周梨槃特のブログ

史料紹介という修行

壬生閻魔堂のかぐや姫 (The Princess Kaguya-like Yokai)

  応永三十二年(一四二五)五月六日条

                   (『図書寮叢刊 看聞日記』3─123頁)

 

 六日、晴、(中略)

               〔閻〕

  抑聞、此間壬生地蔵堂之内、炎魔堂柱朽損之間、加修理之処、柱内ヨリ女房

                                 〔議〕

  忽然而出来、則成長而番匠喰云々、若鬼歟、又蛛なと化現歟、不思儀事也、

  但巷説不可信用事也、

   (後略)

 

 

 「書き下し文」

  抑も聞く、此の間壬生地蔵堂の内、閻魔堂の柱朽損するの間、修理を加ふるの処、

  柱の内より女房忽然として出来し、則ち成長して番匠を喰らふと云々、若しや鬼

  か、又は蛛などの化現か、不思議の事なり、但し巷説信用すべからざる事なり、

 

 「解釈」

 さて、聞くところによると、先日壬生の地蔵堂の中にある閻魔堂の柱が腐って傷んだので、修理をしたところ、柱の中から女房が忽然と姿を現し、すぐに成長して大工を食らったそうだ。もしかすると鬼であろうか。また蜘蛛などの変化であろうか。不思議なことである。ただし、根拠のない噂は信用できないことである。

 

 Well, I heard the following rumor. The other day, a carpenter repaired the pillars of the Enmado in Mibu Jizodo temple, which was rotten. Then, a female officer appeared suddenly from the inside of the pillar, and it grew quickly and ate the carpenter. Maybe she is a demon. Or, she may be a spider monster. It is strange. However, unfounded rumors are unreliable.

 

 

 「注釈」

「壬生地蔵堂」─現中京区壬生梛ノ宮町四条大宮の南西部、綾小路通の南、坊城通に

        東面して寺門を開く。律宗の別格本山で、通称壬生地蔵。別名を地蔵

        院、宝幢三昧寺(院)とも号す。本尊地蔵菩薩は京都二十四地蔵や、

        洛陽四十八体地蔵などの第一番にあげられる。開山は鑑真和上と伝

        承。「百錬抄」正元元年(一二五九)二月二十八日条に「五条坊門坊

        城地蔵堂供養」とあるのが文献上の所見と思われ、壬生寺蔵の正嘉元

        年(一二五七)の年紀をもつ融通大念仏用金鼓銘にも「地蔵院」の号

        がみえる。

        中世壬生寺も地蔵信仰は、道御(円覚十万上人、正元元年の復興事業

        に尽力した律僧)のような勧進聖の宗教活動を媒介として、特に融通

        念仏と結んで、よりいっそう貴賤衆庶のなかに浸透したらしい。当寺

        に参詣し地蔵を信仰することによって、現世における種々の災厄を逃

        れうると信じ、あるいは臨終正念を祈ったことは、壬生寺縁起が載せ

        る二〇編の霊験譚で知られる。文明十一年(一四七九)五月には時の

        住持隆円によって堂舎修理費勧募のため勧進曲舞が興行され(「晴富

        宿禰記」同月二十三日条)、翌年八月の本尊開帳には権大納言藤原親

        長も参詣(「親長卿記」同月十五日条)。同十七年閏三月二日には勧

        進猿楽が催されている(大乗院寺社雑事記)。しかし中世末期には打

        ち続く戦乱により寺運はやや衰微したらしく、大永八年(一五二八)

        には本堂と南門等を残し堂宇がことごとく破壊されていたことが「二

        水記」(同年二月八日条)にみえる(「壬生寺」『京都市の地名』平

        凡社)。

 

 

*またまた中世の怪談話を少々…。室町時代壬生寺には閻魔堂という堂舎があったようですが、そこに女房姿の化け物が現れました。さて、その出現の仕方が秀逸です。閻魔堂の柱を修理していた大工さんは、その柱の中に小さな女房を発見します。それだけならよかったのですが、この女房、あっという間に成長し、大工さんをガブリと食べてしまったのです。妖怪「かぐやもどき」。まるで、『竹取物語』のホラーバージョンのような話です。竹と木の違い、成長速度が3ヶ月か一瞬かという違いはありますが、植物(性構造物)の中から出現し、不自然なスピードで成長するところなど、ストーリーの基本構造は同じようです。室町時代の怪談話にも、「物語の出で来はじめの祖」の影響があったのかもしれません。

 

 This is a Yokai story in the Middle Ages. During the Muromachi period, Mibu temple had a building called Enmadou. A monster in the form of a female officer appeared there. Well, the way of its appearance is excellent. A carpenter repairing a pillar of Enmadou found a small woman in the pillar. In addition, she grew up suddenly and ate a carpenter. Yokai "Kaguya Modoki". This is like the horror edition of "Taketori Monogatari" (The Tale of the Bamboo Cutter). Although there are some differences between Taketori monogatari and this article, the story of a heroine emerging from lumber and growing rapidly is the same. "Taketori Monogatari" may have influenced the Yokai story of the Muromachi period.

  (I used Google Translate.)