周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

楽音寺文書14

    一四 沼田庄領家下文

 

       (花押)

    (安芸豊田郡)

 下   沼田庄梨子羽郷

  可早以当郷安宗久弘名出田壱

   町五反〈坪付在」別紙〉引募楽音寺燈油

   田祈祷

 右相当正検、以彼出田、為祈祷、限永代」所免件料田也、

 然則為僧」戒乗沙汰、無退転勤、可精誠、」向後不

 相違、且正検之時、可済」有限勘料之状、所仰如件、以下、

     (四)

   弘安肆年正月十八日

 

 「書き下し文」

 下す 沼田庄梨子羽郷

  早く当郷安宗・久弘名の出田壱町五反を以て〈坪付別紙に在り〉楽音寺燈油田に引き募り祈祷致すべき事

 右正検に相当たり、彼の出田を以て、祈祷の為、永代を限り件の料田に奉免せしむる所なり、然れば則ち僧戒乗の沙汰として、退転無く勤めに備へしめ、精誠を抽づべし、向後相違有るべからず、且つ正検の時、限り有る勘料を弁済すべきの状、仰する所件のごとし、以て下す、

   (1281)

   弘安四年年正月十八日

 

 「解釈」

 沼田庄梨子羽郷に下達する。

  早く当梨子羽郷の安宗名・久弘名の勘出田一町五反〈坪付は別紙にある〉を楽音寺燈油田に指定し、祈祷を致すべきこと。

 右、正検注に当たって、祈祷のために、この勘出田を永久に楽音寺燈油料田に寄進させるところである。だから、院主戒乗の命令として、中断することなく勤行に備えさせ、いっそう誠意を尽くした祈祷をしなければならない。今後もこの下知を違えることがあってはならない。さらに、正検注のとき、重要な勘料を支払わなければならない、とご命令になった。以上のことを下達する。

 

 「注釈」

「引募」

 ─点定する、(非法にも)指定する、(新たに)指定するなどの意。「修理料田十二町を引募る」などと用いる(『古文書古記録語辞典』)。

 

「正検」

 ─大検注、実検注ともいう。領有地全域を対象として行なわれる検注。領主の代替わりに行なわれる。正検注の結果をまとめて、年貢賦課の基準となる定田を確定し年貢を算定して記載した帳簿を正検注目録(正検目録)、丸帳などという(『古文書古記録語辞典』)。

 

「出田」

 ─隠田が摘発されて新しく打ち出された田。勘出田と同意か。踏出(ふみだし)・出目(でめ)も同じ。「勘出田」は、検注の結果、新たに見出された田地のこと。勘益田。いずれも『古文書古記録語辞典』より。

 

「坪付」

 ─田地の所在地と面積を条里制の坪にしたがって帳簿上に記載するもの。その帳簿が坪付帳、領主に上申するものを坪付注文という(『古文書古記録語辞典』)。15号文書を指す。

 

「勘料」

 ─中世、荘園・公領において、調査(勘べ)の結果免税地とされること。この場合、勘料を支払うのが通例であったらしい(『古文書古記録語辞典』)。