四 荒谷吉長同国長連署譲状
去渡申領地之事
合〈給地御判并下作職」本支証目録以下共悉〉定
(段)
右給地云二下作職一、不レ残旦歩打渡申所実也、御公役被レ遂二馳走一、全二知行一
肝要候、此上者、向後我等少茂綺之儀有二-間-敷之一候、乍レ去無レ力相究候之
条、其方以二分別一、如レ形憐愍之儀頼存候、仍為二後日一譲状如レ件、
(1564) 荒谷内蔵丞
永禄七年〈甲子〉正月五日 吉長(花押)
同美濃守
国長(花押)
(勝長)
善五郎殿 参
*割書は〈 〉、その改行は 」 で表記しました。
「書き下し文」
去り渡し申す領地の事
合わせて〈給地の御判并びに下作職の本支証目録以下共に悉く〉定め
右給地と云ひ下作職と云ひ、残らず段歩を打ち渡し申す所実なり、御公役馳走を遂げられ、知行を全うすること肝要に候ふ、此の上は、向後我等少しも綺の儀之有るまじく候ふ、去りながら力無く相究まり候ふの条、其方分別を以て、形のごとく憐愍の儀頼み存じ候ふ、仍て後日のため譲状件のごとし、
「解釈」
譲り渡し申す領地のこと。
給地の御判や下作職の本公験・目録などを一緒にすべて譲与する。
右の給地も下作職も、残らず領地を引き渡し申すことは事実である。御公役を勤められ、支配を全うすることが大切です。このうえは、今後我々は少しも干渉することはありえません。しかしながら、我々は力なく困窮しておりますので、あなたの配慮をもって、並一通りのお情けを頼り申し上げております。そこで、将来のため、譲状は以上のとおりである。
「注釈」
「本支証」
─「本公験」に同じか。土地に関する権利の存在を証明する証文。一枚の証文に数か所の土地が記載されているときは買得人に本公験を渡すわけにいかないので、別に案文を作成して渡す。同時に本公験の方のその土地についての記載を抹消する(『古文書古記録語辞典』)。
「段歩・反歩」
─田や畑などの面積を反を単位として数えるのに用いる語(『日本国語大辞典』)。
「公役」
─国家的な色彩の濃い年中行事の費用として徴収された雑税。造内裏役・神宮役夫工、また酒屋役、土倉役、味噌役も公役と言われた(『古文書古記録語辞典』)。