三九 穂田元清書状(切紙)
(包紙ウハ書)
「 治部大輔
洞雲寺尊報 元清」
其以来依レ爲二遠境一絶二音問一候之處、預二貴翰再三一令二拜披一候、殊更両種被レ
(宗用)
懸二御意一候、御厚情之至本懐候、貴寺之御事、全室和尚被レ任二御与奪之旨一、
被レ遂二御在院一候、勿論先住御同前可レ得二尊意一覚悟候、然而輝元御一通則時調
被レ進之由、尤御歓喜之至令レ察候、委曲御使僧申候之間、可レ有二演説一候、恐惶
謹言、
(天正八年)(1580)
壬三月廿二日 元清(花押)
洞雲寺尊報
「書き下し文」
其れ以来遠境たるに依り音問を絶えし候ふの處、貴翰を再三預かり拜し披かしめ候
ふ、殊更両種御意に懸けられ候ふ、御厚情の至り本懐に候ふ、貴寺の御事、全室和尚
御与奪の旨に任せられ、御在院を遂げられ候ふ、勿論先住と御同前に尊意を得べき覚
悟に候ふ、然かして輝元御一通則時調え進らせらるるの由、尤も御歓喜の至り察せし
め候ふ、委曲御使僧申し候ふの間、演説有るべく候ふ、恐惶謹言、
「解釈」
以前のお便り以来遠くにおりましたので、音信を絶やしてしまいましたが、あなた様の書簡を再三預かり拝見しました。とくに二種類の贈り物のお心遣いをくださり、このうえないご厚情に感謝しております。洞雲寺のことは全室宗用和尚のご譲与の内容にお任せになり、御在院を遂げてください。もちろん先代の住持と同様に、あなた様のお考えを伺うべき心づもりでおります。そして輝元様の安堵状一通をすぐに調えて差し上げれば、きっとこのうえなくお喜びになると推察します。詳細はご使僧が申し上げますので、お話があるはずです。以上、謹んで申し上げます。
「注釈」
「先住」─九世全室宗用か。そうであるなら、充所は洞雲寺住持、十世梅菴賢達になる
と思います。