一八 小早川氏奉行人連署書状(モト折紙カ)
態申入候、此表羽柴打下被及御行候、就夫元春様御打廻付而御兵粮莫太入申候、
此時之儀候間、貴僧米五百俵御用ニ可有御立候、然者当秋由宇之御土貢御抧候而
可有御取候、米無御所持候者[ ]以他借[ ]辻を[ ]御立
候ハて不叶儀候、御馳走之段茂此節相極候条、能々御納得候而可有御取替事肝要
候、此運送之事井但被仰(井上但馬守)談御座船にて可有御運送候、於様体者
安首座被相含口上候、恐々謹言、
井上又右衛門尉
卯月十七日 春忠(花押)
横 見 和 泉 守
景俊(花押)
鵜飼新右衛門尉
元辰(花押)
由宇
慶甫 参 申給へ
「書き下し文」
態と申し入れ候ふ、此の表羽柴打下御行に及ばれ候ふ、夫れに就き元春様御打廻に付けて御兵粮莫太入れ申し候ふ、此の時の儀に候ふ間、貴僧米五百俵御用に御立て有るべく候へ、然らば当秋由宇の御土貢御抧き候ひて御取有るべく候へ、米御所持無く候はば[ ]他借を以て[ ]辻を[ ]御立候はでは叶はざる儀に候ふ、御馳走の段も此の節相極まり候ふ条、能々御納得候ひて御取り替へ有るべき事肝要に候ふ、此の運送の事井但に仰せ談ぜられ御座船にて御運送有るべく候ふ、様体に於いては安首座に口上を相含められ候ふ、恐々謹言、
「解釈」
わざわざ申し入れます。この戦の最前線へ羽柴秀吉軍討伐のために、小早川隆景様は御出陣になります。その件につき、吉川元春様のご巡察に付随して兵粮米をとても大量に納入し申します。この時に、あなた様は米五百俵をご用立てになってくださいませ。そうしてくれれば、当秋の由宇郷に納められた年貢俵をお開きになりまして、それをお取りになってください。米のご所持がないのでしたら、〜?〜他所からの借用米を用いて〜?〜ご用立てなさらないではうまくいかないのです。あなた様のご奔走もいまが最も忙しいいということを、よくよくご納得になりまして、ご借用にならなければならないことが大切です。この運送の件は、井上但馬守にご相談になり、御座船で御運送になるのがよいです。その方法については、口頭で伝えるべき内容を、安首座に言い聞かせなさっております。恐々謹言。