周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

  二〇一一年 神戸大・前期

 

第1問 藤田省三「ナルシズムからの脱却」(80点)

 

問1 漢字問題(2点×5=10点)

 ⒜貫徹 ⒝痛烈 ⒞勘定 ⒟脅威 ⒠余儀

 

問2 内容説明問題(14点)

大量に生産し流通し消費する社会では、③」具体的な物と対面する関係が失われて物の限界を理解できなくなるため、④」自制が利かず、③」欲求不満を昂進させてしまう、ということ。④」(78字)

 

問3 内容説明問題(14点)

人間によって手前勝手に選別・採用され、③」その消費欲求を満たすまで、②」一時的に存在している③」消費物のリストに過ぎないものへと、③」世界像が変形してしまった、ということ。③」(78字)

 

問4 内容説明問題(14点)

すべての他者に対し見知らぬ者として接することで、④」自分の抱く様々な感情も他者として見られるようになり、⑤」そこに自分の内側を無心に解析する自我が発生する、ということ。⑤」(80字)

 

問5 内容・全体説明問題(28点)

大量生産と大量消費を前提とする大きな体系のなかで、④」自我の満足だけを追求するナルシズムが③」集団的ナルシズムへと展開している現代人の内面においても、③」自身の内面や②」他者を見知らぬ他者として相対化し、④」無心になってそれらと向き合えば、④」他者を尊重する謙虚な自我が生まれ、④」ナルシズムの発生が抑制された社会になる可能性がある、ということ。④」(159字)

 

 

第2問 『沙石集』(40点)

 

問1 文学史問題(2点)

  (お)

 

問2 文法問題(1点×3)

 イ ける   ロ けれ  ハ けり

 

問3 現代語訳問題

 ⒜どうして①」無風流にも①」八重つつじを求め①」られようかと①」思い直して、幾日も①」経った①」(6点)

 ⒝なんのためらいもなく②」上東門院に①」ご献上になる別当は、①」どう考えても①」けしからん。①」(6点)

 ⒞奈良法師は風流心がないものと②」思っていたが、①」たいそうすばらしい①」衆徒である。①」(5点)

 

問4 内容説明問題

 ①藤兵衛尉(なにがし)(2点)

 ②検断役は①」科料の半分を①」分け前としてもらえるので、①」絹三疋四丈の分として、①」八重つつじを一枝もらいたい、ということ。②」(6点)

 

問5 内容説明問題(10点)

上東門院の要求に応じて、①」八重桜の名木を献上しようとした別当に対し、①」桜を大切に思う気持ちから①」罪科を厭わず①」抗議した衆徒に①」感心し、②」荘園を寄進したり、①」垣根を巡らせて花盛りにそれを守らせたりした①」上東門院の行為。①」(100字)

 

 

第3問 『論語』・『隋書』(30点)

 

問1 内容説明問題(6点)

葉公が正直だと評価した、③」父が羊を盗んだことを証言した者。③」

 

問2 現代語訳問題(6点)

親が犯した罪を隠すことはあっても、③」親を罪に陥れることはないものであり③」

 

問3 書き下し問題(8点)

あに①」ごさいのけいをさけて、①」ははのいのちをしする(ころす)を③」ゆるがせにするを②」えんや①」(〜たちまちに②」ははのいのちをしするを③」えんや①)。

 

問4 理由明問題(10点)

死罪を一等減じてもらうように願い出るのが②」親子の関係であるのに、②」母の罪を隠そうとせず、②」死罪に陥れる証言をしたことは、②」子としての道に外れるものであるから。②」

 

 

  二〇一一年 京大文系前期

 

第1問 (50点)

 問1 内容説明問題(8点)

老いて目が見えなくなり、役に立たないところを縫うようになった今でも、②」一日に一個の帽子を自分の手で作り続けてきたことが、②」自分の人生そのものであったという事実は、②」けっして揺るがない、ということ。②」(95字)

 

 問2 内容説明問題(8点)

帽子屋の人生には、①」帽子を作って生きていくという①」自分らしい生き方をしてきた①」彼なりの自負心と、①」国に貢献するようなこともなかったため、②」ひとりで死にゆくという①」寂しさが混在していた、ということ。①」(92字)

 

 問3 内容説明問題(8点)

時代によって変化する政治体制や支配者の論理を、②」どんなものであろうと受け入れるだけでなく、②」自ら率先してその思想を広め、②」支配者に加担して自己の保身を図ろうとする生き方。②」(82字)

 

 問4 理由説明問題(12点)

帽子屋のように、日々の仕事に没頭する生き方は、②」一見すると、政治体制や支配の論理に抗わないため、②」それを受け入れているかのように見えるが、②」自分の人生そのものである仕事を貫き通すという行為は、②」支配者の思想に組み込まれ屈することもなく、②」自らの意志で実現されるという点で、支配からは本質的に自由であるから。②」(148字)

 

 問5 内容説明問題(14点)

希望としての倫理によって生きることは、その時々の支配の論理を信じ込み、②」そこに理想的な世界の実現を見出して生きようとすることであるが、③」事実を倫理として生きることは、困難に満ちた現実を直視しながらも、③」支配の論理に惑わされることなく、③」日々自分の信じた生き方を貫き通して生きていく、という違い。③」(140字)

 

 

 

第2問 (50点)

 問1 内容説明問題(10点)

新劇の場合はさまざまな稽古の方法が確立しており、②」作品を深く解釈しながら、②」その方法論に基づいて、自分の人生経験を生かした演技ができるように訓練をするが、②」能の場合は稽古の方法などなく、②」また作品の解釈はほとんどせず、②」師から型や謡を教わり、ただひたすらその通りに本番でも演じられるように訓練するという違い。②」(149字)

 

 問2 内容説明問題(8点)

対象や時によって変化する情動を、②」役者が自らの作品解釈と②」人生経験を生かして、②」演劇的な方法を用いて表現すること。②」(54字)

 

 問3 内容説明問題(10点)

隅田川』で、誘拐された我が子を慕う母親が、『伊勢物語』の故事を思い出し、都に残した妻を恋い慕う業平に自分の状況をなぞらえたように、③」両者の恋い慕う対象も情動も異なるが、②」その恋い慕うという情動の深層にあって、②」それを生み出す本質的な心の作用は普遍的なものだ、ということ。③」(133字)

 

 問4 内容説明問題(10点)

時や対象によって変化する情動を超越した、②」根源的で普遍的な感情を、②」先人たちは言葉では表現することができないために、②」誰もが心動かされるような、①」舞や謡の身体的な型に込めて昇華し、②」代々伝えられるようにした、ということ。①」(105字)

 

 問5 内容説明問題(12点)

能は、舞や謡の型の中に込められた人間の根源的で普遍的な感情を表現する演技であるが、③」このような感情や身体的な感覚から目をそらしがちな現代社会では、③」能の身体技法に触れることによって、②」現代人の中に眠っているこうした感情を、②」自らの身体を通じて再認識する必要がある、ということ。②」(134字)

 

 

 

 

第3問 (50点)

 問1 理由説明問題(12点)

たいそう繁栄していた都が、②」年月を経て荒廃してしまった様子や、②」自分の住んでいた里などが、②」いつの間にか以前と異なり変わってしまったのを見て、②」自然と昔のことが思い出され、②」この世の無常を悲しむ気持ちが沸き起こってきたからに②」違いないと考えている。①」(118字)

 

 問2 内容説明問題(14点)

明石の尼君は、旧宅に帰っても戸惑うばかりで、②」むしろ遣水の方が主人のようだという歌を詠んだのも②」当然のことで、①」筆者自身も荒廃した旧宅を見て戸惑ったが、②」井戸水だけは昔と変わらず澄んでいるのを見て、②」今とは変わってしまった昔のことが自然と思い出され、②」もの悲しくも①」懐かしい気持ちになっている。②」(140字)

 

 問3 現代語訳(8点×3)

 (3)

荒れ果てた生家には、①」桜の花を賞美する人は①」誰もいないようであるのに、①」ちょうどよい時節を知っているかのように①」色づいている桜の花は、①」いったい誰に見せたいと思っているのだろうか②」と思うと①」(89字)

 

 (4)

物を言わない桜の花と承知はしているけれど、②」親兄弟が毎年春に集まって、①」花見に興じた昔のことを語り合える人は、①」もうこの世に誰もいないので、②」昔のことを尋ねてみたい庭の桜であるなあ。②」(87字)

 

 (5)

花盛りの時には、①」父の植えた白梅の木が①」まるで雪が積もっているかのように咲いて、②」一面に見渡すことができたのも、②」つい今しがたのような気持ちがして②」(69字)

 

 

  二〇一一年 京大理系前期

 

第2問

 問1 内容説明問題(8点)

肉筆で書かれたものには、②」続け字や略字にとどめられた①」作家の身体的動作の痕跡だけでなく、②」表現の完成を目指して①」推敲を重ねた作者の努力の痕跡も残されている、ということ。②」(80字)

 

 問2 内容説明問題(10点)

作品の価値は、推敲を経ることで純粋に抽象化された完成品のなかに表れるため、③」表現の努力の痕跡をありのままに示している、②」作家の肉筆原稿の写真版を見せると、②」かえって読者が純粋に作品を理解するのを妨げてしまうことになるから。③」(108字)

 

 問3 内容説明問題(12点)

完成された作品としての書かれる言葉には、②」書き手が自身の思想によって文章全体を見通し、①」冗漫で重複した無駄な表現を取り除く、②」という心構えと作業が不可欠であるという点で、②」即興的に口に出されるままに多少の訂正をするだけで、②」未完成にとどまった状態で役目を終えてしまう話される言葉とは、②」決定的に異なるということ。①」(150字)