周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

  二〇一四年 神戸大・前期

 

第1問 『〈装うこと〉の倫理』(80点)

 問1 漢字問題(2点×5=10点)

  ⒜憂 ⒝紡 ⒞銘記 ⒟糧 ⒠悲惨

 

 問2 内容説明問題(14点)

身体の装いは、②」他者の関心と意味づけを誘導・制御することで、④」得体のしれない他者の主観的な理解や意味づけによる不安を④」低下させ、免れる自己所有の試みであるということ。④」(80字)

 

 問3 内容説明問題(14点)

身体を装う者は、②」他者に対する自己の身体の見え方を反省的に選択・形成するという、④」他者との応答関係を通じて、④」自律した社会的主体性を獲得するようになる、ということ。④」(79字)

 

 問4 内容説明問題(14点)

ファッションにおいて差異化を追求するのは、③」内容的な価値を目指しているのではなく、③」自己の独自性や個性的なアイデンティティを、④」他者に認知させるのが目的だということ。④」(80字)

 

 問5 内容・全体説明問題(28点)

身体を装う者は、②」自らの身体を掌握するだけでなく③」他者との応答関係を通じて③」自律的な自己を伴った社会的主体性を獲得しようと企てるが、④」自己の独自性や個性的なアイデンティティを追求することで、④」差異化の参照項となる選択も制御もできない④」流動的な他者のふるまいに振り回される結果、④」そうした自己所有の企ては挫折に終わってしまうということ。④」(160字)

 

 

 

 

 

 

 

第2問 『古今著聞集』(40点)

 問1 文学史問題  エ(1点)

 

 問2 内容説明問題(1点×2)

高倉の判官章久(が)小殿の身柄(を受け取る)

 

 問3 現代語訳問題(4点×3)

  ① 自分の命をあなたにお任せ申し上げて②」何の甲斐(価値)があるはずがござい(あり)ましょうか、①」いや何の甲斐もございません。①」

  ② 私は一生①」捕らえられることもないままで①」いることのできる身でも①」ございません。①」

  ③ 長年作っておいた牢屋をすべて取り壊して②」仏像を安置する場所として作り直しなどして、②」

 

 問4 文法問題(1点×4)

  「からめ」─動詞・下二段・未然形   「させ」─助動詞・使役・連用形

  「まゐらせ」─動詞・下二段・未然形  「ん」─助動詞・意志・終止形

 

 問5 心情説明問題(13点)

悪行を重ねながらの逃亡生活に苦悩し、③」やがては捕らえられる恥辱を思いはかり、②」また一方では罪を償うために進んで自首してきた③」小殿の殊勝さに、②」章久が感動している気持ち。③」(80字)

 

 問6 内容説明問題(8点)

小殿のような改心した悪人は、②」一般の者よりかえって②」何事もしっかりと働き、②」役に立つ者だということ。②」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3問 『百喩経』(30点)

 問1 内容説明問題(4点)

声を出した者には餅を与えないこと。

 

 問2 読み問題(1点×3)

  ② もし   ③ まさに〜す  ④ すなわ(は)ち

 

 問3 現代語訳問題

  ⑤ なんという愚かな人か、②」餅一つのために①」盗賊にあっても①」叫ばないとは。①」(5点)

  ⑥ もう(二度と)①」お前には①」餅をやらない①」。(3点)

 

 

 問3 書き下し問題(7点)

こけ①」ぼんのうの①」しゅじゅの①」あくぞくの①」しんりゃくするところ①」となる。②」

 

 

 問4 内容説明問題(8点)

夫が餅一つのために②」夫人の危機を見ながら黙っていたように、②」煩悩などの悪に②」心が侵されてしまっている人。②」

 

 

  二〇一五年 岡大・前期   /200点

 

第1問 伊藤邦武『物語 哲学の歴史』  /50点

問1 漢字問題  /8点(=2点×4)

 ア 蓄積  イ 根幹  ウ 統制  エ 体系

 

問2 内容(変化・推移型)説明問題  /8点

「解答例」

宇宙や生命についての説明原理が、②」神々を主体とする擬人的な物語から、②」より理性的な原理や人間の本性をもとにした理解へと変化したこと。④」

 

①今回の設問は、変化・推移型の説明問題だったので、4段落・2行目の「変化」という言葉に気づくことが先決だった。解答要素はこの言葉を含んだ一文。ついでに説明しておけば、この変化・推移型の解答要素は、(A)変化前、(B)変化の要因、(C)変化後の説明で構成される。ただし、文章の内容や字数制限によっては、(B)のポイントは書けないこともある。今回も不要だった。

②改めて具体的な解答要素を示せば、4段落の1・2行目「この宇宙と生命について〜徐々に変化していって」までになる。設問条件は「考え方の変化」を説明することだったので、この部分から「鉄器文化が成熟して都市文化の規模が大きくなるにつれて」という余計なポイントを削除すれば、解答はできあがる。

 

 

問3 内容説明問題  /12点

「解答例」

魂は世界中の生命体のすべてが、④」その生命の原理として持っているものであり、④」生命維持と精神活動の両方の機能を果たしている、という考え方。④」

 

①たんなる指示語の問題。傍線部(イ)の3行後に「これが、非常に〜古代世界の共通の見方であったと思われる」とあるので、「これ」の指示先、つまり「生命の原理である〜近似した考え方。」が解答の骨子となる。

②ただし、これだけでは解答欄が埋まらないので、もう少し言葉を足す必要があった。傍線部(イ)の1行前に、「世界のうちなる『生きているもの』すべてがその生命原理として持っているもの」という「魂」の定義説明があるので、これを書いておけば完璧な答案になる。

 

 

問4 内容説明問題  /10点

「解答例」

「気」は形而下の実在的な世界の変化と運行とに関わる説明原理であり、⑤」「理」は形而下の世界の背後にある②」形而上の世界の論理的な説明原理である(、と説明している)。③」

 

①「気」と「理」の説明は、傍線部(ウ)の6・7行後「他方、中国では〜考え方もあった」なので、それをほぼ書き抜けばよい問題だった。ただし、これは書き抜き問題ではなく、内容説明問題なので、解答要素の取捨選択やまとめ直しが必要だった。たとえば、「目に見える現象」とは「形而下」の言い換えなので、どちらかを一方を使えばよいのだが、「理」の説明に「形而上」という言葉があるので、その対比として「形而下」という言葉を解答に採用したほうがよいことになる。こういうポイントにも注意を払っていけば、制限字数内に収められた満点答案が出来上がる。

②上記のように、使うべき表現を絞り込んでまとめ直しをすると、もう少し解答要素を加えることができるようになる。傍線部(ウ)の2行後に「世界の変化と運行の原理を普遍的に司るいわゆる『気』の原理」という表現があるので、「気」の補足説明として書き足しておけば満点答案になった。

 

 

問5 理由説明問題  /12点

「解答例」

日本の霊魂観の理論的中核は、③」土着の思想としての「アニミズム」に②」インド・中国由来の伝来思想が混入し、③」それらが渾然一体となって形成されていたものだから。③」

 

①今回の問題は理由説明だが、内容説明と同様に、まずは傍線部の表現の言い換え箇所を探すことからスタートすればよかった。傍線部に書いてあるように、「魂の理解」が「多様で複雑に屈折し」ているのであるから、「多様で」「複雑に屈折し」た魂の理解の仕方を、本文から拾い上げなければならない。

②では、「多様で複雑に屈折した」状態はどこに書いてあったのか。それは傍線部(3)の6行後以降。基本、ここからの一文を書き抜いておけば解答は仕上がった。

 

 

 

第2問 高田郁「ムシヤシナイ」  /50点

問1 作品視点説明問題  /10点

「解答例」

「人生を諦めた様子」は弘晃の内面を推察した表現であり、④」「胸に応える」は路男の内面をそのまま表現した言葉なので、④」路男の視点だとわかる。②」

 

①弘晃の姿は「人生を諦めた様子」と説明されていることから、弘晃の内面(心情)は、別人(つまり路男)から推測されていることがわかる。弘晃の視点から語るのであれば、「人生を諦めた弘晃が」というような表現になる。

②「胸に応える」は、路男の主観的心情をそのまま表現した言葉なので、ここからも路男の視点だとわかる。弘晃の視点から語るのであれば、「路男は胸に応えているようだった」というような表現になる。

 

 

 

 

問2 理由説明問題  /13点

「解答例」

包丁の音は「ざく、ざく」というぎこちない状態から、③」「さく、さく」と柔らかくなり、③」最後に「とんとんとん」と軽やかに変化しており、③」それを弘晃の身体と気持ちの強張りが取れて軽くなっていたことになぞらえようとしたから。④」

 

①この問題は一見すると、たんなる理由説明のようにみえるが、いわゆる「情景描写」の問題になっている。筆者は風景(今回は人の様子)と登場人物(弘晃)の心情を一致させて描いているので、そこを読み切る必要があった。

 そもそも文学文(小説文・随筆文)の問題では、必ずと言ってよいほど「心情」が問われる。設問に「心情を説明しなさい」という条件が記されてなくても、解答要素に「心情」を含めるべきだと思っておいたほうがよい。

②では、包丁の扱い方の変化から、どのような心情を読み取ればよいのか。まず解答要素の1つである、傍線部⑴の8行前「〜柔らかな音へと変化していった」に続く形で、「それにつれて、弘晃の身体の強張りは取れ、表情も少しずつ穏やかになっていく」と表現されている。つまりここから、包丁の音の変化は技術の変化だけでなく、心の変化も表していることに気づけた。

 また、傍線部⑵の4行後に「大丈夫」と技術の状態を誉める発言があるが、さらにその3行後に「弘晃、お前はもう大丈夫やで」、その6行後に「弘晃、もう何も心配要らんで。」と、「大丈夫」の言い換えが続いていることに気づかなければならなかった。もしこれが技術だけの「大丈夫」であれば、弘晃は路男のもとに、料理の修行に来たことになる。

 そして決定的だったのは、傍線部⑶の5行前「来た時とは別人のような、晴れやかな笑顔だった」という箇所で、ここからも、包丁の音の変化と弘晃の心情変化が一致していたと見みるべきだった。

 以上の点を踏まえると、ネギを切る音の軽さは技術の上達だけでなく、「悩みの解消」や「人間としての成育」をも意味していたと理解することができる。

 

 

問3 書き抜き問題  /4点

「正解」 「あ……」

 

*解説省略。

 

問4 内容説明問題  /10点

「解答例」

問題の根本的な解決にはならないが、②」一時的にでも強張った気持ちをほぐしてもらい、④」前向きになるきっかけを手に入れる、という意味。④」

 

*傍線部⑶には「ムシヤシナイさせてもらいに、オレ、何度でも来る」と書いてある。また、問題文の「注1」には、「ムシヤシナイ」の一般的な意味として、「一時的に空腹を紛らわすこと」と書いてある。以上2点を踏まえて、「ムシヤシナイ」は「根本的な解決にはならないが、一時的に現状を改善させる対処療法だ」という方向で解答を作りたかった。

 

問5 心情説明問題  /13点

「解答例」

久々に会った孫との別れを寂しく思いつつも(or たった三日しか過ごせなかったことを寂しく思いつつ)、③」悩みを抱えていた孫の気持ちが解きほぐれ、③」駅蕎麦の仕事の大切さを理解してくれたことを嬉しく思い、③」次の客を新たな気持ちで迎えようとする晴ればれした心情。④」

 

①この設問は心情説明問題なので、まず、傍線部⑷直前の2文「ムシヤシナイ…〜声に出してみれば、胸に宿っていた寂しさが消えて、路男はからからと笑い声を上げる」という心情表現に注目しなければならなかった。

 ここからまず「寂しさ」が読み取れるのだが、なぜ寂しかったのだろうか。寂しいと感じる出来事や背景が、必ず問題文中に書いてあるはずなのだが、その際、きちんとリード文や注釈にも目を通しておく必要があった。今回の場合、リード文の2行目から、弘晃との再会は幼少期以来であったことがわかる。また、本文からは、滞在期間は3日だったこともわかる。これらに注目して「たった3日しか過ごせなかったことを寂しく思いつつ」などと説明しておく必要があった。あなたの答案には、このポイントが欠けていたので3点減点。

②次に、リード文3行目からも明らかなように、弘晃はもともと駅蕎麦の仕事を否定的に見ていた。これが傍線部⑶になると、ムシヤシナイを肯定的に捉えるように変化する。よって、駅蕎麦の仕事を、弘晃が大切に思ってくれるようになったことも、嬉しさ(笑い声を上げる)のポイントとして説明しておくべきだった。あなたの答案には、このポイントが欠けていました。6点減点。

③最後に、傍線部⑷自体の言い換え・補足説明をしておく必要があった。「次の電車の入線」とは、新しい電車がやってくることであり、新しい電車に乗っている新しいお客がやってくることを意味する。孫と離れることを寂しく思っていたが、晴れやかな笑顔で去っていく孫を見て嬉しくなり、次の客を新たな気持ちで迎えられるようになった、と読み取りたかった。あなたの答案には、傍線部の言い換え・補足説明のみがなされているだけでした。4点加点。

 

 

第3問 『源氏物語』  /55点

 問1 条件付き現代語訳問題  /21点

「解答例」

  ア あの女君(花散里)に(も・にも)②」もう一度会わなければ②」

    自分(私)を①」薄情だと②」思うだろうか①」(/8点)

  イ 源氏の君が②」このように①」別れを惜しむ者の①」

    数に入れて③」くださって①」(/8点)

   *「別れを惜しむに値する」というニュアンスが必要でした。1点減点。

 

  エ 再びはできようか、③」いやできまい②」(/5点)

    or 二度と(再びは)できないのだろうか⑤」

 

 問2 現代語訳問題  /10点

「解答例」

  ウ お礼を③」申し上げ①」なさる①」(5/5点)

  オ 世間の目に②」気兼ねして(〜に遠慮して・を憚って)③」(0/5点)

 

 問3 内容説明問題  /10点

「解答例」

源氏が都を離れ②」自身の庇護がなくなってしまうと、③」花散里の邸宅が②」ますます荒廃する、ということ。③」

 

*あなたの答案には、「源氏の庇護がなくなる」というポイントがありません。本文の「この御蔭に隠れて」の部分を説明に生かしたかったです。3点減点。

 問4 内容説明問題  /14点

「解答例」

女君は月光を源氏にたとえ、①」自分のもとへ光源氏を引き留めて、①」飽きることなくすばらしい姿を見ていたい、②」と悲しんでいるが、①」光源氏も自身を月にたとえ、①」曇っても巡りめぐって澄む月のように、②」自分もしばらく須磨に退去するが、②」必ず帰京して一緒に住むはずだから、②」嘆かないでほしいと慰めている。②」

 

*あなたの答案ですが、和歌(Ⅰ)の解釈をもとにした前半の説明は問題ありません。しかし、和歌(Ⅱ)の解釈ができていないため、後半の説明が不適切でした。とくに、「掛詞」に気づけなかったところが痛いですね。以前に授業で話したように思いますが、掛詞は「ひらがな」の言葉に注目して探してほしいのです。当時の人々にしても、漢字で表記されてしまうと、掛詞に気づきにくいですからね。今回の場合、「すむ」は「澄む」と「住む」が掛詞になっていました。この点を踏まえると、「月の光が結局は澄み渡るように、私も結局はあなたのもとに住むはずだから」などと解釈しておきたかったのです。6点減点。

 

 念のため、和歌(Ⅱ)だけは、直訳重視の解釈を書いておきます。意訳については赤本の現代語訳を参考にしてください。

 

 空を巡りめぐって、結局は澄む(=はっきりと姿を見せる)はずの月光が、しばらくの間曇って見えなくなっているような空を眺めて、物思いに耽っては(=悩んでは)ならないように、結局は私も都に戻ってあなたと住むはずですから、しばらくの間明石へ下向して都からいなくなることを悩んではなりませんよ。

 

 

第4問 袁枚『小倉山房文集』  /45点

 問1 現代語訳問題  /12点

「解答例」

漢の高祖はどのような人徳があって④」(前漢)王朝を創始し、④」諸葛亮はどのような罪があって死んだのか。④」

 

*あなたは、「興」の解釈を少々間違えています。「興」については、「勃興」などという熟語を思い出し、王朝が創始・創建・成立するなどという説明をしてほしかったです。(注三)の説明がそのまま使えましたよ。

 問2 書き下し問題  /8点

「解答例」

なほ(なお)②」ひとの①」ありにおける②」がごとき②」か①」

 

*少々判断の迷うところですが、あなたの答案の文末の「や」は「か」にしたほうがよいです。通常、疑問文を書き下す場合、疑問の終助詞のみであれば、「〜連体形+か」と表記し、疑問の副詞と終助詞のセットであれば、「〜連体形+や」となります。

 

 問3 空欄補充問題  /10点

A 賞罰     B 功禍

 

*解説は省略。

 

 問4 主旨説明問題  /15点

「解答例」

蟻が善悪功罪を叫び論じても③」人は気づかないように、③」天も人には無関心な(天も人の言動には関知しない)はずだから、③」天は意図せず人に功禍を与えても、③」意図して賞罰を与えることはない。③」

 

①今回は、漢文にありがちな、比喩と主張の類比を説明する問題だった。これを解くためには、まず波線部を具体的に復元することから始めなければならない。波線部を直訳すると、「しかし、人間は見聞きすることはない」となるので、当然、何を見聞きすることがないのかを考えてみる。とりわけ、「聞く」という言葉に注目すれば、直前の「蟻が善悪功罪を切実に叫び、人間に向かってその正否を論じること」を指すとわかるはず。

②翻って、この人間と蟻の関係は、天と人間の関係のアナロジー(類比)であることに気づきたかった。ポイントは傍線部(2)を含んだ一文「然則天之于人、猶人之于蟻乎」の解釈。以前、授業でも触れましたが、「A於B」(=AのBに於けるや)は、「AのBとの関係」と訳しましたよね。つまりこの部分は、天と人間との関係は、人間と蟻との関係と同じだ、と言っているのです。そうすると、人が蟻の叫びを見聞きしないように、天も人の叫びを見聞きしないことになります。これを解答の骨子にして、「意図しない功禍」と「意図した賞罰」の説明を加えておけば、解答は仕上がります。

 

 

  二〇一五年 大阪大(文以外)・前期  合計/150点

 

 第1問 許光俊『クラシック魔の遊戯あるいは標題音楽現象学』  /50点

問1 漢字問題  /10点(2点×5)

 ⒜手際  ⒝看過  ⒞繊細  ⒟無邪気  ⒠止揚

 

問2 類義語問題  /5点

 ウ

 

*「捏造」は一から事実無根の嘘を作り上げることで、「歪曲」はもともとあった事実を改変することです。

 

問3 内容説明問題  /10点

 演奏家の演奏は①」楽譜の能う限りの再現を目指し、③」個別的な音として具体化することで、③」楽譜を越えた美を創造するものだということ。③」

 

*傍線部(2)の直接の言い換えが、傍線部(1)の直後の一文であることに気づけば、解答の骨子はできあがる。あとは、「この現象」という部分を、傍線部(2)の2行前や、傍線部(1)の2行後の表現を使いながら、「演奏家が楽譜をもとに実際の音として具体化すること」などとを説明しておけばよい。

 

 

問4 理由説明問題  /25点

 チェリビダッケが指揮した演奏では、②」演奏家どうしや聴衆など、その場にいる者が同じ呼吸をすることで、③」指揮する・させる、聴く・聴かせる二分法から脱し、③」作曲家と指揮者と演奏家と聴衆が一つとなることによって、③」真の感覚の洗練された、思念の深さのある音楽が創造されている。③」このように音楽とは経験であるため、②」CDに録音された音源を聴いたとしても、②」現場に聴衆として参加しているわけではない以上、②」生演奏でなければ感知できないその場の雰囲気は伝わってこないため、③」演奏の一体感によってもたらされる音楽の経験を得られないから。②」

 

①解答要素の大部分は、傍線部(3)を含んだ一段落分にある。最も重要なポイントは、傍線部(3)の2・3行前「〜そのときその場で作曲家と指揮者と演奏家と聴衆の区別すらもがなくなっていた〜音楽とは経験である」である。つまり、生演奏でなければ経験できない感覚を、CDで聞き取れることはできないだろう、というのが傍線部の主張の理由となる。

②傍線部⒟の後に、ラヴェル版の演奏を批判した「真の感覚の洗練も、思念の深さもあったものではない」という表現は、チェリビダッゲの演奏の反対の説明になるので、これも加えておきたかった。

 

 

 第2問 『大森荘蔵著作集 第五巻』  /50点

問1 理由説明問題  /12点(6点×2)

(Y)「自然」は微粒子の集合にすぎず、②」音、味、色などの感覚は事物の性質ではなく、②」脳をつくる粒子の運動である②」

 

*傍線部(A)の直前の二文でほぼ解答要素は出揃う。この捉え方が「物的自然」観や自然科学の考え方であり、非常識な見方になる。また、傍線部(B)の直前の一段落分にも、物的自然観の説明があるので、ここから、「音、味、色などの感覚は事物の性質ではない」というポイントを押さえておきたかった。

 あなたの答案は完璧でした。

 

(N)「自然」という事物に、②」音、味、色などの性質がついており、②」私たちはそれを感覚化してとらえている②」

 

*否定の解答は、肯定の反対を考えればよい。つまり、「音、味、色などの感覚は事物の性質である」ということになる。あなたの答案には、このポイントがないので2点減点。

 また、4段落目の最終文「〜『音がする』のは自然の中の出来事ではなく、感覚の中の出来事なのである」という表現から、事物の性質を感覚として捉えていると説明しておきたかった。

 

問2 理由説明問題  /14点

 自然は事物にすぎず、①」私たちに感覚をひきおこす性質を持つだけだとする②」物的自然科学による結論は、②」「物的自然」と「意識」と区分する二元論であるが、②」それは物的自然という概念をたてながら、②」その解釈をゆるめて物的自然を感覚化してとらえる②」私たちの日常生活における①」常識の智恵に反するものであるから。②」

 

①まずは「この結論」の言い換えからスタートする。指示先は直前であり、簡単にまとめておけば、「感覚は事物の性質ではなく、事物には感覚を引き起こす性質がある」となる。そして、この見方が傍線部(B)の直後にあらわれる「物的自然の科学である自然科学」の見方であることも指摘しておく必要があった。

②次に、この物的自然観がなぜ非常識かを考える。そのためには、まず「常識」が何かを理解しておかなければならない。常識は傍線部(B)の次の行に書いてあった。つまり、感覚は事物の性質ではないという物的自然観をもちながらも、その枠を緩めて物的自然に感覚を見る。これが常識の智恵だった。

③最後に、非常識そのものの説明を拾い上げる。場所は傍線部(B)の次の段落。この部分を見ると、「物的自然」と「意識」の徹底した二元論が、非常識であると述べられている。つまり、自然科学は「物的自然」と「意識」をきちんと区別しているのだが、日常生活的な常識では、両者の区別を曖昧にしている。だからこそ、「この結論」=「自然科学の見方」は非常識に見えるのである。

 

 

問3 空欄補充問題  /4点

 ウ

 

*「物的自然」と「意識」の区別を曖昧にしている私たちの日常が、非日常的に緊張することで、常識には馴染まない奇妙な思想が生まれるという状況を想定してみる。。

 例えば、りんごの甘さをりんごの性質とみなしてきた日常が、新型コロナの後遺症の影響によって味を感じなくなってしまった場合、自分の運命、生死、脳と意識の問題については考えますよね。あるいは、鎮守の森の神聖さを森自体の性質とみなしてきた日常が、自然科学的思想の影響によって人間の意識の問題に過ぎないと気づいた場合、森林伐採は神を冒涜する悪から、人間の利益になる善へと変化しますよね。つまり、道徳的思考にも影響を及ぼします。「法と社会」のみ、「物的自然」と「意識」の区別の厳密化しても、何の影響も受けません。

 

問4 理由・全体説明問題  /20点

 私たちは「物的自然」と「意識」とを区分する②」科学的二元論の非常識に適度に馴れ、②」日常的常識と科学的常識を上手く扱って適当に使い分けているが、②」日常的な場面で穏やかに馴染ませた二元論は、②」非日常的に緊張した場面では、②」常識には馴致できない奇怪な思想を生み、②」不安を感じさせる。②」これらの思想に真正面から立ち向かうには、②」二元論の発生の経緯や論理的構造、短絡と思いこみを精緻に分析し、②」二元論を正視しなければならないから。②」

 

①まず、傍線部(C)の言い換えが、内容からも、表現の末尾部分「必要となる」からも、直前の一文「〜正視することが必要不可欠となる」であることに気づきたい。また、この「正視すれば」の言い換えが、さらにその直前の「それらに真正面から立ち向かう以外にはない」であることに気づけば、「これらの思想から逃れることができないとすれば」という部分が、傍線部(C)「二元論の解剖学が必要となる」理由だとわかる。つまり、これらの思想から逃れられないから、二元論の解剖が必要になるという筆者の主張を読み取りたかった。

 ちなみに、「つまり」以前の表現が「二元論の解剖学」の言い換えになっているので、ここも解答要素として使用しなければならない。

②次に、「これらの思想」の指示先を探す。直接の指示先は2行前の「これらの思想」であり、そのさらなる指示先はその右横の「常識には馴致できない思想」だとわかる。そして、そのさらなる指示先は、その右横の「様々な奇怪な思想」だとわかる。この三文を引用すれば、これらの思想に関する要素はすべて出揃うことになる。

③解答要素の一つとして右に示した「常識には馴致できない思想がそこから生まれてくる」には、指示語が含まれている。したがって、「そこ」の指示先である空欄(1)の右横「日常的な場面でおだやかにかい馴らされた二元論は、非日常の緊張した場面」も解答要素としなければならなかった。

 ただ、これだけでは字数が埋まらないので、「日常的な場面でおだやかにかい馴らされた」の補足説明として、空欄(1)の前段落の表現「日常的常識と科学的常識をうまくあやつって適当な使い分けをしている」や、「科学的に言論の非常識に適度に馴れ、それを適当にあしらっている」を使えば、制限字数に達する。

 

 

 第3問 『小島のすさみ』  /50点

問1 現代語訳問題  /6点(2点×3)

 ⑴杉以外の(ではない)木は①」まったく混じっていない。①」(/2点)

 

 ⑵今夜一晩の旅寝の宿も、①」どこに取ろうか。①」(/2点)

 

*「草(の)枕」には、「旅」という意味が含まれるので、それを加えておきたかった。1点減点。

 

 ⑶この近辺のことを」よく知っていそうだったので、(/2点)

 

 

問2 内容説明問題  /12点

 社の名が、これ以上「老いるな」と言いたい、④」尼の「五十」という年齢も意味する、④」老蘇という名である、ということ。④」

 

*難問。「老蘇(おいそ)」という地名には、まず五十歳を意味する「五十(いそ)」の意味が掛けられていた。これは本文の「尼が年の名」から気づかなければならなかった。また、直後の和歌の「みそぢ(=みそじ・三十路・三〇歳)」という表現からも、「おいそ」が数字を意味する特殊な読み方をしているのではないか、と推測しなければならなかった。

 さらに、「老蘇」には、ヤ行上二段活用動詞「老ゆ」連用形+禁止の終助詞「そ」を意味する「老いそ」、つまり「老いるな」の意味も掛けられていた。これを完答するのは無理でしょう。

 

 

問3 内容説明問題  /9点

 筆者自身が三十数歳を越え、③」老いの訪れは老尼だけの③」他人事ではなくなっているということ。③」

 

*これは、問2と連動していた問題。「老蘇」の「老」が年齢的な「老い」を表現していること、そして「みそぢあまりもすぎ」が「三〇歳をとうに過ぎている」ことを意味していることに気づけなければ、解答することはできなかった。ちなみに、前近代の平均寿命は三〇〜四〇歳なので、三十過ぎは高齢者となります。

 

問4 和歌修辞法・内容説明問題  /9点

 易々とは渡れない②」野洲川を渡る時の川の水と、③」不安な世を苦労して渡りつつ流す②」良基の涙。②」

*解答欄の広さがわからないので何とも言えませんが、解答例程度の詳しい説明はしなければならないと思われます。

 

 

問5 内容説明問題  /14点

 筆者の、①」歌人連歌師でありながら、②」旅による衰弱を理由に、③」有名な歌枕さえ訪ねることを面倒くさがり、③」見ないままに通り過ぎた無風流さを言う、③」不本意な噂。②」

 

*今回の問題は、リード文の情報「歌人連歌師でもある」を加えて解答を作るパターンでした。難関大あるあるですね。あなたの答案にはこの部分がなかったので、2点減点しました。また、傍線部(D)の「憂き名」自体の説明がなかったので、2点減点しています。

 細かいことですが、設問は「誰のどのようなこと」という尋ね方をしているので、解答の書き出しは「筆者の、〜」「良基の、〜」にしておいた方が無難です。減点せず。

 

 

 

  二〇一五年 神戸大・前期

 

第1問 『標識としての記録』(80点)

 問1 漢字問題(2点×5=10点)

  ⒜傾斜 ⒝郷愁 ⒞組成 ⒟幾重 ⒠蓄積

 

 問2 理由説明問題(14点)

安楽と効率の実現のために統制されている現在の実利的社会では、④」規格化された方式で処理できない事態は、⑤」苦痛で不快な現実に直面させる失敗として恐れられ排除されるから。⑤」(80字)

 

 問3 内容説明問題(14点)

失敗を否定し放逐する社会的趨勢の中で、③」人間社会の相互的な連鎖関係を認識し、④」失敗を人間に本来的なものとして包摂するに至る緊張した過程が④」可視化されているということ。③」(80字)

 

 問4 内容説明問題(14点)

映画製作者が事件の当事者として③」事件の展開に内在的に関わりながら、③」現実の新たな次元を顕らかにしていくことを通して、④」撮られた現実が普遍的な経験に変容するということ。④」(80字)

 

 問5 内容・全体説明問題(28点)

映画『水俣の甘夏』は、②」水俣病患者としての身体的苦痛という直接的な問題を扱ったものにとどまらず、④」人が苦悩や葛藤の中で④」現在の実利的社会の価値を逆転させ、④」失敗を人間に本来的なものとして包摂していく過程や、④」現実に内在的に関わることで③」現実そのものを変容させる姿を通して、③」人間の普遍的な経験と成熟の可能性を映し出しているということ。④」(160字)

 

第2問 『平治物語』(40点)

 問1 文学史問題  ①(1点)

 問2 文法問題 (イ) ける  (ロ) ける  (ハ)けれ(1点×3)

 

 問3 現代語訳問題

  ⒜私を殺しなさった後に、②」子たちを処置なさるがよいでしょう③」(5点)

  ⒝常葉本人とも思えないほど①」痩せ衰えているけれども、②」やはり世間並み以上の美しさである②」(5点)

  ⒞母は子たちの顔を、「これからいつまで一緒にいられるだろうか」と思って④」じっと見つめて泣く②」(6点)

 

 問4 内容説明問題(10点)

乙若の、①」状況が理解できないほど幼いのに、④」泣かないでしっかり話すようにと母を励ます③」健気な様子。②」

 

 問5 内容説明問題(10点)

池禅尼の願いが聞き届けられ、③」元服している頼朝が死罪ではなく流罪になったので、③」常葉の罪もない幼い子たちを死罪にするのは道理に反するという判断。④」

 

第3問 『秋声詩 自序』(30点)

 問1 読み問題  ⒜ のみ  ⒝ ここにおいて(1点×2)

 

 問2 理由説明問題(5点×2)

 (A)見事に模写された日常生活の音声に③」親しみを感じ好ましく思ったから。②」

 (B)火事で大騒ぎする音声の模写を②」実際の出来事と錯覚して慌て恐れたから。③」

 

 問3 書き下し文・現代語訳問題(5点×2)

 「書き下し」─およそ①」まさにあるべきところ(として)(は)、②」あらざるところなし②」

 「現代語訳」─すべて火事場で聞こえるはずの音声で、②」聞こえないものはなかった③」

 

 問4 内容説明問題(8点)

声帯模写の達人が、②」自分の声以外に何の道具も使わずに、②」多様な人々や出来事の音声を②」見事に表現したこと。②」

 

 

  二〇一五年 島根大・前期

 

 第1問 澁澤龍彦「玩具のための玩具」(65点)

 

問1 漢字問題(2点×5)

 (1)疾駆 (2)随伴 (3)含蓄 (4)奴隷 (5)巧妙

 

問2 内容説明問題(12点)・2行問題

  ⑴解答要素 →傍線部Aを含んだ1段落分。

 

【正答例】

 遊び手本人だけが②」生きた存在として②」御者を演じ、②」残りの馬車や馬、旅客は、②」動かない椅子を使って表現する②」ごっこ遊びの演出。②」(57字)

 

問3 理由説明問題(12点)・2行問題

  ⑴解答要素 →傍線部2の1〜4行後。

 

【正答例】

 仮面は本能の爆発と諸力の侵入を促し、③」自分自身が変化を蒙っていることを③」無意識化するという意味で、③」遊びの範囲を逸脱してしまうから。③」(63字)

 

問4 意味説明問題(8点)

  ⑴「阿(おもね)る」・「諛(へつら)う」=「こびへつらう」

  ⑵「追従」=「人の言うとおりに行動すること」

 

【正答例】

 相手に気に入られようと媚びへつらうこと。

 

問5 適語補充問題(5点)

  ⑴空欄直後の一文「〜模倣された現実以外の現実を想像させることが不可能

   になるだろうからだ。」を根拠に考える。

 低下

 

問6 内容説明問題(18点)・3行問題

  ⑴解答要素 →空欄アの一段落前。

  ⑵「積木」独自の性質を考えて解答を作る。

 

 【正答例】

 他の玩具は現実模倣性が高く、③」名目上の使い方があるが、③」積木は現実を模倣していないので、③」無限の使い方を暗示し、③」どのようにでも組み立てられるため、③」シンボル価値が高くなると考えられる。③」(88字)

 

*1行は35字以内。

 

 第2問 平野雅章『魯山人味道』(45点)

  (解答例省略)

*字数の目安について 縦35字×横7行=245字程度を目指す!

 

 

 

 第3問 松尾芭蕉『更科紀行』(45点)

問1 人物比定問題(3点×2)

 越人 / 奴僕

 

問2 口語訳問題(8点)・1行問題

 (奴僕は)たいして(それほど)③」怖がるような②」様子も見えず③」

 

問3 口語訳問題(9点)・2行問題

 (徒歩で行く)芭蕉が②」後から①」馬上の①」奴僕の様子を見上げて、②」危なっかしく思うことは①」この上ない。②」

 

問4 内容説明問題(11点×2)・2行問題

芭蕉)(旅の宿で、)昼のうちに句にしようと思った景観や④」未完成の句を思い浮かべ、④」あれこれ苦吟している(呻きながら句を詠んでいる)様子。③」

 

(僧侶)旅の道中のつらさに②」芭蕉が思い悩んでいると誤解し、②」僧侶自身が巡った聖地や②」経験した不思議なこと、②」仏のありがたさを説いて慰めた。③」

 第4問 貝原益軒『慎思録』(45点)

 

問1 内容説明問題(12点)・1行問題

 真実の姿以上に褒めそやしたり、真実を損なって謗ること。

 

問2 返り点問題(12点)

 当権 衡軽 重

 

問3 内容説明問題(12点)・1行問題

 贔屓偏頗なく、公明正大かつ慎重に判断するべきである、ということ。(32字)

 

問4 読み問題(3点)

 すくなし

 

問5 書き抜き問題(3点×2)

 公心⇆私意  平直⇆軽重

 

 

   平成二七年度(二〇一五) 島根県立大 国語 解答例

 

第一問 『ピアノのある場所』

 問一 A 沈  B 傷  C 薄  D 散漫  E 姿勢

 問二 イ

 問三 マリの家に行きたかったのは、ピアノを弾かせてもらい、彼女の母親と話したかったからで、ユミコと

   の約束を破り母親に心配をかけるマリは、家に帰ってこなくてもよいと決めたので、彼女に会うことはで

   きないから。(九九字)

 問四 ユミコには自分のことを心配してくれる家族はいないと思っていたが、父親が帰りの遅い自分を心配し

   ていたことや、妹が自分を気にかけていることに気づき、二人のことをいらないと思ったことを後悔した

   から。(九六字)

 

第二問 『「なぜ?」から始める現代アート

 問一 A 覧  B 観照  C 彫刻  D 遮断  E 壁

 問二 ア そうだい  イ ばいたい  ウ すきま  エ やしろ  オ いかく

 問三 Ⅰ オ  Ⅱ イ

 問四 タレルは、目でなくても色を知覚するのではないかという問いを立て、〈ライトサロン〉という作品に

   よる実験で、体験した人それぞれに仮説に対する自分なりの解答を出させた。このように、アートはあり

   とあらゆる媒体や学問分野とつながっていくことで、分野の隙間で起こる可能性を見つけることができ、

   今まで気がつかなかったことに気づかせようとするものである。(一六九字)

 

第三問 『弱者の戦略』

 問一 安定した環境では激しい競争が起こるため、強者が生き残って弱者は滅び、結果的に生息できる生物の

   数は減っていくが、不安定な環境では必ずしも強者が勝つとは限らず、撹乱によってたくさんのニッチが

   生み出され、激しい競争社会では生存できないような、多くの種類の弱い生物が生存の場を得ることがで

   きるから。(一四五字)

 問二 エ

 問三 地球上のほとんどがニッチで埋め尽くされている現状では、大きな変化によってニッチが空白になるこ

   とを待ち、そこを素早く占有するという戦略が有効だが、弱者は新たなニッチに長くいつづけることはで

   きないため、新しく生じるニッチだけを狙い続け、強者が侵入してくればそこに未練を残さず、新たな未

   開の大地をニッチとするような、パイオニアの生き方をすること。(一七〇字)