周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

 2016年 香川大学・工学部・推薦

 

問1

日本では家内に秩序があり、仏間や神棚で神仏に祈り、寝室で休み、居間では家族団欒で食事をしたり、会話を楽しんだりする。(58字)

 

 

問2

日本人は家を「内」、街を「外」と区分けし、都市空間は自分とは関わりのない空間領域とみなしているため、都市計画を練ったり街並みを整備したりするのは、誰かよその人がやってくれるものとだと考えているから。

(99字)

 

問3

西欧人と同様に、家屋のような内部空間領域と都市空間のような外部空間領域を同視し、後者にも関心をもつことによって、我が事として都市計画の立案や街並みの整備に向けた努力をすることが必要となる。

 

 

これまで日本人は、都市空間を自分とは関わりのない外部空間とみなしてきたが、家のような内部空間と同様に、そこにも関心をもち、我が事として都市計画の立案や街並みの整備に向けた努力をすることが必要となる。

(99字)

 

 

 2016年 香川大・教育学部・推薦

 

問1

具体的・即物的な言葉を第一次情報と呼ぶが、それと同種の情報を集め、整理し、相互に関連づけるような抽象化を行ない、より高度な二次的、三次的な情報や思考へと昇華せることを、メタ化と呼ぶ。第一次的情報や思考は、そのままではそれほど重要な意味をもたないのだが、メタ化によって、大きな普遍性をもつことができるようになる。このように、より高い抽象性へと質的変化を起こすために行なう手法が、メタ化というものである。

(200字)

 

 

2016年 香川大 推薦

 

 問1

歴史の偶然とは、歴史の記述中で、ある事件が起こらないことが十分にありえたと想像される事実を呼ぶ。それに対して、歴史の必然は、ある先行する事件が起これば、必ず後続する事件が起こることを意味する。そして、偶然に起こった事件が次々に必然的な事件をもたらすためには一定の条件が必要で、その条件を規定するのが歴史の必然性である。多様な条件の中で、多数の人々がそれぞれ主体的に行動して生まれた無数の事件の連関によって一定の方向性が生じ、それが歴史の必然性となるのだが、その具体的な現れ方も、歴史上の偶然によって規定されたり、そのテンポを変えられたりすることもあるので、歴史の必然は偶然を媒介として現れると言える。

(300字)

 

 問2

 私は、様々な歴史事象を偶然の産物を考え、そのうえで各事象がなぜ現実に起こってしまったのか、その歴史の必然性を明らかにするべきだと考える。そして、そこに教訓を学び取るのが、歴史に対する向き合い方だと考える。ここでは、従軍慰安婦問題を例に考えてみたい。

 従軍慰安婦問題は、その名称のとおり、戦争が起こらなければ発生しなかった、女性に対する人権蹂躙行為である。同様の問題は、世界中の戦争でその事例が報告されているので、戦争によって必然的に発生した問題だと評価できそうだ。しかし、戦時下で必ずしも発生する問題とも断言できない。偶然の要素は残されているのだ。では、なぜ日本はこのような問題を引き起こしてしまったのか。筆者も指摘するように、従軍慰安婦を生み出した歴史の必然性を検討しなければならないだろう。

 従軍慰安婦を生み出した歴史的条件には様々なものが考えられるが、当時の日本にあった、女性に対する人権軽視の風潮も条件の1つだ、と私は考える。かりに、女性の人権が重視されていたなら、戦争という極限状態にあっても、従軍慰安婦を組織するという選択は起こらなかったのではないだろうか。いまこの主張が妥当か否かはおくとしても、問題を引き起こしてしまった歴史的な条件を洗い出し、その妥当性を検証することは必要であろう。そして、その妥当性が確定できれば、同様の問題を今後引き起こさないための教訓にもなると考えられる。

(596字)

 

 

 2015年 香川大・創造工学部・推薦

 

問1

現在、CO2の排出量に配慮したエコロジカルな商品や機器が数多く開発されており、レアアースはそれらにも利用されているので、間接的に地球温暖化防止に貢献していると言えよう。一方、レアアース自体の開発について言えば、必ずしも地球温暖化防止に貢献しているとは評価できない。なぜなら、レアアースの開発には莫大なエネルギーを使用してしまうからだ。レアアースを使用するだけの国は、直接、地球温暖化に悪影響を及ぼしているようには見えないが、生産国が莫大なエネルギーを消費している以上、無関係とは言えない。レアアースの使用は、地球温暖化の防止に役立つ一方で、地球温暖化を促進させるという両義性をもった行為だといえる。

(297字)

 

 

問2

レアアースの供給量が減少しても対応できるように、まずは効率的に使用する技術を開発していくべきである。また、廃棄物に含まれるレアアースをより広く回収する制度を構築し、そのリサイクル技術を向上させていくことも有効だと考える。そうすれば、海外への依存度も低くなり、サステナブルな使用ができると考えられる。

(149字)

 

 

 

 

 2015年 香川大・創造工学部・後期

 

問1

合意形成を図るためには、「能力に対する期待」と「意図に対する期待」という2つの信頼が必要だ。前者は、住民のある程度までの理解と、専門家による推薦の組合せによって獲得できる。後者は、相手には自分を欺くつもりなどないだろうという期待であり、事業者はそれを地域住民に示すことで、信頼を勝ち取ることができる。

(150字)

 

 

合意形成を図るためには、「能力に対する期待」と「意図に対する期待」という2つの信頼が必要だ。前者は事業者の高い安全性を確保できる能力に対する期待であり、それを得るためには住民のある程度までの理解と、専門家による推薦の組合せが必要となる。後者は相手には自分を欺くつもりなどないだろう、という期待である。

(150字)

 

問2

課題文を読むと、合意形成のためには交渉相手の抱く不安を取り除き、信頼を得なければならないことがわかる。つまり、合意形成のために必要な意見調整とは、不安の除去ということになる。こちらの要望を通すには、可能な限り相手の要望を聞き入れるとともに、彼らの不安の内実を聞き取り、1つずつ誠実に解決するしかない。

(149字)

 

 

 2015年 香川大・教育学部・推薦

 

問1私たちの仲間とはどのような意味か。

「私たちの仲間」とは、日常のなかで自分たちの周囲から少しずつ習得してきた常識という規範を共有している人々であり、その規範をもっていることに対して違和感を抱くことなく交流できる存在。(90字)

 

 

2015年 香川大 経済・後期

 設問1

人間は稼ぎと勤めのために働くのだ。そして、この両者が人間の5つの欲求を満たす。まず、人は生きるため、安全で快適な生活を送るために、所得を必要とする。これは生理的欲求と安全欲求を満たすものだ。次に、勤めることで、周りの人々と心の通い合う関係を築きたいという愛情欲求も満たしてくれる。また、仕事に意義を求めるのは、自分の重要性を自分で感じたいという内発的な尊厳欲求を満たしたいからである。さらに、勤めの内容や稼ぎ多さは、社会的認知の評価につながるため、外発的な尊厳欲求をも満たしてくれる。最後に、勤めの内容は、自分が何をできるかを確かめ、それを実現しようとする自己実現欲求を満たしてくれるため、働くのだ。

(300字)

 設問2

日本での会社と個人との関係を、アメリカと比べてみると、日本での関係は所属に近く、アメリカの関係は参加に近い。こうした違いは、たとえば、演劇の劇団という組織についても同じだ。日本では俳優たちが劇団に所属する。一方で、アメリカでは公演に参加する。それは、共同体的感覚の強い社会的伝統をもつ日本と、市場流動性感覚の強い社会的伝統をもつアメリカ、という歴史と社会の違いの表れだろう。また日本の会社組織は、所属の感覚を経営する側も働く側ももっている。そして、日本では所属感への欲求がどこかにあるために、所属する組織の中に職場社会として安定をもつ仕組みが望まれたりする。たとえば、極めて大きな企業な所得格差がつくようなインセンティブシステムは、それで恵まれるはずの人すら格差が職場の社会的安定を損ねる危険を感じて、避けたいと思う部分がある。日本の会社は、経済組織体と職場共同体という二面性を持ち合わせているのだ。

(400字)

 

 

 

 

 

 設問3

 会社組織は、経済組織体であると同時に、職場共同体でもある。筆者も指摘しているように、アメリカと比べた場合、日本は職場共同体的な側面を色濃く持つ。ところが、図1からも明らかなように、1985年以降正規労働者に比べて、会社との関わり方の薄い非正規労働者の割合が増えているのだ。また、図2を見ると、正規労働者の賃金は年齢とともに上昇しているが、非正規労働者の賃金は横ばいであることがわかる。したがって、正規労働者に比べれば、安定した生活を送ることは難しいと言えよう。こうした非正規労働者との関わり方が、今後の会社組織のあり方や経営の課題になるだろう。

 非正規労働者は大きく2種類に分けることができる。1つ目は正規労働者になりたくてもなれなかった人々で、2つ目は仕事以外に優先すべき目標や事情があり、自ら非正規雇用を選んだ人々だ。課題文で述べられているように、仕事は人間の5つの欲求を満たしてくれる。会社の経営状態によっては、賃金を上げることは難しいだろうが、非正規労働者を正規労働者へ登用する制度を整えることは可能だ。こうすれば、少なくとも尊厳欲求は満たされることになる。また、非正規労働者であっても、昇進できる制度を整えれば、尊厳欲求や自己実現欲求を満たすこともできる。非正規労働者を正規労働者の下請けと見なさず、その仕事ぶりを的確に評価する制度を作ることが、今後会社に必要なことと考えられる。

(591字)

 

 

2015年 香川大 推薦

 問1

現在の日本社会では、非正社員の増加や、育成のための投資縮減、従業員の能力開発ニーズへの対応不足などにより、企業が教育の場としての機能を果たせなくなってきている。だから、これまで職業的意義を求められずにすんできた教育が、職業能力形成機能を担うようになる必要がある。それは単に従来の企業中心の人材育成の後退を補うためだけでなく、従来の企業依存的な人材育成の問題を積極的に正すためにも必要である。教育を潜り抜けて社会に出ていく若者の大半は仕事に就くうえに、労働条件はますます過酷さを増している。そうした厳しい仕事の世界で生きてゆくために必要な準備を若者に与える役割から、教育という巨大な制度が目を背けて良いはずがない。そのような仕事の世界への準備として欠かせないのが、労働に関する基本的な知識と、個々の職業分野に即した知識やスキルである。前者は法律や交渉などの適切な手段を通じて抵抗するための手段であり、後者は働く側が仕事の世界からの要請に適応するための手段である。働く者が身を守るためには、抵抗と適応の双方が両輪として不可欠であり、企業にとっても、生産性と競争力を向上させるためには必要なことである。

(498字)

 

 

2013年 香川・経済・後期

 設問1

日本は、一九八〇年代から九〇年代を境に、「発展途上社会」から「成熟社会」へと変貌した。「発展途上社会」には、どうしても欲しい物やサービス、社会資本が山ほどあり、それらを提供すれば豊かになっていったのである。ところが、それらを求め続け、大きな生産力を手に入れた結果、需要不足の「成熟社会」になり、二〇年以上も続く長期的な不況に陥っているのだ。需要不足による不況を克服するには、生産や物流の効率化を図るだけでは不十分で、消費意欲を刺激するような新しい種類の需要を生み出さなければならない。そのためには、製品の開発者にも遊び心が必要なのだが、生産や流通の効率化を目指して日本人には、遊び心が欠けているのだ。

(300字)

 

 

 2008年 香川大・教育学部・推薦

 

問1 

人間の言語理解というのは、言語が表すとおりの意味に依拠して情報を伝達するものから、発話を手がかりに相手の心理を推測するような、意図明示的で推論的なコミュニケーションへと進化してきた。だが最近の日本人は、言語という抽象的表記スタイルに踏みとどまって、メッセージのやり取りを交わすのを放棄し、人間の表情を直接具象化したアイコンを用いるような、一段レベルの低い次元で情報伝達を行うようになっているから。

(198字)

 

 

 2006年 香川大・教育学部・推薦

 

設問1

教育は「公共財」的な性格をもっており、そのメリットは教育を受ける本人だけでなく、社会全体に及ぶという外部経済効果を備えている。そのため政府が介入し、人々に強制的に教育を受けさせ、そしてその財源を税という形で強制的に徴収したほうが、自由に任せておくよりも、社会全体にとって望ましい教育水準となる。また、国民の税金を投入する以上、教育は社会に対して大きな責任を負うことになるので、強制力が必要となるのだ。

(200字)