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蟇沼寺文書12

    十二 楽音寺例時懺法并念仏番置文

 

 (端裏書)

 「楽音寺置文」

 定

 (安芸沼田庄)

  楽音寺例時懺法并念仏番闕如置禁制帳〈文事〉

 右守結番之次第、雖一時一日、無懈怠勤行、例時懺法者

 及薬師経、已後於念仏番者不辰剋、相互後日番衆渡持蓮華

                                     (マヽ)

 打大鼓時可退散、於難渋輩者時之承仕可両院主申、若於背制方

 之旨者、例時懺法一度闕如念仏番者雖一時半時罸銭五十文、一日一夜

 一向不参之人者、百文致其沙汰、堂塔修理、猶以及懈怠三ヶ度供料田可

 没収者也、仍置文如件、

     (1338)

     暦応元年十月 日         (花押)

                      (花押)

 

*割書は〈  〉で記載しています。

 

 「書き下し文」

 定む

  楽音寺例時懺法并びに念仏番闕如禁制帳文の事

 右、結番の次第を守り、一時一日たると雖も、懈怠無く勤行致すべし、例時懺法は薬師経に及び、已後念仏番に於いては辰の剋を過ぐべからず、相互に後日番衆蓮華を渡し持ち太鼓を打つ時退散すべし、難渋の輩に於いては時の承仕両院主に申すべし、若し制法の旨に違背する輩に於いては、例時懺法一度念仏番を闕如する者は一時半時たると雖も罰銭五十文、一日一夜一向不参の人は、百文其の沙汰致し、堂塔を修理せよ、猶ほ以て懈怠三ヶ度に及ばば供料田を没収すべき者なり、仍て置文件のごとし、

 

 「解釈」

 定める 楽音寺例時懺法並びに念仏番欠如禁制の規則のこと。

 右、結番の順序を守り、一時一日であっても、怠けることなく勤行しなければならない。例時懺法では薬師経までも唱え、法華懺法以後の念仏番については、辰の刻を過ぎてはならない。その日の番衆は、翌日の番衆に蓮華を渡し、太鼓を打ち鳴らしたときに退出するべきである。勤行を渋る者については、その時の承仕が両院主に訴え申しなさい。もし規則に背く者については、例時懺法で一度でも念仏番を怠けた者は、一時半時であっても罰銭五十文、一昼夜まったく参上しなかった人は、罰銭百文を支払い、堂塔の修理費用に当てなさい。さらに怠けることが三度に及べば、その者が領有している供料田を没収するべきものである。よって、当番欠如禁制は以上のとおりである。

 

 「注釈」

「例時懺法者及薬師経」

 ─未詳。例時懺法は、夕方に阿弥陀経を読誦する例時作法と、朝方に法華経を読誦する法華懺法を指すが、それぞれの儀式のときに、薬師経も一緒に読誦するということか。