周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

とある解答例

年未詳 吉備国際大

 治療者・援助者に求められる姿勢として、課題文では6つの姿勢を提示している。私が医療体験に参加した際に、理学療法士の方から⑤と⑥の項目の重要性について伺うことができた。その方の話によると、患者さんのなかには、治療しても無駄だという先入観によって、治療に向き合わない人もいるそうだ。このような患者さんに対しては、同情するのではなく、患者さんの状況や気持ちをまず理解し、寄り添うようにして治療に当たる。根気よく付き合い、治療のことだけでなく他愛のない話もすることで、反発ばかりしていた患者さんが心を開いてくれ、スムーズに治療を行えるようになるそうだ。

 この話から、理学療法士は治療を行うだけでなく、患者さんとの信頼関係を構築することも必要であると感じた。身体機能を維持・改善することが、理学療法士の職務である。しかし、信頼関係が構築できず、反発されてばかりいれば、治療に専念してもらえず、症状を改善することも難しくなるだろう。理学療法士の仕事は人間を相手にしている、ということを忘れてしまっては、患者さんにとって優れた理学療法士とは呼べない。

 患者さん一人ひとりが抱えている事情、気持ち、考え方などを知ろうとし、治療方針や計画が本当に患者さんのためになっているのか、ということも考え続ける。治療者・援助者に求められる姿勢というのは、患者さんのことを第一に考え続けることではないだろうか。

(588字)

 

 

 私の目指している保険医療福祉の専門職は、理学療法士だ。理学療法士は、患者さんの運動機能の維持・改善を目的とした治療を行う医療従事者である。

 課題文によると、高齢者を含めた多くの人々が、「老化」によって運動機能が低下していると考えている。しかし、その要因は「老化」だけでなく、「廃用」が大きく関与しているのだ。「廃用」は、老化や病気、精神的な喪失体験によって体を動かさなくなり、運動機能が著しく低下することを指す。問題は体を動かさないことであって、「老化」ではないのだ。この事実を知らないために、リハビリを無駄と考え、機能改善を諦めてしまう。理学療法士は、適切な治療を施すだけでなく、まずこの大きな勘違いを訂正することから始めなければならないと考える。

 私は、高校?年生のときに医療体験に参加した。そのときに、理学療法士の方から「治療を拒む人に対して、最も必要とされることは、治療方法や回復するまでにかかる時間などを、詳しく丁寧に伝える力である」という話を伺った。機能改善に向けて、ともに努力していくための大切な心構えだと感じたが、老化による機能低下は避けられない、という誤った先入観を取り除くことが先決であると考えられる。「廃用」こそが機能低下の要因で、いずれ運動機能は回復するのだから、諦めずに治療に専念する。こうした前向きな行動を喚起させるような言葉を、親身になって伝えられる理学療法士を目指したい。

(600字)

 

 

 私は、近年のIT機器の進歩は、人間のコミュニケーションの在り方を貧困にしていると考える。

 課題文にも指摘されているように、IT機器の進歩によって、面倒で不都合な相手とは一切触れ合うことなく、自分にとって心地よい相手だけと、即座に人間関係を築くことができるようになった。そのつながりは世界中に広がることもあるだろうが、価値観の異なる人々とのつながりがないという意味では、著しく狭いものにしていると言える。意見の対立、そしてそれを乗り越えて同調するという経験から遠ざかると、自分自身の考えが狭まり、それを絶対視してしまうことにならないだろうか。

 私の目指す理学療法士は、様々な年齢や職業の人々、そして様々な考えや価値観を持った人々と関わりながら、治療やリハビリに当たらなければならない。他者の意見を聞き入れず、自らの主張を押し通すだけでは、適切な治療を患者に施すことはできないだろう。

 そもそも、医療従事者の前に現れる患者の症状は同じでも、同じ個性を備えた患者は存在しない。医療は個性的な人間を相手にする以上、その対応の仕方も異なるはずだ。一人ひとりの患者が異なっていることを前提にして、多様な考え方を認めることが、より適切な治療法を生み出すのではないだろうか。医療職に携わるものは、自らの考えを絶対視せず、他の医療従事者や患者の意見をしっかりと聞き入れる能力を磨かなければならない。

(585字)

 

 

 現代社会において福祉的課題が生ずる背景には、少子高齢化という問題が大きく横たわっている。以下に示す三つの課題も、このような問題と密接に関わっている。

 まず、福祉職の人員不足という課題が挙げられる。生活支援を必要とする人々の多くは高齢者である。少子高齢化がさらに進行すれば、支援を必要とする人は増加し、支援する人は相対的に減少するだろう。一人の担当者にかかる負担は大きくならざるをえない。こうなると、きめ細やかな支援はしにくくなる。

 次に、福祉財政の窮乏化という課題が挙げられる。少子高齢化が進行するということは、税や保険料を負担する人々が減少し、それを利用する人々が増加するということだ。財政が悪化すれば、新たな人材を確保することも難しくなるし、サービス内容も低下せざるをえない。

 最後に、福祉職に従事する人々自身へのサポート体制が万全でないという課題が挙げられる。これは、前述の二項目と連動している。昨今、福祉担当者の不適切な対応や、介護者による虐待事件も報道されているが、これは一概に担当者個人の問題とばかりは言えない。少子高齢化を背景とした、人員不足・財政窮乏が労働環境を悪化させ、担当者の負担やストレスを増しているのだ。

 福祉には、支援する人とされる人の両方が介在している。適切な福祉を維持していくには、支援される人だけでなく、支援する人のサポートも必要だと考える。

(583字)