一 五行祭文 その7
(衆生) (佛體) (具足)
されハしゆしやうハもとよりふつたいなり、三しんおくそくせり、いかなる
(悪霊) (悪) (悪魔)(悪)(邪魔)(外道) ゑ
あくりやうあく鬼あくまあく神しやまけとうもそのたよりおへからす、仏神とも
(守護) (加) (光) (草露) (消) (薬) (病原)
しゆこおくわへ給ハヽ、日くわうのさうろおけし、やく王のひやうけんおいやす
(如) (災難) (自) (滅) (今生) (必) (滅)
か事し、さいなんおのつからめつし、こんしやうかならすめつすへし、なに物か
(望) (早) (萬里) (拂) (福裕)
のそミおなさん、はやくしつふうおはんりのほかへはらい、ふくゆふおしよらくの内
(保) (謹) (敬) (祭文) (巻)
ニたもたしめ給へ、つゝしミうやまんて申五形のさいもんはん事つうようお一くわん
(誦) (奉)
しゆしたてまつる、さいはいゝゝゝゝ、
やまハ三ツいえハ九ノツ、これハ又鬼ノすミカもいハやなりけり、
元(1489)
延徳二年庚戌二月十四日
ぬしありうかさへも三郎
寺原平左衛門 正繁
おわり
「書き下し文」(必要に応じて、ひらがなを漢字に改めています)
されば衆生はもとより仏体なり、三身を具足せり、いかなる悪霊・悪鬼・悪魔・悪
神・邪魔・外道もその便りを得べからず、仏神ども守護を加へ給はば、日光の草露を
消し、薬王の病原を癒すがごとし、災難自ずから滅し、今生必ず滅すべし、何物か望
みを為さん、早く疾風を万里の外へ払い、福裕を諸楽の内に保たしめ給へ、謹み敬つ
て申す五行の祭文万事通用(ヵ)を一巻誦し奉る、再拝再拝、
山は三つ家は九つ、これは又鬼の棲家も岩屋なりけり、
おわり
「解釈」
だから、衆生はもともと仏体なのである。三身を備えているのである。どのような悪霊・悪鬼・悪神・邪魔・外道も、そのよすがを得ることはできない。仏身らがお守りくださるなら、日光が草に置く露を消し、薬王菩薩が病原を癒すようなものである。災難は自然と消え去り、現世で必ず消えてなくなるはずだ。これ以上、何を望もうか、いや何も望まない。早く疫病を万里の外に払い、様々な楽しみのなかに富裕な幸せを保たせてください。謹み敬い申し上げる五行祭文の万事通用を祈り、この一巻を唱え申し上げる。再拝再拝。
山は三つ、家は九つある。これはまた、鬼の棲家、岩屋であった。
おわり