周梨槃特のブログ

いつまで経っても修行中

東大寺真言院のヒ・ミ・ツ

  長禄四年(1460)三月二十二日条

           (『大乗院寺社雑事記』2─252頁)

 

    廿二日 (中略)

 一東大寺真言院披見之、彼院ハ新禅院知行也、(中略)又真言院之西ニ阿伽井在之

         (掘)                  (阿脱)

  善無畏三蔵ノ被堀所也、仍件井ヲ天人来テ令応護彼天人ノ足跡伽井ノソハノ

  石ニ在之、当寺ノ秘事云々、(後略)

 

 「書き下し文」

 一つ、東大寺真言院之を披見す、彼の院は新禅院の知行なり、(中略)又真言院の西に閼伽井之在り、善無畏三蔵の掘らるる所なり、仍て件の井を天人来たりて応護せしむ、彼の天人の足跡閼伽井の傍の石に之在り、当寺の秘事と云々、

 

 「解釈」

 一つ、東大寺真言院を披見した。この院家は新禅院の知行である。(中略)また、真言院の西に閼伽井がある。善無畏三蔵がお掘りになったところである。だから、天人はこの井戸にやって来てお守りになっている。この天人の足跡が閼伽井のそばの石にある。東大寺の秘事だという。

 

 「注釈」

真言院・新禅院」

 ─東大寺戒壇院の末寺で、遁世門の僧侶たちが拠点とした院家(蓑輪顕量「中世仏教界における遁世 ─その成立の背景と集団としての成立─」『現代宗教研究』47、2013・3、https://genshu.nichiren.or.jp/genshu-web-tools/media.php?file=/media/shoho47-15.pdf&type=G&prt=5253)。

 

 

世界遺産東大寺に、天人の足跡。なんとすばらしい観光資源でしょうか。公開してくれれば、さぞかしパワースポットとして賑わうのでしょうが、そんな情報を見聞きしないということは、残念ながら残っていないのでしょう。それとも、いまだに秘事なのでしょうか? 日本各地の聖地・霊場には、まだまだ隠された聖なる遺物が存在するのかもしれません。