七 武田信賢禁制寫
禁制 福王寺領山上山下條々
一伐二採山木一事
一女人夜宿事
一往来僧俗并乞食不レ可レ入事
一軍勢甲乙人等不レ可三乱二入寺領一事
一於二寺領一不レ可二殺生一事(割書)「但、大宮一頭狩者非制之限」
右於二違犯之輩一者、不レ嫌二権門高家一可レ處二罪科一者也、仍制札如レ件、
(1460)
長禄四年八月 日 大膳大夫源朝臣判
「書き下し文」
禁制す 福王寺領山上山下條々
一つ、山木を伐採する事
一つ、女人夜宿する事
一つ、往来の僧俗并に乞食入るべからざる事
一つ、軍勢甲乙人等寺領に乱入すべからざる事
一つ、寺領に於いて殺生すべからざる事(割書)「但し、大宮一頭狩は制の限りに非
ず」
右違犯の輩に於いては、権門高家を嫌はず罪科に處すべき者なり、仍て制札件のごとし、
「現代語訳」
福王寺領の山上山下に対して以下の条項を禁止する。
一つ、領内の山木を伐採すること。
一つ、女が坊舎に夜宿すること。
一つ、領外の僧侶や俗人、ならびに乞食は、領内に入ってはならないこと。
一つ、他領の軍勢や庶民が乱入してはならないこと。
一つ、寺領で殺生をしてはならないこと。ただし、大宮一頭の狩は、禁止しない。
右の条項に違犯したものについては、権勢の盛んな家柄を厭わず、処罰するべきものである。よって、制札の内容は以上のとおりである。
「注釈」
「禁制」─特定の場所で特定のことを禁止する旨を告知する文書。制札、定書、掟書、
法度も同じ。
「山上山下」─福王寺山の山頂や麓の坊舎か。
「大宮一頭狩」─未詳。福王寺のある可部庄の総鎮守は両延八幡宮なので(『広島県の
地名』)、大宮はそれを指すのかもしれません。