ⒜ 殉教  ⒝ 真(っ)向  ⒞ 河畔  ⒟ 聴取  ⒠ 使命

 

問2 内容説明問題(7点)

 徹底した証拠の隠滅作業により、③」出来事自体が消去されたという意味。④」(32字)

 

問3 理由説明問題(12点)

 ホロコーストを経験したことで、③」その出来事を理解することも③」証言することもできない③」精神的死者になっていたから。③」(53字)

 

問4 理由説明問題(23点)

 一定の筋や起承転結をもち、③」一つの整合的全体として秩序づけられる物語では、④」証言の不可能性のために④」出来事の内部の真理を語ることができないが、④」断片的な証拠の結集によってこそ、④」出来事の本質を示唆することができると考えているから。④」(110字)

 

問5 内容・全体説明問題(28点)

 一定の筋をもって②」理論的に語られる②」物語としての歴史は、②」それに還元されず、②」語りえぬものとして②」忘れ去られた②」出来事としての歴史にも②」焦点を当てて提示することで、③」自明とされている③」「われわれの現在」を徹底的に疑い、③」それを相対化するように③」歴史を理解する、ということ。②(125字)

 

 

第2問 『文机談』(40点)

 

問1 内容説明問題(6点)

 黄菊という琵琶の音色のすばらしさを①」語り合っていた①」音楽家たちが、①」他の古い名器の音色はどうだろうかと②」話題にしていたこと。①」

 

問2 理由問題(6点)

 音楽に堪能だった藤原忠実が①」代々の宝物として秘蔵してきたと、②」忠実の孫の師長から聞いて①」、最高級素材の紫檀が使われていると判断したから。②」

 

問3 文法問題(1点×2)

 「せ」─使役  「たてまつり」─謙譲語

 

問4 現代語訳問題

 ⒜(その場に伺候していた)臣下たちは、①」本当に定輔の言うことが正しい説明であると、②」それぞれに思い申し上げたような様子である。②」(5点)

 

 ⒝どうして、①」父孝道の直伝の教えを聞きもせず、②」畏れ多くも①」帝の御前でこれほどの重大事を①」申し上げることができましょうか、いやできません。①」(6点)

 

 ⒞琵琶の音色の優劣ばかりを決めようとして、①」木の材質は「孝時が申し上げよ」などと②」突き放してお任せになっていたなら、①」どれほどか立派だったことでしょうに。②」(6点)

 

問5 理由説明問題(9点)

 定輔の言う通り、①」井手や井橋の素材が紫檀ならば、①」父孝道は素材の名前も知らない未熟者で、①」名器玄上の価値も下がるだろうと、①」皮肉交じりに①」不遜な態度の①」定輔を①」孝道が言い負かしたことが①」面白かったから。①」(93字)

 

 

第3問 『随園食単』(30点)

 

問1 現代語訳問題(5点)

 豆腐でも味がうまければ、②」燕の巣よりも①」はるかに①勝っており①」

 

問2 理由説明問題(5点)

 なまこや燕の巣はそれら本来の味をもっておらず、②」他の食材の味に依存しているから。③」

 

問3 書き下し問題(5点)

 それ①」きつし(すること)①」えざるを①」いかんせん。②」

 

問4 内容説明問題

 ①耳餐とは、食材の味ではなく、②」高級食材で客をもてなしたと自慢するように、②」食材の名声をありがたがること。③」(7点)

 

 ②高級食材の名声にばかりこだわるなら、②」お椀の中にたくさんの真珠を入れて楽しめばよく、③」それでは食材本来の味を楽しむことができなくなるから。③」(8点)

 

 

  二〇〇八年 京大文系前期

 

第1問

 問1 漢字問題(2点×5)

  ア 端的  イ 俳優  ウ はんさ  エ 枚挙  オ ほてん

 

 問2 理由説明問題(8点)

日常的なしぐさや行動はほぼ無意識に繰り返されるため、①」そもそも自己観察が不十分であり、①」自身の身体部位の位置や動きを①」客観的に把握することができていないだけでなく、②」他人が見ているという普段とは異なる状況では、①」自分の視線を置く場所も普段とは違ってしまうため、①」本来とは異なる行動をしてしまうから。①」(143字)

 

 問3 内容説明問題(10点)

ほぼ無意識に繰り返される日常的な行動やしぐさは、①」生まれながらに身についていたものではなく、①」周囲の他者からの助けを得て初めて自力でできるようになったのであり、②」その時には周囲の喜びを通じた大きな感動もあったはずだが、②」そうした経験の記憶を意識的に思い出すことはなくても、②」無数の日常的な動作と感動の記憶は無意識のうちに身体のなかに蓄積されている、ということ。②」(176字)

 

 問4 内容説明問題(10点)

身体に内在している無数の無意識的な動作や感覚を再確認し、①」それらに関わる感動を思い起こすことで、①」日常的に何気なく繰り返される動作が、①」他者の助けを得て身につけられたものであることに思い至り、①」自分がそうした経験を伴って生き続けている存在だと実感することで、①」自己を尊くかけがえのない存在と考えるようになるとともに、②」他者の身体も同様であることに気づいて、①」他者に対する思いやりや配慮の気持ちも持てるようになる、ということ。②」(205字)

 

 

 問5 内容説明問題(12点)

人間は、自己の身体と、①」その身体を束縛している地域や時代、言語や習慣を含んだ生活環境の制約も受けているが、①」教養の一つである演劇的知は、①」日常的にほとんど意識されることのない①」こうした束縛の存在に気づかせ、①」自己を取り巻く他者や社会との関係を相対化させることで①」自己を解放するとともに、①」自己との対話を通して、①」現代の日本人に欠けている①」自己の実在感や尊厳を思い起こさせることで、①」同様の存在である他者の尊厳をも生み出してくれる。②」(205字)

 

 

第2問

 問1 理由説明問題(10点)

文字の霊の存在に関する記述を書物に見出せなかった老博士は、①」その存在を自力で明らかにすることを決意したのだが、①」一つの文字を凝視しているうちに、①」文字自体は単なる線の集合に過ぎないと考えるようになり、①」それが一定の音と意味をもつためには、②」霊のような①」超越的存在による①」全体的な統制が必要不可欠であると考えたから。②」(150字)

 

 問2 理由説明問題(10点)

文字に音や意味をもたせる「文字の霊」は、②」地上に存在するさまざまな事物に対応して存在するだけでなく、②」新たに生起する事物に比例するように、①」既存の文字の形を変化させたり、①」組み合わせたりしながら①」際限なく増殖し続ける。①」こうした性質は、強力な繁殖力をもつ野鼠が増殖する様子に①」匹敵すると思われたから。①」(143字)

 

 問3 内容説明問題(10点)

事物を仮象した文字を覚えたことで、②」現実の事象と直接向き合うことがなくなり、②」文字を通して物事を理解するようになった人間は、②」蛆虫によって胡桃の中身が食い尽くされたかのように、①」言葉によって人間の脳が侵食されて、①」それまでに保持していた現実の事象を直接視覚的に捉える能力を失ってしまった、ということ。②」(145字)

 

 問4 内容説明問題(10点)

文字は現実に存在する事物を指し示すことで、①」人間に知識をもたらすものではあるが、①」それは事象そのものと完全に一致するものではなく、②」その一部を抽象的に概念化した②」表象に過ぎないものであるから、②」直接的な経験から人々を遠ざけてしまう、ということ。②」(117字)

 

 問5 内容説明問題(10点)

文字のなかった時代には、人々は自身の感覚によって直接事象を認識していたが②」、現実の事象の一部を表象した文字を使うようになると、②」文字を通してでしか現実と関わることができなくなり、②」生き生きとした感情や知恵を失っただけでなく、②」文字による記録に頼らなければ、何一つ覚えられないほど記憶力も退化した、ということ。②」(150字)

 

 

第3問

 問1 現代語訳

  1(10点)

母上が①」この世に生きていらっしゃらないことは、②」どうしようもないことであるが、②」父上とは同じこの世に生きておりながら、②」そのお姿さえ一目も拝見することができないのは②」つらいことよ。①」(85字)

 

  2(10点)

父君が①」姫君を①」拝見なさった①」なら、①」いい加減に①」扱おうとは①」お思いになる①」はずはないほど、①」美しく成長した①」姫君のご様子①」(52字)

 

  3(10点)

尼君は①」すっかり田舎に身を潜めて暮らすようになった後は、②」都の人との繋がりも途絶え、②」姫君のことを①」父の左大臣に①」お知らせするのに①」適切なつてもなく②」(68字)

 

 問2

 (イ)内容説明問題(8点)

姫君が①」父の左大臣に会えないで①」悲しんでいる様子を、②」尼君には①」見せないように、①」平静を装っている様子。②」(47字)

 

 (ロ)理由説明問題(12点)

尼君は、朝夕行う来世のための勤行を差し置いてまで、②」深い愛情を注いで自分を養育してくれているというのに、③」自分が父上に会えないことで悲しみに沈んでばかりいることがわかったら、②」愛情を注ぐ甲斐がないと思われ、②」尼君に対して申し訳ないと思うから。③」(117字)