周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

  二〇〇三年 京大文系前期

 

第1問 渡辺一夫「書籍について」

 問1 内容説明問題(6行・180字問題/10点)

「眼光紙背に徹する」というように、①」一冊の本を読了したときに、①」読み残しなどなくすべてを理解し尽くすことができる人々とは異なり、②」自分は「眼光紙面に彷徨する」というように、①」アンダーラインを引いて、ノートを取りながら丹念に読んだり、①」反対にノートを取らずに気ままに読み通したりしながら、①」紙面のあちこちに目を移動させるために、①」結局内容を読み切れないでいる、という意味②」。(178字)

 

 問2 内容説明問題(5行・150字問題/8点)

人間は本来自分の持っている問題の量や質に応じて、認識できる量や質が決まるだけでなく、②」その問題も自身の生活や生理現象、年齢などによって変化していくため、②」読み残しが必然的に存在することになる。①」したがって、完全に読んだという感情を持てないのも当然で、①」それを悲嘆してもどうしようない、①」という絶望的な事実。①」(148字)

 

 問3 理由説明問題(5行・150字問題/8点)

書籍というものは、いったんできあがってしまうと、①」作者の手から離れてしまい、①」さまざまな読者のものになりながらも、①」誰のものでもないような独自な存在となるため、①」誰かの特定の解釈に定まることはなく、①」読者が個々に読み取った解釈を見れば、①」読者固有の精神や思考の形式がはっきりとそこに現れてしまうから。②」(144字)

 

 問4 内容説明問題(5行・150字問題/8点)

有能な読者とは、自己の問題意識によって、①」他者の書いた作品を隈なく理解するだけはなく、①」作者がその作品に込めたもの以外の①」優れた精神や意図までも見出して、①」そこにより豊かな意義や形象を与える人であり、①」読者にとって現像液である他者の作品とは、①」解釈することによって自身の思考形式を映し出してくれるものでもある。②」(149字)

 

 

 

 

 問5 内容説明・要約問題(8行・240字問題/16点)

書籍とは、読者個人の問題意識に応ずるだけの理解しか得られず、②」しかもその問題も自身の生活や生理現象、年齢などの変化とともに変化していくものであるので、②」必然的に読み残しが生じてしまう。②」また、書籍はいったんできあがると、作者の手から離れてしまい、②」さまざまな読者のものになりながらも、①」誰のものでもないような独自の存在となり、①」しかも読者は複数存在し多様な読まれ方をするので、②」新たな解釈が生まれ、特定の解釈に定まることはない。②」このような捉えどころのなさを、筆者は気味が悪いと感じている。②」(237字)

 

 

 二〇〇九年 神戸大・前期解答

 

 第1問 『「声」の資本主義』(80点)

問1 漢字問題(2点×5)

 ⒜ 配置  ⒝ 収拾  ⒞ 疲弊  ⒟ 逸脱  ⒠ 絡

 

問2 理由説明問題(12点)

 震災後に周囲を満たしていたラジオの騒音が、④」無意識に感受していた鐘の音を遮ったことで、④」それを特別な意味をもつ音として意識するようになったから。④」(70字)

 

問3 書き抜き問題(6点)

 沈黙の死(騒音の世界)

 

問4 内容説明問題(12点)

 沈黙の中から生まれ、②」一回的な出来事として②」沈黙の中に消えていく言葉とは異なり、②」絶えざる騒音の中で②」時間的・空間的に偏在する②」音響記号と化したもの。②」(70字)

 

問5 内容説明問題(10点)

 現実世界を構成する③」感情、意欲、知識といったものすべてが、③」ラジオによって生み出されるようになったこと。④」(50字)

 

問6 全体論旨説明問題(30点)

 音を複製するラジオに対して、テレビはさらに映像も複製する。③」音同様に映像の複製によりイメージの一回的な出来事としての性質は解体され、④」局所性や方向性を失って偏在化させられた視覚的記号が④」音響記号とともに生活の全領域を覆うだけでなく、③」映像と音響によってリアリティを獲得したテレビ映像が④」仮想的な現実であるという本質を隠して④」真の現実のようにわれわれを錯覚させ、④」ラジオ以上に人間の精神活動を強く支配してしまう。④」